始まり始まり、初めまして。
人が好きだ。
人って何だろう。
人間とは人か?
人とは人間か?
ここに、この道に、この街に、この国に、この大陸に、この星に、この宇宙に、この世界に。
いったいどれほどの人がいるんだろう。
ここじゃないどこかには、違う人がいるだろうか。
違う道に、違う街に、違う国に、違う大陸に、違う星に、違う宇宙に、違う世界に。
いったいどんな人がいるんだろう。
「また何か考えてるんだろ。」
リウの言葉でハッとする。
満点の星空の下で焚火を見ていると、ついつい楽しいことが脳内を駆け巡る。
「いつものだよ、リウ。ねえリウ、次の町はこの世界で唯一の『人の町』なんだって。」
「そりゃなにより。」
また、少しリウの瞼が落ちる。
眠いなら寝ればいいのに、律儀に火の番を続けようとする。
「ねえリウ、君は人だろう?」
「なんども言わせないでくれ。奴隷ってのは人でなしだぜ、ご主人様。」
リウの頭がカクンと落ちて、鉄色の首輪が焚火の光で煌めく。
冷たい夜に、温かい火にあたって、眠そうに瞳を潤ませる人でなしがいるだろうか。
「ねえ、リウ。」
「なんだよ。」
もう口も開かないのか、ボソボソとリウが答える。
「人ってなんだろうね。」
「…お前のつまらない話も、眠気覚ましにはぴったりだ。」
地平線に日の光が差した。
燃え尽きた焚火の残骸を、朝日が照らす。
何もない荒野を、新しい一日が温めていく。
私はゆっくり立ち上がって、出発の準備をする。
ふと、荷物の中のコートの存在を思い出して、リュックの奥底から引っ張り出す。
「今ならティキーにもピッタリだと思うのに。ティキーはせっかちだったからなぁ。」
俺には大きすぎる、と言って私にコートを押し付けた少年を思い出す。
しわくちゃのコートをバサバサ広げて、リウの肩にかける。
モチモチのほっぺたが、夜の忘れ物のように冷たくなっている。
解錠魔法を使うと、首輪はあっけなく外れた。
カラン、という寂しい音がして、首輪が地面に落ちる。
首輪を拾い上げてリュックに押し込み、膝に力を込めて立ち上がる。
「またね、ティキー。」
リュックを拾い上げて、つま先で二回地面を蹴る。
「じゃあ行こうか、リウ。」
リュックを背負って歩き出す。
17人の友人を背負って歩き出す。
「少し重くなったって言ったら、リウは怒りそうだな。『レディに対して失礼だ』って。頑なに人だって認めないくせに、レディであることばっかり譲らないんだから。」
足取りは軽やかに、独り言は軽快に。
果てなき荒野の果ての目的地を目指して、私は歩を進める。
振り返らずに、まっすぐに。
やっと全身を見せた太陽が、冷え切った荒野を温める。
どこからともなく落ちた雫が、枯れた大地に消え果てる。
「次の町にはどんな人がいるのかな。」
作者は怠惰と自堕落と惰眠を愛する飽き性ですので更新は無限に遅れる場合がございます。




