83話 ミステリアスミルク
ヘンドリックに色々魔法を使われては面倒だ。
十賢人は他に4人残っているから早く倒してしまいたい。
「くらえ! エナドリパンチ!」
「無駄です!」
俺のエナドリパンチが魔法障壁によって防がれた。
でもこれは想定内の事だ。
俺がエナドリパンチを放った理由はヘンドリックを足止めする為だ。
ヤツは魔法障壁で俺の攻撃を防げたから油断して足を止めている。
このまま必殺のエナドリキックで魔法障壁ごとぶっ飛ばしてやる!
「油断したな。エナドリキィィィィック!!」
俺の最強の蹴りが魔法障壁を貫通しヘンドリックを突き抜けた。
どういう事だ?!
くっ!
俺は背中に痛みを感じ、吹き飛ばされた。
「今の風魔法で倒れないのか。魔法耐性が強いのかな?」
振り返ると背後にヘンドリックがいた。
さっき俺が攻撃したのは幻影だな。
油断していたのは俺の方か。
幻影を魔法障壁で守る事で俺を騙すとはね。
なかなかやるじゃないか。
風魔法で斬り裂かれた傷はライジングハーブの効果で回復をし始めているが、
完全に直るのには時間がかかる。
このまま攻撃を受け続ければ、ヤツの魔法で倒される事になるだろう。
「フェード、スピードで攪乱するぞ!」
「了解だアニキ!」
ライジングハーブを飲んで加速したフェードがヘンドリックの背後をとろうとする。
「無駄です。ソートレターデーション!」
ヘンドリックが魔法を使うとフェードの動きが鈍くなった。
「くそっ! コイツ加速しやがった!」
フェードは何を言っているのだ?
ヘンドリックは加速していないぞ。
フェードの動きを更に観察すると動き自体は遅くなっていない事が分かった。
遅くなっているのは動きではないのか?
ヘンドリックの火炎魔法が足元に着弾してフェードが転んだ。
「なに遊んでるのよ! 早く倒さないと他の十賢人が集まってくるでしょ! 速さだけが取り柄なんだから頑張りなさいよ!」
アリスがフェードに激を飛ばしたがフェードからの返答がない。
いつもならすぐに罵り合いをするのに……そうか!
これは思考を遅くする魔法だな。
あらゆる攻撃魔法や防御魔法を使いこなすだけだなく、こんな能力低下の魔法まで使えるのか。
万能のヘンドリックは、その名の通りあらゆる魔法を使いこなせるようだ。
俺まで思考遅延の魔法を受けたら敗北するだろう。
ヘンドリックはライジングハーブで身体能力を強化しただけでは倒せそうもないな。
最初は三戒より弱い奴らだと思っていたが、上位の十賢人はなかなか強いではないか。
こうなったらアレを使うしかない。
「ブタリウス! 水魔法だ!!」
「ブッ!」
ブタリウスが放った水魔法をエナドリの容器で受け止める。
だが混ぜるのはいつもの薬草の粉末ではない。
ロイレスの村で入手した牛乳の粉末だ!
見せてやる!
これが俺の新しいエナドリ、ミステリアスミルクだ!
俺はミステリアスミルクを一気飲みしてヘンドリックへ向かって走った。
「無駄です! ソートレターデーション!」
ヘンドリックが俺に思考遅延の魔法を使ったが気にせず俺は何もないところ目掛けて攻撃を仕掛けた。
「ここだ! エナドリアッパー!!」
俺の拳が何もないところに直撃すると、ヘンドリックの姿が現れた。
「何故ここにいると分かった?!」
ヘンドリックが回復魔法で傷を癒しながら聞いて来た。
わざわざ敵に能力を教えてはやらないさ。
まぁ、知ったところで対処は出来ないだろうがな。
俺のミステリアスミルクには魔法耐性を上げる効果がある。
だから思考遅延の魔法もかかっていないし、幻影魔法や透明化の魔法も見破っているのだ。
初めて使うからどの程度の攻撃魔法まで耐えられるか分からないが、ヘンドリックの攻撃魔法程度なら防げるだろう。
万能な分、一つの能力に秀でてはないからな。
特化していない能力など恐れる事はない。
「見つけられるのは俺は嗅覚が優れているからさ。臭いんだよ。お前のセリフ」
「そんな事で透明化が破れるものか! くらえ! 全ての攻撃魔法に耐性はないだろ! どれか弱点はあるはずだ!!」
火、水、風、雷、土……ヘンドリックは使える攻撃魔法の全てを使って攻撃してきた。
だがそんなものはお構いなしだ。
俺は全ての魔法の直撃を受けながらヘンドリックに近づいた。
「何故だ! 何故無傷なんだ! このバケモノめ!」
「その通り。エナドリを飲んだ俺は正真正銘のバケモノさ。エナドリは人間の領域を遥かに越えた存在になれる唯一の飲み物なんだからさ」
「私は負ける……だが!」
ヘンドリックが効果が分からない魔法を使った。
気にする事はないか。
今の俺にはあらゆる魔法が効かないんだから、ヘンドリックが使った魔法が何か知る由もない。
「しばらく眠っていてもらおうか。エナドリパンチ!」
俺の拳を腹に受けたヘンドリックが倒れた。
あとは反乱軍に任せよう。
「よしっ! 帝国城まで一気に進むぞ!」
俺の号令を受けて、後退していた反乱軍が再び進軍を開始した。
このまま一気に帝国城へ突撃してみせる!




