76話 謎の男との会談
町中で声をかけて来た謎の男について行くと、冒険者ギルドに辿り着いた。
ギルドの中に入ると、謎の男が受付の職員と何かを話し始めた。
聞きなれない言葉だが暗号か?
少し待っているとギルドの奥の部屋に案内された。
部屋の中には豪華な机があり、書類が沢山おいてあった。
どうやらギルドの重要人物の部屋に案内された様だな。
謎の男に座る様に促されたので着席すると、さっき受付にいた職員が飲み物を持ってきた。
持ってきたのは茶の様に見えるが、無視して謎の男に話しかける事にした。
初対面の謎の男が用意した飲み物を口にしたくなかったからだ。
「俺たちを誘った理由はなんだ?」
「アンタたちってさ。関所をぶっ潰して侵入した連中なんだろ?」
俺たちが関所を破壊して侵入していた事がバレていたか。
町の大通りで悪ふざけし過ぎたのが原因だな。
でも証拠はないはずだ。
「何の事だ? 俺たちは旅の途中に立ち寄っただけだ」
「なら何でドルミニ帝国に来たんだ? ドルミニ帝国がギリス王国と戦争をおっぱじめようとしてる事は知ってんだろ? 普通の旅人は来ねぇよ」
困ったな。
第二皇子ヴィクターをぶっ飛ばしてクーデターを起こした理由を調べる以外の理由はないからね。
「そんなもんギンビルンさんの最新作を入手する為に決まってるっしょ! 戦争なんて上のヤツらが勝手にやってりゃいいのよ!」
言い淀んだ俺の代わりにフェードが説明した。
「なるほど。それなら命をかけてでもドルミニ帝国に来る必要があるな」
謎の男がフェードの説明で納得した。
それでいいのか?
ドルミニ帝国にとってギンビルンってそんなに大事な存在なのか?
腑に落ちないが、誤解が解けたならよしとすべきか。
「そういう事だ。俺たちの格好を見れば分かるだろ」
「そうか……それは残念だな」
「なんで関所の門を破壊した人を捜してるの?」
アリスが余計な一言を言った。
謎の男は関所をぶっ潰した人とは言ったが、門を破壊したなど言っていない。
それを知っているのは、関所の兵士と関所を破壊した俺たちだけだ。
「なるほどね。話してやりたいけど、素性が分からないヤツには話せないな」
「私たちは冒険者よ。ティーパーティーって名前で活動してるの。冒険者ギルドならパーティー名で分かるでしょ?」
アリスがティーカップを謎の男に見せつけるように持ち上げた。
すっかり忘れていたよ。
俺たちのパーティー名はティーパーティーって設定だったな。
しかもギリス王国を脅かしていた四天王を討伐した功績で勝手に最高ランクの冒険者パーティーにされていたんだよね。
だから隣国のドルミニ帝国の冒険者ギルドにも情報が伝わっているだろう。
謎の男が本棚の書類を捜した後、俺たちに話しかけて来た。
「英雄級の冒険者パーティー。ラウルとフェードとアリスの3人で間違いないな」
「あっさり認めたな。どうしてそんな書類を見ただけで判断出来るんだ?」
「外見の特徴が書いてあるからだ。その髪型は他には存在しない」
謎の男がフェードの頭を指差した。
「なるほど。これは他の奴には真似できないな」
「だろぉ。オレ様のクールさは世界一なんだよ」
「本当かな。何て書いてあるんですか?」
「一メートル程の長い髪を天に突き刺すように立てている。天に立てつく姿から魔族の類ではないかと疑われている。その異様な姿は人類には成し得るものではないと書かれている」
「そ、そうなんだ。私たちはどうかな?」
「ラウルは装備はシャツとズボンだけ。何も持っていない。アリスはダルマシウス教の神官と書かれている」
「じ、地味だね。私たちってフェードがいないと特徴が全くないってのが悲しいわね」
「気にするなアリス。ところでアンタは誰なんだ? 俺たちが英雄級のパーティーとはいえ、ギルドの情報を自由に閲覧出来るって事はギルドのお偉いさんなんだろ?」
「そうだよ。俺はここの縄張りを支配しているギルドマスターのドルグだ」
この怪しい謎の男がギルドマスターだったのか。
でも変だな。
何でギルドマスターが関所を破った人を捜しているのだ?
冒険者ギルドで何が起きているのだろう?
「なるほどね。それでギルドマスターが何で関所をぶっ潰した奴を捜している?」
「もう隠す必要はねぇよな。アンタらが関所を破った有名人で間違いないだろうからな。オレの目的はヴィクターの打倒だ。冒険者ギルドは第一皇子側に付く事にしたんだよ。場所は言えねぇがウィルフレッド様は生きてんだよ」
「だからヴィクターに反感を持ってる奴を捜していたんだな」
「そうだよ。情けねぇ事に貴族どもは全員ヴィクターの野郎の味方になっちまってさ。しかも帝国最強の魔導士団までヴィクターの味方をしてんだよ。ウィルフレッド様の味方をした帝国騎士団は壊滅状態だ」
そういう事情だったのか。
ドルグのいう通りであれば、俺たちの敵はヴィクター率いる帝国軍と貴族と魔法師団で、味方は壊滅状態の帝国騎士団と冒険者ギルド所属の冒険者達だけだ。
実力も人数も明らかにヴィクター陣営より劣っている。
これは苦戦しそうだな。




