第二話 友人と猫と男。「夏と言えば……」
冷房の効いた部屋で、友人は言った。
「夏といえば、祭りだよね」
男は猫を撫でながら答えた。
「どうだろうな」「ニャー」と会話に参加するように鳴く猫も、若干首を傾げている気がする。
マイペースな友人が、「俺ってさぁ」と自分を語り始める。
「ちょっと潔癖症気味じゃん?」
「知らねぇよ」と返す男は、友人が何を言いたいのかさっぱり分からなかった。
友人が、祭りといえばさ、と何故か声を潜め、口元を隠す。
「や……い……とか……じゃん」
「聞こえねぇんだわ」
「ニャー」
「屋台とかあるじゃん」と言った友人は、口から手をどけていた。
今度は普通に聞こえた。先ほどまでコソコソしていたのは、一体なんだったのか。
面倒になった男は可愛い猫だけに時間を割くことにした。
ゴロゴロゴロゴロ……。
猫が喉を鳴らし、男の手にゴロゴロ……が伝わる。
男がくっ……と顔をしかめる。
にやつくわけにはいかない。
自称潔癖症気味な友人は、男の部屋の床に、ゴロン――と寝転がった。
黒いTシャツが、猫の毛だらけになっている。が、教えるのも面倒なので、男は黙っていた。
「屋台のさぁ」
「おー」
ゴロゴロゴロゴロ……。
「あれ、あるじゃん……あれ」
「おー」
ゴロゴロゴロゴロ……ゴロゴロ……。
穏やかな時間が、ゴロゴロゴロゴロ……と過ぎてゆく。
涼しい部屋の中、外からは、ミーともビーとも違う、言葉では言い表せない蝉の声が、外の暑さを知らせるように響いている。
友人がふたたび口を開くのと、男がそれに答えるのは、ほぼ同時であった。
「屋台の」「はよ言えや」「ニャー」
◇
そうして、潔癖症気味な友人は、猫の毛をふんだんにつけたまま、続きを言わずに眠りについた。
「寝るなら帰れってお前」
「ニャー」




