63話 メディクスの罠
下の階に降りると激しい戦いが繰り広げられていた。
アルジャーノンとリヒトとの老人コンビだけではない。
俺たちを逃がす為に捕まったロナンドとフーゴや他の聖女反対運動グループのメンバーも戦っている。
俺は指揮を取っているドルシーの元に向かった。
「無事に仲間を開放出来たみたいだな」
「何なのよこの飲み物! フーゴに飲ませたら檻を素手でぶち破ったわよ! 危険なものは入ってないよね?」
「安心しろ。原材料は普通の薬草だ」
「ずいぶん親しそうじゃないの。いつの間に仲良くなったのよ」
「アリス。無事で良かったわ。心配したのよ」
アリスとドロシーが抱き合っている。
「感動の再会は後にしてくれや。三戒にバレる前にずらかるぞ!」
「分かったわよフェード。正面入口から逃げるわよ」
「それは出来ませんねぇ」
周囲の通路が魔法障壁で塞がれ、聖女反対運動グループのメンバーが立往生している。
声がした方を見ると三戒の一人……メディクスがいた。
「悪いがお前に構っている暇はない。叩きのめされたくないのであれば魔法障壁を解け」
「大した自信ですね。貴方は……あぁ、思い出した。私の前で逃げた男じゃないですか。しかも私に一方的に敗北したトンガリ頭までいる。敗者復活戦でも始めるつもりかね?」
「誰がトンガリや! このフェード様が今度こそテメェをぶっ飛ばしてやるよぉ!」
「それは無理ですね。ここで全員死ぬのだから」
「どういう事なのメディクス。殺人は禁忌でしょ」
「聖女様。世間に知られなければ問題ないですよ。ダルマシニウム内でやればバレないでしょ? その為にわざわざ捕えたのですから。やっと苦労が報われますよ」
「ダルマシニウムを血で汚すつもりなの?」
「血で彩るのですよ。神敵の血を捧げればダルマシウス神もお喜びになるでしょう」
「アリス! あのイカレ野郎は話をしても無駄だ。さっさとぶっ飛ばそうぜ!」
「そうした方が良さそうね。ラウル、コイツは私とフェードが根性叩きなおすから!」
「そういうこった! リベェエエエエンジ!」
フェードがナイフを抜き、アリスが杖を構えた。
「愚かな。皆殺しですよ」
メディクスが杖を掲げると無数の炎の矢が降り注いだ。
味方の神官戦士を巻き添えに魔法を放つのか!
俺では全員を守る事は難しい。
「甘いわよメディクス!」
アリスが杖を地面に突き立てると無数の防御障壁が現れ、メディクスの魔法を防いだ。
「魔法障壁ですか。初歩の魔法でどこまで防ぎきれますかな? 次の攻撃は強力ですよ!」
「次はないわよ! 全員を一度に倒そうと欲を出したのが敗因ね。本気で勝ちたければ最初に私を狙い撃ちするべきだったのよ!」
「それはあり得ませんよ。聖女様だけは死んでもらっては困るのでね」
「別に貴方なんかに気を使ってもらわなくても死なないわよ。フェードやっつけて!」
「いっくぜえええええ!」
フェードがライジングハーブを飲みながら突撃した。
「その程度の攻撃など読めている。魔法使いに接近するのは戦士の常套手段だからね」
メディクスがフェードの進路上に土の槍を生み出した。
フェードはとっさに空中に飛び上がり土の槍を避けた。
「それも読んでますよ。そしてこれで終わりです。空中では避けられないでしょ」
メディクスが氷の槍を空中にいるフェード目掛けて放った。
だがフェードはアリスが生み出した魔法障壁を蹴り、氷の槍を避けてメディクスに切りかかった。
「何故だ! 何故避けれる!?」
「足場があれば避けれるに決まってるだろ。テメェが馬鹿にしたアリスの魔法の力だよ! ほらっ、さっさと諦めちまいな!」
フェードがナイフでメディクスを攻撃する。
メディクスは魔法障壁を展開して防いでいるが、フェードに切りつけられた傷の影響で動きに精彩さを欠いている。
もう勝負はついたな。
「メディクス、まだ諦めないの? もう私たちには勝てないって分かるでしょ?」
「まだですよ聖女様。私にはこれがある」
メディクスが杖を地面に突き立てると同時に、自身の周囲に張っていた魔法障壁が消えた。
「何してんだ? 諦めたんか?」
「その通りだ。諦めたのだ。貴様らの命と引き換えにな」
メディクスが言ったと同時に杖の先端の宝珠が割れた。
膨大な魔力がダルマシニウムを包まれた。
周囲を見渡すと通路を塞いでいた魔法障壁が異様な輝きを放っていた。
「何をしたのメディクス?」
「結界を張っただけですよ。永遠に解けない結界をね」
「なんだとぉ?! くらえっ!」
フェードが結界を攻撃したがビクともしない。
「アリスゥ、コイツを何とか出来るか?」
「ちょっと待ってね……なにこれ? こんなの知らない!」
「当然だ。三戒を舐めすぎた罰だよ。この結界は私でも解けない。貴様らは永遠にダルマシニウムから出られないんだよ。このまま餓死するがよい。ハハハッ!」
フェードとアリスでは結界を破壊出来ないか。
それなら俺の出番だな。




