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90話 飲め!

「間に合ったようですなラウル殿。ウィルフレッド殿下を無事に連れてきましたぞ」


 毎回タイミングが悪い男だなトルディエは。

 トルディエと爽やかな青年と騎士の様な中年男性が帝王の間の入口にいた。

 爽やかな青年が第一皇子ウィルフレッドで、中年男性がウィルフレッドを支持しているドルミニ騎士団の騎士だろう。

 反乱軍が帝国城を攻撃したどさくさに紛れて侵入したのだろう。

 ヴィクターの話を聞く前であれば第一皇子を連れて来た事はお手柄だと思っただろうが、今はウィルフレッドにも疑念がある。

 だからヴィクターの話を聞き終わった後に出てきて欲しかったのだけどね。


「トルディエ、少し黙っていてくれないか」

「何故ですラウル殿? フェリシア様を救う為にヴィクターを倒して皇帝の座を奪還するのではなかったのですか?」

「その前に確認する事がある」

「その必要はないですよ。やれ、ラインハルト」

「御意。ドルミニ剣技! 魔断!!」


 騎士がアリスの魔法障壁を剣で斬り裂いた。

 魔法障壁が無くなったのでトルディエ達が帝王の間に入ってきた。

 宿敵に立ち向かう為だろう、王座に座ていたヴィクターが立ち上がった。


「また排除されにきたかウィルフレッド。貴様に皇帝の座は渡さん」

「なんでそんなに強気なんだい? 君のおもりの魔法師団がいない様だけど?」

「所用でいないだけだ。それよりゲオルグはどうした?」

「騎士団長のラインハルトが始末したよ。十賢人第二位も大したことがなかったね」

「どういう事ですかウィルフレッド様?! ゲオルグ殿に罪はなかった。倒すべきはヴィクターだけでしょう?」

「何を言っているのですかトルディエさん。ゲオルグは僕に敵対したのですよ。死んで当然ではないですか」

「どういう事なのだ?! ウィルフレッド様! 貴方は自分が何をしたのか分かっているのですか!」


 トルディエが激昂している。

 どうやらトルディエは十賢人のゲオルグと仲が良かったようだ。

 そして親しかったゲオルグをウィルフレッドが始末した事が信じられないらしい。


「今更何を驚いているトルディエ。これは戦争なのだ。死者が出たくらいで騒ぐな」

「ヴィクター! ゲオルグ殿は貴方の部下でしょう。殺されて何も思わないのですか!」

「部下ではない。同士だ! だから、いちいち死を悲しむ必要はない」

「何を言っておるのだ! 意味が分からん!」

「これがマルバダスの使徒との戦争だからだ。俺も含めて全員が死と隣り合わせだ。いちいち死を悼んでいては戦えない。我らはドルミニ帝国を守る為に戦うと決めたのだ。我らが願うのは勝利のみ!」

「な、なんだと……ウィルフレッド様、どういう事ですか?」

「ヴィクターの言う通り、僕はマルバダスの使徒です」

「なんという事だ……ウィルフレッド様が邪神マルバダスの使徒だったとは……ワシは何を間違ったのだ……」


 トルディエがよろめきながら杖を落とした。

 信じていたウィルフレッドが邪神の使徒だった事がショックだったのだろう。


「魔法師団が居なくても関係ない。俺は一人でも貴様らを倒す!」

「ヴィクターはカッコイイね。マルバダスの使徒と戦う正義の味方って感じだね。それなのにマルバダスの使徒に騙された父親を殺したのは酷いよね」

「騙されていようと関係ない。国民を犠牲にする者など皇帝の座に値しない」

「それで殺したのかい? 親不孝だね」

「殺したのは貴様だろう! アレは既に父では無かった!」

「そうかな。僕にとっては素敵な父だったよ。弱者を踏みにじって人を道具の様に扱うところがね」

「おのれ!」


 ヴィクターが剣を抜いてウィルフレッドに切りかかろうとした。


「ウィルフレッド様にを殺させはしませんよ。ドルミニ流剣技、俊突!」

「お待ちください!」


 トルディエがヴィクターを庇ってラインハルトの剣に貫かれた。

 血を流して倒れるトルディエ。


「トルディエ……何故俺を庇った?」

「ワ、ワシには……ヴィンセント様に拾わ……れた恩が御座います。だからヴィンセント様を殺した貴方を恨んだ……でも……間違っていた」


 トルディエが徐々に弱っていっているのが分かる。

 死が近い。


「もうよい。俺が真実を告げなかっただけだ。信じていたウィルフレッドに裏切られ、側近の全てを殺された俺には周りの人々を信じる勇気がなかった。俺の弱さが原因だ」

「違います……魔法師団は……事情を知らずに信じた……貴方を……ラウル殿……あとは……」

「うぜぇ」


 俺の一言にヴィクターだけでなくその場の全員が凍り付いた。


「飲め!」

「なにを……それより……最後にラウル殿に……」

「飲め!」


 俺はライジングハーブをトルディエの口に押し込んだ。


「ぼべごばっ!」


 トルディエが苦しんでいるがためらいはない。


「ブタリウス! おかわりだ!」

「ブッ!」


 ブタリウスが生み出した水で再びライジングハーブを作り、トルディエの口に流し込んだ。


「ラウル殿! ワシを殺す気ですか! なんでいつもワシだけ不幸な目にあうのだ!」


 よしっ、これでいつも通りのトルディエだ。


「アリス! ライジングハーブの回復力だけでは完治は難しい。回復を頼む!」

「気が乗らないけど、このまま死なれるのは寝覚めが悪いから頑張るわよ」


 アリスが回復魔法でトルディエの傷を治し始めた。

 さて、敵がハッキリしたのならやる事は一つ。

 目の前の敵をぶっ飛ばすだけだ!

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