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60話 裏切り

 聖女反対運動グループの仲間になった俺とフェードは大神殿ダルマシニウムの前で抗議活動をしていた。

 俺は他の仲間と一緒にビラ配りをするのが面倒なので、フェードに横断幕を作らせた。

 ダルマシニウムの町の住民は、初めて見る派手な横断幕に興味を持ったようで、聖女反対運動に興味を持つ人達が増えたきた。

 そして、たったの3日で俺たちが所属しているグループが聖女反対運動の中心になっていた。

 他の聖女反対運動グループに声をかけなくても人数が集められるようになったのは良い事だが、別の問題が起き始めた。

 聖女反対運動が激化したせいで、一般参拝者と揉めるようになったのだ。

 純粋にダルマシウス教を信仰している参拝者に迷惑をかけるのは良くない事だ。

 当然、これだけ問題になれば神官戦士も黙ってはいない。

 既に何人か逮捕者が出始めている。

 このまま聖女反対運動を長引かせるのは危険だ。

 早くアリスを奪還して聖女騒ぎを終わらせないとな。

 聖女公表まで残り2日しかないのも問題だ。

 一度世間に聖女として認識されたら、普通に生活するのが大変になるからな。

 俺はリーダーのコニンに相談してダルマシニウムの正面入口で騒ぎを起こす事にした。

 他の聖女反対運動のグループにも声をかけている。

 明日は盛大に盛り上がるだろう。


 翌日、俺たちがダルマシニウムに向かうと他の聖女反対運動グループの姿は無かった。

 予定より早く来てしまったか?

 聖女反対運動の仲間達も不思議そうにしている。

 何か予定外の事が起きているかもしれないな……

 突然、大勢の神官戦士が現れて囲まれた。


「ダルマシニウムに混乱をもたらす不届き者よ。これ以上の暴挙は許さぬ」


 高級そうな神官服を着た男が言った。

 あの服装は三戒のソレータムと同じだ。


「お前は三戒だな」

「いかにも。私は三戒のメディクス。異教に惑わされず信仰するよう導くものなり。援軍は期待するな。既に他の聖女反対運動グループの捕縛は完了しているのだからな」

「他のグループの捕縛は完了しているだと。何故俺たちを最後に残した?」


 俺が問いかけると同時に、リーダーのコニンがメディクスの元に走って行った。


「こういう事ですよ。よくやりましたコニン。貴方のお陰で神敵の摘発が捗りましたよ」

「勿体ないお言葉です。聖女様に不満を持ってそうな奴らに片っ端から声をかけ続けて集めましたからね。苦労が報われて良かったですよ」


 嬉しそうに語るコニン。

 リーダーのコニンが大神官側のスパイだったのか。

 俺はコニンと出会って3日しか経っていないし、たいして信頼していないから裏切られてもショックは受けていない。

 だが、一緒に活動を続けていた他の仲間はリーダーの裏切りを知ってショックを受けている。

 これでは仲間の援護を受けられないだろうな。

 聖女反対運動を利用してダルマシニウムに侵入する計画は失敗だな。

 俺達だけで包囲網を突破するしかないか。


「フェード、俺たちだけでなんとかするしかないようだな」

「結局強行突破って事かよ。仕方ねぇなぁ」

「無駄な事を。諦めて捕まるがよい。やれ!」


 メディクスが神官戦士に号令をかけた。

 神官戦士達が俺たちに向かってきた。

 俺とフェードは念のために用意していたライジングハーブを取り出した。


「させるかあああああああ!」

「これ以上は通さんぞおおおおおお!」


 ロナンドとフーゴが神官戦士に立ち塞がり、俺たちを守った。


「なにをしてる? 俺たちが戦うから逃げろ」

「そんなダサい事出来るか! 新入りを守んのは先輩の務めなんだよ!」

「ラウル、フェード! お前たちは聖女反対運動の希望なんだ! お前達なら出来る! 自分を信じろ!」


 これが本当の仲間であれば感動のシーンなのだろう。

 でも本気でやっていない聖女反対運動の希望にされても困るのだが……


「ラウルこちらです。私の後について来て下さい」


 ドルシーが俺を手招きしている。

 どうすべきか迷ったが、俺はドルシーと一緒に逃げる事にした。

 このまま戦う事は出来るが、老人のアルジャーノンとリヒトまで守る事は難しいと判断したからだ。

 神官戦士が追ってきたが、ドルシーのあとをついて行くだけで追っ手をまく事が出来た。

 なかなかやるじゃやないか。

 神官戦士よりダルマシニウムの町の地理に詳しいのは凄い事だと思うぜ。

 さらについて行くと教会に辿り着いた。

 ダルマシウス教の神官戦士に追われているのに、ダルマシウス教の教会に隠れるのか?

 不思議に思ったが、俺たちはドルシーの後に続いて教会に入った。


「ドルシー様?! どうなされたのですか?」


 走り込んできた俺たちを見て教会のシスターが驚いたが、名前を知っているからドルシーと知り合いのようだ。


「緊急事態よメアリー。懺悔室を使うわよ」


 ドルシーが懺悔室に入り地下への入口を開いた。

 俺たちもドルシーに続いて地下に降りた。

 地下室は快適だった。

 食料も豊富にあるのでしばらく潜んでいても困らないだろう。


「ここは簡単に見つからないから大丈夫よ。いざという時に為に準備していたアジトなの。疲れたから少し休みましょ」


 走り疲れたアルジャーノンとリヒトが寝ころんだ。

 ドルシーは何者なんだ?

 皆には黙っていた裏の事情がありそうだな。

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