96話 健太郎の目的
「セレスティナ……いや健太郎。何で聖女をやっていたんだ? 神託で選ばれても、男だからと断れば良かっただろ?」
「それがぁ~。前世で聖女に転生する小説にハマってましてね。転生する時に女神さまにお願いしたんですよ。転生するなら聖女気分を味わいたいって。本当に女性になったら困ると思ったから、見た目だけで十分って言ったら本当に美女の様な見た目になってしまいましてね。最初はノリで聖女を引き受けたんですけど、実際やってみると儀式が多くて多くて……結構面倒なんですよ。だけど聖女を止めるのはもっと大変でね、死ぬ以外に方法がなさそうなんですよね」
良くしゃべるヤツだな。
悪い奴ではなさそうだが、早口で長々と話されるのはキツイ。
色々聖女になった経緯を説明していたが、要するに自業自得だ。
自分で選んだ事なら俺たちには関係ない。
「そうか。それなら死ぬまで聖女として頑張ってくれ」
「そんなぁ~。本物の聖女を見つけたら死ななくても交代出来ると思うから、バンダニギ聖王国に来てくれないかな?」
「だそうだが、どうするアリス?」
「却下。私たちはブリージラリアス大陸に渡る予定なんだから」
「それなら僕も連れて行ってよ! 女神様から授かった聖女の力は本物だから役に立つよ」
「役に立つな! 私の出番がなくなるでしょ!」
「そうだぜ。ただでさえ微妙な立ち位置のアリスの出番を奪うなよ」
「フェード! どういう意味?」
「さ、さぁね」
「俺たちは大事な旅に出ている途中だ。無関係のお前を連れて行く余裕はない」
「そこを何とか~。女神様に見た目を戻してもらうまで一緒にいさせてくださいよ」
健太郎が俺の腕にしがみついた。
しつこい奴だな。
女神さまに見た目を戻してもらうまで一緒にいさせてか……無理だな。
俺たちを転生させた女神ダルマシウスは既に滅んでいる。
ここは素直に諦めてもらうしかない。
「健太郎、よく聞け。俺たちを転生させた女神は既に滅んでいる。もう元に戻る事はない」
「なんで女神様が滅んだって言うんですか? 女神さまに再会した事があるんですか?」
「あるのさ。そして俺が蹴りで消し飛ばした」
「何でそんな事をしたんですか?! 女神様は僕達にチート能力を授けて転生させてくれた恩人なんですよ!」
「ヤツがこの世界の住人を滅ぼそうとしていたからだ。俺は能力を失ってでも奴を倒す事を選んだ」
「ホントなんですか?」
「本当よ。私たちも一緒に戦ったからね」
「そうだぜ。アニキは相手が悪党だったら、たとえ神だってぶっ飛ばせるんだぜ!」
「あはははははっ……」
健太郎が力なく膝をついた。
やっと開放されたか。
「そういう事だから、じゃあな」
俺はメガブタリウスに乗り込もうとしたが足首を捕まれた。
しつこいな。
まだ俺に関わろうとするのか。
「僕をどこか遠くに連れて行って。誰も僕の事を知らない場所に!」
「そういうのは美女に言われたかったな。見た目だけなら美女だけど……」
「それならオッケーって事で!」
健太郎がメガブタリウスに乗り込んだ。
諦めの悪い奴だな。
フェードとアリスも健太闘が同行する事を嫌がっているようだが、賢者ランドルフの様にボコボコにはしないみたいだ。
仕方がないな。
女神ダルマシウスを消し飛ばして健太郎が男性の見た目に戻るチャンスを奪った事には変わりない。
気が済むまで一緒にいてやるか。
俺たちは健太郎を追い出すのを諦めて旅を再開した。
旅の途中で今までの冒険で行った事がある町に立ち寄れたのは良かった。
ダルダルシアの町では共に戦った騎士のゲンジロウと再会出来た。
相変わらずの狂人っぷりが面白かった。
四天王プレテイアスと戦ったペプリカントの町では、配下にしたケルベロスのライトサイドと再会出来た。
ライトサイドはダルマシウス神との最終決戦でユウマが用意してくれたエナドリである『ライトサイド』の材料をくれた。
これで切り札が揃った。
エナドリ四天王を生み出す力を失ってから苦戦続きだったが、コイツがあれば百人力だ!
俺たちはペプリカントの町から更に南に向かい、港町ダルセリアに到着した。
ブリージラリアス大陸に渡るにはダルセリアから出ている定期船に乗るしかない。
今日のところは宿を取って休む事にした。
ユウマが旅立ったのは二か月以上前の事だ。
一日二日急いだところで状況は変わりないだろう。
焦って定期船に乗っても、初めての船旅で疲れるだろうからな。
健太郎には別の部屋をとってもらった。
4人パーティーなのに3部屋借りるのはムダだとは思うけど、見た目が美女の健太郎と一緒の部屋で寝泊まりしたくはないんだよな。
フェードは……今更部屋を分ける必要はないよな。
もう慣れちゃったからさ。




