98話 メガブタリウスが運べない
翌日の朝、宿の外でメガブタリウスに乗り込みフードの男が来るのを待った。
「おはようございます。これはどういう事ですか? こんな大きな馬車は船に乗りませんよ」
フードの男がやってくるなり、とんでもない事を言った。
メガブタリウスが船に乗らないだと!
これでは俺が大量に集めたエナドリの材料が持ち運べないではないか。
昔みたいにブタリウスに荷物を運んでもらうことも出来るけど、運べる量には限りがある。
ギリス王国で手に入れたエナドリの材料がブリージラリアス大陸でも手に入るとは限らない。
困ったな……
「どうするんすかアニキ? メガブタリウスがないとエナドリの材料が運べませんぜ」
「船に乗れなければ意味がないから、必要な分だけ持っていくしか方法がないんじゃないかな」
「俺達はブリージラリアス大陸の事をよく知らないから、出来るだけ道具を持って行きたかったのだがな。誰が何を持っていくか考える必要があるな」
「オレはエナドリの材料を持つぜ! エナドリがないと強敵に勝てねぇからさ」
「わたしは重いものは持ちたくないわよ。セレスティナは重いものを持てるでしょ? 男……なみに体力がありそうだから」
「どういう事でしょうか?」
セレスティナがトボけた顔をしている。
男だと言っていたのは嘘だったのか?
それとも俺達の手伝いをしたくないのだろうか?
「セレスティナ。俺達に同行するなら少しは手伝え」
「ラウルさん、何を手伝うんですか?」
「聞いてなかったのか? 船にメガブタリウスを乗せられないから荷物を運ぶって話をしているだろ?」
「何でですか? 荷物を持つ事で揉める意味が分からないですよ」
「まだ若けぇのにボケてんのかよ。メガブタリウスから荷物を下ろして運ぶんだよ」
「そうよ! わたしだって荷物を運ぶんだから、セレスティナも運びなさいよ」
「いいですよ。別に困る事はないですから。これを運べばいいんですよね?」
セレスティナがメガブタリウスを指差した。
どうも会話が噛み合わない。
セレスティナは天然キャラなのか?
「どうでもいいけど、まだ支度は終わらないのか?」
俺達がいつまで経っても出発しないので、フードの男が苛立ち始めた。
「仕方がない。俺たちだけで荷物を運ぶぞ」
「ラウルさん、本気で言ってますか?」
「どういう意味だ?」
「だって、こんな物運べばいいだけじゃないですか? なんでラウルさんは自分で運ばないんですか?」
「そんな簡単に言うな。自分で運べるなら最初からやってるさ。セレスティナはメガブタリウスを運べるのか?」
「出来ますよ。ほらっ」
セレスティナが触れると、メガブタリウスが俺達の眼前から消えた。
これはアイテムボックスの能力か!
チート能力を知らないフェードとアリスは驚いている。
「セレスティナはアイテムボックスの能力を持っていたんだな」
「当然ですよ。ラウルさんは転生者なのに持っていないんですか?」
「俺はチート能力を持っていないからな」
「えっ? 何でですか? せっかく異世界で無双出来るのに、何の能力も貰わなかったんですか?」
「もらったのはエナドリを生み出す能力だ。まぁ、今は事情があって能力を失っているけどな」
「もしかして無能力者? 噂と違うなぁ。凄い強いって聞いてたんだけど」
「アニキはチート能力なんてなくても凄えんだよ! エナドリの力を知ったらビビるぞ!」
「そうよね。エナドリの力があれば私たちだって無敵だもんね」
「そういう事だ」
「なるほどね。そう言う事なら行きましょ。これ以上待たせるのは失礼でしょ」
「いえいえ、良いものを見せて頂けましたからね。待たされた事など些細な事ですよ」
知らない間にフードの男が上機嫌になっていた。
理由は分からないが不機嫌よりマシだろう。
「さて、行くぞ!」
俺達はフードの男の後について行った。
フードの男は未だ名乗ることをしない。
そしてこちらの事も詮索しようとはしない。
名前で呼び合っているから、少しは名前を覚えているかもしれないけどな。
街を出て浜辺を歩いていくと小舟が待っていた。
俺達が乗り込むとフードの男がオール使って漕ぎ出した
そして沖の大型船まで移動した。
縄梯子が降ろされたので、次々に大型船に乗り込んだ。
「ようこそ私の船へ。私は船長のジャブだ。部屋を用意しているからゆっくりしてくれ。ほらっ、野郎ども! 早く案内しねぇか!」
「はっ!」
船員達が船内に案内してくれた。
部屋は二室。
俺とフェードが一緒で、アリスとセレスティナが一緒か……
フードの男は男女で部屋を分けたつもりだろう。
実際は違うのだけどね。
予想通り、アリスがセレスティナと一緒の部屋を嫌がって俺達の部屋に来ている。
セレスティナを一人にするのは色々な意味で危険だから誰かは一緒にいるべきなんだけどな。
セレスティナがいなくなったら、俺達の財産の全てを失う事になるからな。
俺がセレスティナと一緒の部屋だと変な誤解されそうだから、頼める相手は一人しかいない。
「セレスティナが逃げないように見張ってくれ。頼んだぞブタリウス」
「ブッ!」
ブタリウスがセレスティナの部屋に駆け込んで行った。
よしっ!
これで大丈夫だ……多分……




