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プロローグ

行き当たりばったりで文才も皆無ですが、頑張ります。

ザシュッ。

不可解な音とともに、目の前に赤い液体が噴き出した。

燃えるような痛みを発する腹部をなぞってみると、手に先ほど噴き出した赤い液体がねっとりとからみついてきた。

・・・(え?なんだこれ・・・血?)

顔をあげ、目の前に立っている者の顔見る。

そこには、笑顔で血飛沫を浴びるあいつの顔があった。

「ふふふ。すごいね。きれい」

薄れゆく意識の中、あいつの顔は狂気に満ち溢れていた。

・・・なんでこんなことになったんだろう?さっきまで、いつもみたいに馬鹿な話で盛り上がっていたはずなのに。

最後に見たのは、刀を振りかざしたあいつが倒れてくるところだった。



「・・・あさ?」

小鳥のさえずりが聞こえてくるほどに涼やかで晴れやかな朝だった。日の光は適度にあたたくて心地よい。

この日差しの中で最悪の表情をしている男の名は多智花瑞希たちばな みずき

こんな最高の朝なのに寝起きは最悪だ。

理由は簡単。先ほどの悪夢。あんなものを見て最高の朝を迎えられる者などいるはずがない。

「ちくしょう・・・朝からひどいもの見たな」

悪態をつきながらも手元にある時計を確認する。その針が刻む時刻は7時30分。

現在16歳にして現役の高校生である瑞希には遅すぎる目覚め。

「やばい」

なにもやばいことなどなさそうにそう言いながら、瑞希はバックを持って階段を下りる。

顔を洗い、朝ごはんを食べ歯を磨き、着替える。いつもどおりの朝。慣れた作業を繰り返していく。

「いってきま~す。」

・・・まあ、誰からも返答は来ないけどな。

この時間家には誰もいない。両親は共働きで、他には兄がいるのだが、今は一人暮らしをしている。

ふと時計を確認すると、時刻は8時15分。

・・・やばいな急がないと遅刻だ。

家から学校までは歩いて30分かかる。急いでも遅刻なように見えるが、瑞希は足が早い。走ればぎりぎり間に合う時間ではあるのだ。

そう思いながら瑞希は歩き始める。どう見ても急ぐ気などさらさらない。

ipodを取り出し、イヤホンを耳にさす。お気に入りの音楽を流しながらいつも通りの速度で歩き始めた。




学校に着いたのは8時50分。1限開始のチャイムが鳴り響くのとほぼ同時だった。

・・・途中、コンビニに寄ったのが悪かったかな。授業始る前には着くつもりだったんだけど。

瑞希は道すがらコンビニに寄り、好物のバニラアイスと紅茶を買っていた。そのバニラアイスを食べながらトボトボと歩いていたのも原因の一つである。バニラアイスを食べている瞬間の瑞希の表情は幸福に充ち溢れていた。


そのままの速度であきらめたように教室へ向かう。何もないように教室のドアを開け、入室。当然のように教科担任の罵声が飛んでくる。

「なんで遅刻したんだ?」

決まり文句のような聞きなれた言葉。いつも通りに返答する。

「寝てました」

それだけ言ってあくびをしながら自分の席に着く。

そのまま寝ようとする瑞希だったが、そこに横から声がかかった。

「また遅刻して。何やってんの?」

母親の様なことを言うのは、天笠千草あまがさちぐさ。黒いセミロングの髪を揺らしている、一般的に見ても可愛らしい少女である。

「お前のせいだ」

「え?」

本人に心当たりもあるはずのないことを言い、夢のことを思い出して気分が悪くなる。

あの夢に出てきた少女はこの千草である。悪寒が瑞希の背筋を駆け回った。

・・・ありえない。こいつがあんなことをするなんて。

でも、この止まらない悪い予感はなんなのだろう。

そのまま千草が言っていることを無視し、瑞希はまた夢の世界へと落ちて行った。





「ふわぁ~・・・くぅ」

眠い目を擦りながら目を覚ましたのは1限終了と同時だった。顔のあたりに冷たい感触を感じ目を覚ましたのだが、顔を上げたところには千草のむくれっつら。冷たい感触の正体はアイス。パッケージが白かったので瑞希の目が輝いた。

「ほら。アイス買ってきてあげたよ。これで元気だしな」

「ありが・・・とう」

手に取って気付いた。パッケージは白いがそこにはこう書いてあった。


新発売!ホワイトチョコレート


「俺が好きなのは何か言ってみろ」

「バニラアイス」

間髪いれずに返答が来る。

「これは何味ですか?」

「ホワイトチョコレートだけど?」

間違えたわけではなかった。当たり前といえば当たり前だ。ホワイトチョコレートと堂々と書いてあるのだ。

「ささやかないやがらせか?」

「うん」

また間髪いれずに返答。堂々といやがらせと宣言してみせた。

蓋を開け、スプーンを使って食べ始める。

・・・結構うまいな。

これがバニラアイスならと思いつつも、意外なおいしさに少なからず顔をほころばせる。

「文句いいつつも食べるんだ」

「置いといたら溶けるだろう」

口に運ぶペースが少しずつ上がっていく。

千草はその様子を微笑みながら見つめていた。

「ふう。次は移動じゃなかったか?」

「科学講義室だよ」

珍しく自ら移動を行おうとしている瑞希を見て、千草は嬉しそうにそう答えた。

「次の授業も寝るつもり?」

瑞希はまた眠そうな顔をしている。それを千草は見逃さず、少し残念な顔をしながらそう言った。

「悪いか?」

「当たり前でしょ」

やる気なんて起きないというように手ぶらで移動を始める瑞希を、千草は瑞希の分の教科書を引きずり出して小走りで追いかける。

これがいつもの光景。退屈で、何の意味もないようで、でもなぜだか心地よい。ずっと続くと、心のどこかで信じていた日常。これが瑞希の日常《世界》だった。

これから頑張っていきたいと思います。

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