↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その【聖女】転生者につき。  作者: お餅憑き
六章:

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/127

頁:53 その【都市】学術都市につき。:後編◆挿絵有り



セラの必死の《祈り》が届いたのか、賢者の顔色は健康的な赤みへ戻った。

熱も下がり呼吸も安定し、全員が安堵の息を洩らし、緊張が解ける。


「よかったぁ…でもセラも無理はしちゃダメだよっ!

 君はいつも無理して力を使いすぎちゃうからっ!」


「大丈夫ですよ! まだまだ元気いっぱいですっ!おまかせ下さいっ!」


ほっと一息ついたノア。騎士も腕を組んだまま瞳を閉じていた。

賢者の側では、タオルを手にしたルルが、安堵したように息を吐き出す。


「す、スミマセヌッ! 皆様ッ、聖女殿……尽力頂き――

 誠にッ!!誠に感謝をッッ!!」


賢者は上半身を起こし、先程までの体調不良が嘘のような声量で謝罪。

彼の側で、ルルは腕をぱたぱたと振り、元気な様子に嬉しそうにしている。


ふと、彼女は疑問を感じたのか、賢者に問いを投げた。


「なーなー。 賢者ちゃんってよ、なんでそんな身体弱いん?

 病弱? なんか病気持ちとか? あたしちょい、気になって。」


問いを投げられた賢者は若干言い淀むが、咳払いの後、言葉を返した。


「ワタクシの【加護(ギフト)】ですがッ…見たものを瞬時に記憶できる――

 そういったモノですッ! ですが…元々ワタクシ、身体が強くなくッ!

 このような無様で情けない姿を晒してしまいッッ!!」


「そうですなッ…。幼少期から病弱ということもありましてッ……

 この図書館に身を寄せ、通い詰めていたのですが――ッ」


彼が語り聞かせてくれた、彼自身の話しを要約すると――


幼い時分より身体が弱く、発熱は日常茶飯事であったらしい。

自身の身体の事、症状が一体なんなのかを知りたくなり――


この大図書館に、通い詰めていたのだそうだ。

【加護(ギフト)】を授かる儀式にて【書庫(ライブラリ)】という【加護(ギフト)】を授かったと。


それ以降、一度目に入ったものは記憶できるらしいのだが……。

便利だと思っていた【加護(ギフト)】には副作用があるらしい。


その副作用とは、一度に多くの情報を目にすると、体調に現れるのだと言う。

著しく体調不良を起こし、結局の所、賢者の体調不良の原因は不明のまま。


焼け石に水どころか、泣きっ面に蜂のような状態なのだと語った。


悔しそうに語る賢者の顔は、それでもどこか諦念を帯びたもので。


語り終えた賢者を無表情で聞いていたルルが、そっと彼の頭に手を乗せる。

優しい手つきで頭を撫で、彼女の紅い瞳からは慈愛が滲む。


「よしよし。 昔からつれー身体だったんじゃね。

 あたしじゃ、体調を変わってあげられんけどさ、話は聞くけぇ。」


「ルル嬢ッ……! ズビバゼェェンッッ! してですッ!!

 ワタクシとのやり取りが出来なかった期間の情報ッッ!!!

 できればッ!! ワタクシにも共有をお願いしたくッ!!」


「こちらでもお調べさせて頂いた情報を、報告したくッ!!」


賢者の言葉を受け、セラが一同を代表しこれまでの事を語る。

掻い摘んで賢者へと説明をし、共有した。


ヴェルカナという孤島での出来事。交易都市(ヴァルメリア)近辺の迷宮での事。


また、半魔である幽玄の白雪(ニヴェイシア)子爵にも、石の存在は良く分かっていないと。


話の節々で賢者の瞳は見開かれ、時折「ファッ!?」と奇声を上げる。

全て聞き終えた後、興奮を隠せない様子で賢者は鼻息を荒げていた。


すると、盛大に空気を肺に取り込み――次いで禁書庫内に広がる絶叫。


「ヴェルカナ岩礁でワイバーンはッッ!! ありえませぬッッ!!!

 飛竜種は群れをなす生態系故ッッ!!あってはなりませぬッッ!!

 してッッ!!黒泥についてですがッ!!」


「数百年前の厄災の記述ッッ!! そこに記されていた一文ッッ!!

 魔物を生み出す泥ッ!! そのような記述がありましたーーッッ!!

 故にッ!! 黒泥は魔物と瘴気を生み出す汚泥ーィッッ!!

 そしてェッッ!! かの石は泥の発生装置ィッッ!!!」


「ゴッホ!! ゴホゴホッ!! ゴッホ!」


無駄に張り上げてしまった声量――誰しもが、結果が見えていた。

賢者は勢い良く寝台に倒れ込み、盛大に咳き込み、苦しそうに藻掻く。


ジト目を向け、セラが再び賢者の身体に触れ《治癒の祈り(サナティオ)》を祈る。

彼女から溢れる聖光が、賢者に癒しをもたらすが、賢者が懲りずに口を開けた。


「ですのでェッッ!! 詳しい調査が必要かとッッ!!!

 ワタクシはッ!!! そう、思うのデェェッスッッ!!!」


賢者・バルタザール。彼の声は先程まで伏せっていた人物とは到底思えない。

それ程までの声量でセラは――彼女は《祈り》を辞めていた。


しかし祈られていると確信があったのか、バルタザールは言葉を続ける。


「――そもそもッ!! 飛竜種は北の山脈ッ!!!」


「ラメルノートの一帯が縄張りッ!! そこでしか活動しておりませぬッ!!

 群れを成し、滅多に人里に降りることも有りませぬッッ!!

 ましてや孤島ッ!? 絶対にッ!! あってはならぬッ!!」


「とんでもない事態であるのですぞ――ッッ!!!」


彼の演説は誰一人聞いておらず、左から右へと受け流されていた。

まるで聞き流されるラジオが如く――完全無視を決め込まれる。


挿絵(By みてみん)


しかしそれでも、賢者の言葉に戸惑いを隠せない一同は顔を見合わせる。


「確かに、あの迷宮では泥から魔物が湧き出ていたね。

 つまりあの石の泥は魔物を生み出して、瘴気を生み出して……」


「……で、なんだけど。 魔物を生み出す石? そんなモノを――

 どうして、魔族さんたちはばら撒いてるの?」


「理由が見えないよね。 僕たち人間を困らせるのが目的?

 戦争って言っていたけど…どう関係があるのかな?

 ごめんね。 僕にはちょっと、意味がわからないや……」


ノアは考え込んでいるが、理解できず頬を掻き、苦笑を浮かべていた。


「とりま、ヴェルカナ行くんじゃろ? ってなったらさ――

 また、交易都市(ヴァルメリア)戻らんとダメなん? 他に港街ってあるん?」


皆が作戦会議をする最中、賢者は未だに何やらウンチクを語り続けている。

一同は彼の演説を背景音に、語り合うが――セラは賢者に睨みを利かせていた。


非常に残念ではあったが、賢者には聖女の視線は届いていない。


賢者が語り終えたらしく、やりきった様子で「ふんすッ!」としたり顔。

後にルルの『他の港町』と言う言葉に反応を示したのか――


「ヴェルカナ岩礁行きは、交易都市(ヴァルメリア)でしか船は出ておりませぬぞッ!」


と、勢い良く返答を返してくれたまでは良かったが、しかしだった。

結局、そこにまた逆戻りせねばならないのか?と、全員の表情が沈む。


「とりあえず、あの子爵が言ってたろ。 まずは魔道具の修理。

 んでその後に孤島へ行く。 これで良いだろ?」


パルテオンの言葉に賛同するように、ノアが言葉を重ねる。


「そうだね。 僕もその意見に賛成だよ。 それにえっと……

 前にアメトさんがセラに渡してたあの“護符”だったかな?

 そういうのがあったらいいよねって…! あと念のためにさ……」


「スライムの体液に耐性がある防具の予備――僕は必要かなって……。

 それに、折角だからさっ!こっちで出来ることをしようっ!」


彼らの言葉に、ルルとセラは頷き、同意の様子を見せた。


ルルがそっと挙手をし、賢者へと問いを投げる。


「あたしさ、もうちょい魔力の伝導率が高い短杖(ワンド)ほしいんよ。

 そゆのって、こっちあるん? 交易都市(ヴァルメリア)には無かったんじゃけど。」


「ウーム…。 そうですなぁッ…ルル嬢もご存知かとは思いますがッ!

 魔の力は魔族由来の力とされッ! 煌陽国(セレスタリア)では少々忌避されておりッ――

 既製品ともなると、精霊術向けのものが多くッ……

 ですので、鍛冶屋に依頼するのが適切かとッ! 如何ですかなッ!?」


賢者はメガネをくいくいと押し上げ、ルルに提案。

提案を受けた彼女は「あーね。よさげ」と短く返答を返す。


どうにも眠いのか、彼女は半眼になり、ウトウトとし始めていた。


セラがルルに気を掛けながらも、便乗する形で控えめに賢者に質問。

魔道具を見てみたいと尋ね、賢者に場所を簡潔に教えてもらう。


魔道具の修理も、そちらの方面だと教えてもらい、耳飾りをノアへと渡した。

ノアは頭に疑問符を並べ、魔道具を受け取るが「僕…?」と賢者を見つめる。


「おっと、失礼しましたッ!! 魔道具や護符は聖女殿と同じ方角ッ!

 故に勇者殿に託させて頂いたのですッ!それにてっきりワタクシ――

 勇者殿と聖女殿が共に行動をするものかとッ…!」


こうして話し合いの末、後日の予定を立てた後に、一同は宿へと向かう。


禁書庫を抜け、大図書館を離れ、簡素な安宿を無事に確保し――

一同は久々に硬いベットに横になり、その日を過ごすのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。