72話 最大の難関
宿に戻り、俺はフェードとアリスを俺の部屋に集めた。
「どうしたのラウル? 急に集合だなんて。トラブルでも起きたの?」
「ドルミニのくそったれ共が襲撃してきたんっすか?」
「そのどちらでもない。ドルミニ帝国の情報を手に入れた」
「誰に聞いたのよ。まさかトルディエじゃないでしょうね?」
「あのくそったっれに何を吹き込まれてんすか?」
「レインだったかな? ギルドマスターのヤツ」
トルディエの名前を出すのは危険だと思ったので、代わりにギルドマスターの名前を出した。
アイツならそんなに関りがないから大丈夫だろう。
「ケインさんでしょ! 本当にケインさんから聞いたの?」
「間違えるような名前っすかね? 怪しいっすね」
あっさりバレた。
完全に疑われているな。
うろ覚えの奴の名前を出したのが失敗だったな。
「あんまり記憶にないんだよ。会ったのは一回だけだろ? それよりドルミニ帝国で何が起きたのか知りたくはないか?」
「それは知りたいけどね。なんだか怪しいのよね」
「オレはアニキを信じるっすよ。で、何を聞いたんすか?」
「第二皇子ヴィクターが皇帝ヴィンセントを暗殺した。今は第一皇子のウィルフレッドの命を狙っているみたいだ。フェードが狙われている理由は第一皇子側の陣営だからじゃないか?」
俺は第二皇子がクーデターを起こした事を伝えた。
でもフェードが狙われている理由は誤魔化した。
フェードが第一皇女だから狙われてるって事を言った時点で、俺がトルディエと話をした事がバレるからな。
「ふざけんな! そんな事があるわけねぇだろ!」
「落ち着けフェード。残念ながら事実だ。たぶんローレインに聞いても同じ事を言うだろう」
「でも何でフェード一人の為にギリス王国に宣戦布告しようとしてるの? いくら第一皇子側の陣営だっていっても一人を狙う為に戦争するかな。もしかしてフェードってドルミニ帝国の重要人物だったりする?」
アリスの指摘に焦る。
何でこういう時だけ勘が良いんだよ!
そこは気付かなくていいんだって!
「頼むよアニキ。嘘をつかないでくれ」
「嘘はついていない。第二皇子ヴィクターが皇帝ヴィンセントを暗殺して、第一皇子のウィルフレッドの命を狙っている事は事実だ」
「でもオレが第一皇子側だってのは違う。オレは第二皇子側だからな」
「そ、そうだったのか。フェードが第一皇子側だって言ったのは俺の推測だ。はずれていたなら謝るよ。でもそうなるとフェードが狙われる理由が分からないな。フェードは心当たりがないのか?」
「……ねぇよ」
フェードがぼそっと呟いた。
さすがに第一皇女だから狙われてるかもしれないとは言えないか。
ちょっとズルかったけど、これで危機は脱したかな。
「ねぇ、ラウル。フェードも狙われる理由が思い当たらない見たいだけど。これからどうするの? ユウマを追ってブリージラリアス大陸に逃げる? フェードがギリス王国からいなくなれば戦争する理由はなくなるでしょ?」
「それは止めておく」
「どうして?」
「ドルミニ帝国側が信じない可能性があるからだ。俺たちを庇ってブリージラリアス大陸に渡ったという嘘をついたと思われたら困る。ドルミニ帝国に接しているアルライラ地方には俺の故郷のネイラシアの村があるからな」
「それならドルミニ帝国へ殴り込みするのね。ラウルとフェードは私を助けるためにダルマシニウム神国に乗り込んでくれたからね。今度は私がドルミニ帝国に乗り込んでフェードの敵を蹴散らしてあげるわよ。聖女として力をつけた私の出番ね!」
アリスが聖女の杖を掲げた。
出会った頃と違って頼もしくなったな。
最初は勝手について来た頼りないやつだったんだけどな。
あとはフェードがどうするかだな。
「俺とアリスはドルミニ帝国に殴り込みに行くけど、フェードはどうする?」
「オレも行くに決まってるだろ! アニ……いや、ヴィクターとやらが何考えてんのか確かめてやんよ!」
「それなら明日出発だ。ローレインにもドルミニ帝国に向かう事を伝えておこう」
「了解! じゃあ明日に備えて休むわね」
アリスが部屋を出て行った。
よし、俺たちも休むとするか……って忘れてた!
フェードと一緒の部屋じゃないか!
今までは何も考えて無かったけど、あんな格好で性格も粗野だけど一応女性なんだよな。
ベッドは別だけど妙に緊張してしまう。
「どうしたんすかアニキ?」
「いや、大丈夫だ」
「大丈夫? 良く分からねぇっすけど、もう寝るっすよ」
フェードがとなりのベッドで寝た。
何言ってんだよ俺!
大丈夫って意味分かんねえよ!
全然大丈夫じゃない!
俺はフェードに背を向け、なんとか眠りについたーー




