77話 雷撃のクラウス
「関所を破った事がバレているなら隠す必要はないな。俺たちはヴィクターを倒すつもりだ。だからドルグに協力するよ」
「本当か? オレの誘いに乗ってくれて嬉しいぜ。でも完全に信用してはいないからな」
「それはお互い様だ。俺だってドルグの全てを信用してはいない」
「正直でいいな。お前とは仲良く出来そうだ」
俺はドルグと握手をした。
「この後どうする予定なんだ? 仲間を増やしたいなら町で声をかけてくるぞ」
「その必要はない。ドルミニ帝国には初めて来たんだろ。町で下手に聞き取りしたら正体がバレるぞ」
「なら大人しく待機してればよいのか?」
「それもない。これ以上仲間を増やす時間は無いからさ」
「何で時間が無いんだ? 何か重要な作戦でも実行する予定なのか?」
「重要な作戦をする予定なら良かったのだけどな。純粋に時間がないだけだ。ヴィクターはギリス王国への侵攻準備を開始した。つまり、ギリス王国へ向かう途中にあるドルラニアに帝国軍がやってくるって意味さ。オレの予想では数日以内に先発部隊が到着するはずだ」
「なるほどな。それで、その先発隊をどうやって撃退するんだ?」
「馬鹿を言うな。いくら冒険者が手練れとはいえ、軍相手に勝てはしないさ。帝国軍を避けて帝都に侵入してヴィクターを暗殺する以外に勝利する事は不可能だ」
「あまり良い方法とは思えないけどな」
「オレだって良くないとは思っているさ。でもな、最善の方法でなくてもやらなけりゃならんのさ」
「暗殺は賛成出来ないが、一応協力はするさ」
「それならお互いの役割を共有しておこう。ギルド全体でパーティーを組むようなものだからな」
ドルグの提案で俺たちは役割を共有する事にした。
フェードはナイフ使いだから前衛担当だ。
アリスはダルマシウス教の神官なので後衛の回復担当だ。
そして俺は……戦力外扱いだった……
武器も魔法も使わない俺は役に立たないと言われてしまったよ。
フェードがエナドリを飲んだアニキは最強だって説明してくれたけどさ。
全く信じてもらえなかったよ。
俺、一応神倒してんだぜ。
あの時よりは能力が落ちてるけどさ、それでも世界最強だと思ってるんだけど。
一回戦ってみせれば理解するだろう。
早く敵と戦いたいものだ。
……ドガン!
ドタドタドタ!!
急に部屋の外が騒がしくなった。
何事だろう?
ドルグの様子がおかしい。
予定外の事が起きたのだろうか?
突然ドアが開き、受付の職員がよろめきながら入室した。
「ドルグ様。敵襲です。お逃げ下さい!」
「ばかな! 帝国軍が来るには早すぎるだろ!」
「その通り。帝国軍が来るには早い。でも私は来てしまった。誰よりも早く」
部屋の入口に白いローブを着た金髪の青年がいた。
この青年は敵であるドルミニ魔法師団の一員だろう。
爽やかな青い刺繍が印象的だな。
ドルミニ帝国の連中はスパイクが付いた黒のレザー服しか着ない人種だと思っていたから驚いてしまったよ。
「どうやってここまで来た?」
ドルグが盾と剣を構えた。
「どちらの意味で聞いているのかな? ドルラニアの町に来た方法って意味で聞いてるなら、魔法で加速してきたって答えになる。この部屋に来た方法って意味で聞いてるなら、普通に邪魔な奴を倒しながら歩いて来たって答えだな。どっちの意味かな?」
「馬鹿にしてんのか! ラウル! さっそくで悪いが、連携してコイツを倒すぞ! 四人でかかればやれるさ!」
「無駄だと思いますよ。私はドルミニ帝国魔法師団第七位、雷撃のクラウス。私の雷撃魔法は一対多数で真価を発揮するからね」
「何だと! 何故十賢人がここにいるのだ!」
「理由は自分自身に問うがいいさ。ヴィクター様は冒険者ギルドが反逆した事をとっくに把握している。だからギリス王国進軍前に排除しておいてくれって頼まれちゃったんだよね」
「終わった……すまない。オレが仲間に引き入れたせいで巻き込んじまったな」
ドルグが武器を放棄し、俺に謝った。
なんだこの茶番は!
ドルグは冒険者ギルドを統括するギルドマスターなのだろ?
それが良く分からない七位程度が名乗っただけで諦めるのか?
ハッキリ言わせてもらうけどさ、こいつダルマシニウム神国で戦った三戒より弱いぞ。
あくびが出そうだ。
「フェード、邪魔だからアイツ黙らせてくれ」
「了解アニキ」
フェードがナイフを抜き、舌で舐めた。
「何と下品な! ドルミニ帝国の品位が落ちる」
雷撃のクラウスがフェードを馬鹿にしている。
大丈夫かコイツ?
気付いていないみたいだけど、フェードはドルミニ帝国の皇族なんだぞ?
「品位なんか知らねぇよ! オレにとっては品位なんかよりパッションが大切なんだよ」
「愚かな。大人しくしてもらうぞ。くらえ」
クラウスの杖から電撃魔法が放たれたが、フェードの髪の先端に引き寄せられて吸収された。
「なんだ?! 何で電撃魔法の軌道がそれた?」
「今の電撃魔法だったのか? ただの静電気の間違いじゃねぇのか?」
「舐めるな! 私はドルミニ帝国一の電撃魔法の使い手! 雷撃のクラウスだぞ!」
雷撃のクラウスの杖の先端に魔力が集中している。
最強の魔法を放つみたいだ。
でも全く危機感を感じないんだよな。




