8話 次の目的を決めるぜ!
村には一軒しかなかったから探す手間が省けた。
有難いことに馬小屋もある。
俺はさっそく部屋をとる事にした。
「おかみさん、コイツらを馬小屋に泊めても大丈夫か?」
「豚ですか……馬と同じお金を頂きますが大丈夫ですか?」
「それなら決まりですなアニキ。行くぞブタリウス」
フェードがブタリウスを連れて行こうとしたので、俺は手で制止した
「どうしやしたアニキ?」
「アリスも連れて行け」
「どうして私も一緒に行かないといけないの? ブタリウスを馬小屋に連れていくならフェードだけで十分でしょ?」
「何を言っている? 豚小屋に行くのはブタリウスとアリスだ」
「はぁ? 何で私が馬小屋行きなのよ!」
「二部屋借りるのは持ったいないからだ。俺とフェードは同じ部屋にするから、アリスはブタリウスと一緒にしてくれ」
「いやですぅ! 自分の部屋の料金ぐらい払うわよ! おかみさん、他に開いてる部屋ある?」
「それではラウル様の隣の部屋でどうぞ」
「それじゃ私は先に行ってるからね。夕食時に今後どうするか話し合いましょ」
アリスが階段を登って行った。
「フェード、俺は先に部屋に行ってるからブタリウスを頼む」
「任せてくだせぇ! 今度こそ行くぞブタリウス!」
「ブッブッブッ」
フェードとブタリウスが馬小屋に向かって行った。
俺は2階に上がり借りた部屋に入った。
さて、荷物がないから特にやる事はないな。
フェードが来るまでくつろぐとするか。
一時間後、フェードがやってきた。
「ずいぶん遅かったなフェード。ブタリウスが何かやらかしたか?」
「何もないっすよアニキ。ブタリウスに食事を与えていただけですぜ」
「食事? フェードが買って来たのか?」
「おかみさんに頼んで食事を作ってもらったんすよ。腹が膨れりゃ畑を荒らす事も無くなりますぜ」
「俺はそこまでやれとは言ってないぞ。お金かかって大変ではないのか?」
「ブタリウスはオレに初めて出来た子分ですから。大変な事じゃないっすよ」
「そうか。アリスが待っているから食事に行こう」
「了解ですぜアニキ」
俺とフェードは部屋を出て食堂に向かった。
「こっちよ」
アリスが手を振っている。
俺とフェードは一緒のテーブルについた。
肉料理か、なかなか美味しそうではないか。
なんの肉を使っているかは分からないけどな。
「ねぇラウル。二人が来るまでの間に情報収集をしておいたんだけど、ぺプリカ地方に現れた四天王一人、プレテイアスは南部最大の都市ペプリカントを占拠したらしいわね。早くペプリカントを救いたいけど、いきなり四天王と戦っても大丈夫かな?」
なるほど、アリスは情報収集をしていたのか。
四天王プレテイアスか。
どのような力を持っているかわからないが、エナドリがあれば負けるとは思えない。
俺が倒せば良いだけだが、手下がいたら面倒だな。
市民に被害が出る可能性が高い。
近隣の町の騎士に協力を依頼するのがよいだろう。
でも、その前にやっておくことがある。
「四天王は俺が倒す。その前に装備を整えておく必要がある」
「装備? 私は神官だから、今着ている神官服以外必要ないけど?」
「武器ねぇのかよ。役に立たねぇな。オレにはこのエナドリを塗ったナイフがあるのによぉ」
フェードがナイフ取り出しペロリと舐めた。
「食事中にナイフを出すな。でも役に立たないって事には同意するけどな。アリスは戦う気がないのか?」
「何言ってるのよ? 私は神官よ。回復と防御の魔法を使えるのよ。私と同等の力を持つ神官がいるのは上級冒険者パーティーくらいなものよ。仲間になった事を感謝して欲しいわね」
「俺には必要なさそうだな」
「アニキが不要ならオレにとっても不要だよな」
「二人共聞いてた? しかも私が使えるのは上級の回復と防御魔法なのよ。ケガをしても回復出来るし、致命的な攻撃を受ける事も無くなるのよ」
「エナドリがあれば攻撃を受けても跳ね返せる。飲めば回復も一瞬だ」
「アニキの言った通りですぜ。エナドリがあればオールオッケーだぜ」
「なによ! 私は凄いんだからね!」
アリスが叫んだので、驚いた他の宿泊客の視線が集まる。
「静かにしよう。アリスが役に立つかは分からないが、今後に備えて装備を整える必要がある」
「分かったわよ。でも誰の装備を整えるの? 私は武器を扱えないわよ。ラウルも装備は要らないんでしょ?」
「オレはこのナイフがあれば十分ですぜ」
「装備が必要なのはブタリウスだ。手ぶらで旅をするのは危険だからな、ブタリウスが荷物を運べる様にしたい」
「さすがアニキ! これからはブタリウスがオレ達の活動の中心になるんですね!」
「ところで、なんでブタリウスって名前にしたのよ。もっと可愛い名前にすれば良かったと思うけど」
アリスに聞かれて答えに窮する。
豚だから名前にブタがついている事は理解してもらえるだろう。
でも活動拠点にしようと思ったから、空母や戦艦の様な感じの名前にしたかったってのは理解してもらえないだろう。
前世の記憶がない相手に説明するのは難しいな。
そうだ俺と同じ転生者のユウマなら分かってくれるだろう。
今度会った時に自慢してみようかな。