表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/159

9話 何故か嫌われる賢者

 装備を整える事を決めた俺たちは食事を終えた後に部屋に戻った。

 そして明日に備えて眠る事にした。

 翌日、俺たちは村長の家に向かった。

 小さな村には冒険者ギルドがないから、村長に仕事を紹介してもらおうと思ったのだ。

 村長は俺たちが冒険者にみえないので話をしてくれなかったが、アリスのお陰で仕事をもらう事が出来た。

 侮っていたぜダルマシウス教。

 こんな小さな村でも信仰されているとはね。

 アリスの自慢げな顔が少し気に入らないが、仕事を得られたのはアリスのお陰だから我慢しよう。

 村長から受けた依頼はグリーンウルフの討伐。

 最近、村の周辺にグリーンウルフっていう魔獣が現れて村人や旅人を襲うそうだ。

 エナドリがあれば直ぐに解決出来るつまらない仕事だと思うが、稼がないと冒険を続けられない。

 早速俺たちは村周辺の森へ出かけた。


「この先の森に入るのかね? この先は獣の世界。ケガをする前に引き返す良い」


 森の入口で謎の老人から声をかけられた。

 暇そうな村人だな。

 ゲームで出てくるNPCみたいな事を言っている。

 俺は気にせず森へ向かおうとしたがーー


「とっとと帰れやクソジジイ! 切り刻むぞ!」


 フェードがナイフを抜き、老人に突き付けている。

 何をしているのだフェード?

 粗暴な奴だとは思っていたが、こんな老人にナイフを突き付けるとは思わなかったぞ。


「止めなさいよフェード。ご老人が可哀そうでしょ」


 アリスがフェードを止めた。


「ご老人ではないですよお嬢さん。ワシはトルディエ。賢者トルディエと言えば分かってもらえるかな? 以後お見知りおきを」

「変態よ! お尻置きって言ってたけど、このお爺さん椅子扱いして欲しいのかな? やっつけてよラウル!」

「アリス。お尻置きではない、お見知りおきだ。これからも覚えておいてくくれみたいな意味だ」

「やっぱり変態じゃない! 初対面の女性にワシの事を覚えておけなんて気色悪いわよ!」

「オレもアリスに同意するぜぇ。さっさと消えちまいなトルディエ!」


 フェードとアリスが自称賢者のトルディエに敵意を向けている。

 何でこんなに嫌われているんだ?

 特に嫌われる要素は無かったと思うけど。


「連れが失礼な態度を取って済まなかったな自称賢者さん」

「自称ではない! 賢者トルディエだ! 知っているだろ? 賢者トルディエの旅行記を読んだ事はないか?」


 賢者トルディエの旅行記?

 そんな本は読んだ事はない。

 そもそも俺の実家には本が無かったから、本の話をされても分からないんだけどね。


「フェードとアリスは読んだ事はあるか?」

「ねぇっすよアニキ。こんなヤツの事なんて知りたくもないね」

「私は本は大好きよ。でも賢者トルディエの旅行記は読んだ事はないわね。教会にはおいてなかったと思う」

「ワシの本を読んだことがないなんて嘆かわしい。両親達から話を聞いたことはないか? 50年前に勇者と共に旅をした賢者トルディエだ」

「俺の両親は50年前は生まれていないぞ」

「私の両親も同じね。フェードは?」

「オレは関係ねぇよ!」

「そんなぁ……せめてお嬢だけでも……」

「初対面の貴方にお嬢なんて呼ばれたくないわよ!」

「二度と関わるんじゃねぇぞ、コラァ!」

「知らなくてゴメンな。急いでんだ。じゃぁな!」


 俺は賢者トルディエに別れを告げて森に入った。

 さて、どうやってグリーンウルフを誘き寄せようか?


「ブタリウスをエサに誘き寄せたら簡単じゃない?」


 アリスの言葉を聞いて納得した。

 なるほど、誘き寄せるエサを用意すれば簡単ではないか。


「フェード、やってくれ」

「分かりやしたぜアニキ!」

「えっ、ちょっと、なにするのよフェード!」


 フェードがアリスを縛り上げた。


「よしっ、これでエサの準備は完了だ。隠れるぞフェード」

「了解ですぜアニキ」

「えっ、これってラウルの指示? いつの間にフェードに伝えたのよ!」

「伝えてはいない。だが伝わった。そういう事だから頑張れ!」

「ふざけるなああああ!」


 アリスが叫んでいるが無視して近くの草むらに隠れた。

 5分後、緑の狼がアリスの近くに集まってきた。

 あれがグリーンウルフか?


「ちょっと! 早く助けに出てきなさいよ! グリーンウルフ出て来たでしょ!」

「ブッブッ!」


 ブタリウスがアリスを守ろうとグリーンウルフとの間に立ち塞がった。

 仕方がないな。

 もう少しグリーンウルフを引き寄せよと思ったが、ブタリウスが出てしまった以上、このまま隠れ続けている意味は無い。

 囮に使おうとしたアリスを守ろうとするなんて、ブタリウスは本当に良い奴だな。


「フェードはアリスとブタリウスを守れ! 俺は逃げるグリーンウルフを狩る。これを使え!」


 俺は俊敏さを生み出すエナドリ、スピーディー・ケンタウロスを2本生み出し、一本をフェードに向かって投げた。

 そして二人一緒にエナドリを一気飲みした。

 ギュンギュン力がみなぎるぜ!

 俺は逃げるグリーンウルフを追いかけて蹴り倒した。

 フェードもナイフでグリーンウルフと戦っている。

 この様子だとアリスとブタリウスの事はフェードに任せても大丈夫だろう。

 次々に逃げたグリーンウルフを追いかけて倒し、ついに無事に最後の一匹を倒した。

 ごめんな。

 悪意はないだろうけど、人が襲われたら困るんだ。

 皆のところに戻ると、拘束を解かれたアリスがフェードに掴みかかって文句を言っていた。

 悪ふざけしすぎたか。

 エナドリの力があれば守り切れる自信があったから囮にしたのだけど、説明しても納得してくれなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ