97話 定期便が運行してねぇ!
宿に泊まった翌日、俺達は定期便の乗り場に向かった。
しかしブリージラリアス大陸への定期便は運行を停止していた。
理由は巨大なイカに襲われるからだそうだ。
海の悪魔クラーケン。
噂が本当であれば大変な事だ。
刃物でなければ攻撃が効かなそうだし、足場が悪い船の上で戦うのは苦戦しそうだ。
シャープネス・ファイバーの力があればフェードのナイフでも切り裂けるとは思うけど、クラーケンの巨体を全て切り裂く事は難しいだろうな。
安易に討伐を請け負うのは危険だな。
情報を集める為に冒険者ギルドに向かったが、得られた情報はクラーケンが現れたのは1ヶ月半くらい前からだそうだ。
クラーケンが現れた時期は最近だから、ユウマがクラーケンにやられた可能性は低いだろう。
少しだけ安心して冒険者ギルドを出ると、フードを被った男がこちらを見ている事に気づいた。
「何か用か?」
「気づいていたか。なかなか勘が良いようだな。凄腕の冒険者かな?」
フードの男が近づいてきた。
「知らないのか? 世界最強の冒険者だ」
「世界最強ね……その割には金の匂いがしないね」
「あまり派手な生活はしないタイプなんだ。金を恵んで欲しいのか?」
「恵んで欲しい訳ではないさ。ちゃんと仕事はしているのでね」
「その仕事に俺たちが関係あるのか?」
「ありますよ。ブリージラリアス大陸に渡りたいのでしょ? 私なら船をお出しする事が出来ますよ」
「船を出す? 定期便は運行を止めているのだろ?」
「定期便はね。個人的に船を出す事は出来ますよ」
「なるほど。正規とは違う方法で船を出しているのだな」
「そんな嫌な言い方しないで下さいよ。ブリージラリアス大陸との貿易が止まって商売上がったりの漁師の小遣い稼ぎですよ。どうです? 乗って行きますか?」
「行ってみようぜアニキ。こんな辛気臭い街で足止めされるのはきちぃぜ」
「詐欺かもしれないわよ。もう少し慎重に選んだ方が良いと思うけど」
フェードは乗り気だが、アリスはフードの男を不審だと思っているようだ。
俺もアリスと同じでフードの男を怪しんでいる。
現れたタイミングが、あまりにも良すぎるからだ。
おそらく定期便の乗り場からつけてきたのだろう。
定期便の乗り場から立ち去る姿を見れば、ブリージラリアス大陸に渡りたい事が明白だからな。
すぐに声をかけなかったのは、俺たちが金を持っている事を確かめる為だった可能性が高い。
冒険者ギルドに立ち寄った事で話しかける価値があると判断したのだろう。
ただの旅行者より冒険者の方が稼いでいる確率が高いからな。
状況を考えると罠かもしれないが、このまま黙っていても定期便の運行は再開されない。
暇つぶしに乗り込んでみようかな。
一応健太郎の意見も聞いてみよう。
ブリージラリアス大陸に渡りたくないって言ってくれたら……助かるのだがな。
仲間以外の前で健太郎と呼ぶのは変だと思うから、この世界での名前であるセレスティナと呼ぶことにしよう。
「セレスティナ。俺達はこの人に船に乗せてもらう予定だが、お前はどうする?」
「僕もついていくよ。ダルマンド大陸から出た方が逃げ切れると思うからね」
「ねぇラウル? 本当にこの人にお願いするの?」
「あぁ、他にブリージラリアス大陸に渡る手段がないからな」
「ラウルが納得しているならこれ以上文句は言わないわよ。そういう事だからよろしくね」
「ご利用ありがとうございます。準備がありますので、明日お迎に上がりますね」
泊まっている宿を伝えるとフードの男が去っていった。
出発は明日だから宿に戻って休むことにしたが、俺は街を歩く事にした。
目的はエナドリの素材集めだ。
色々歩いて見て回ったがダルセリアの町は活気がない。
海産物が大量に売っていたが、貿易も出来ず買い手である旅人がいないので寂れている。
せっかくだから大量に買い込む事にした。
少しはダルセリアの町に貢献出来ただろか……
なんだろう?
急に違和感を感じた。
ダルセリアの町は何かがおかしい。
そうだ!
定期便の運営会社に活気があったからだ。
1ヶ月半も定期便の運行を止め手いれば、その間は無収入になる。
内陸部と取引が出来る漁師より深刻なはずだ。
それなのに定期便の運行会社に困った様子がない。
これは何か裏がありそうだな。
だいたい想像出来るけどな。
そうと分かれば、後は準備を進めるだけだ。
今回は初めての海上戦闘になるだろうからな。
買い込んだコイツらで海での戦いが有利になるエナドリが出来ると良いのだけど。
俺はこっそりブタリウスを部屋に連れて来てエナドリの作成を始めた。
効果がないものが大半だったが、この昆布は使えそうだ。
使える材料が見つかれば買い込むだけだ。
今度はフェードも連れて買い出しに向かった。
そして大量の昆布から乾燥昆布を作り、メガブタリウスに収納した。
これで準備完了!
いつでも出発可能だ!




