59話 聖女反対運動
セイコニアの町で情報収集をした翌日、俺たちはダルマシニウムへ向かって旅立った。
ダルマシニウム神国の街道では魔物と遭遇する事は無かった。
代わりに神官服を着た戦士とすれ違う事が多かった。
ギリス王国では冒険者が街道の魔物を倒す役割を担っていたが、ダルマシニウム神国では神官戦士が街道を守っているようだ。
旅人や商人にとっては安全で楽だが、冒険者は稼ぎが減って大変だな。
路銀を稼ぎながら旅しなけらばならない状況だったらきつかったな。
今の俺たちには四天王と魔王討伐の報酬があるから問題ないけどね。
俺たちは安全な街道を順調に進み、何事も無くダルマシウス教の聖地であるダルマシニウムの町へ辿り着いた。
ダルマシニウムの町はギリス王国の王都ぐらいの広さがあった。
町の中心の大通りの先には、ダルマシウス教の総本山である大神殿ダルマシニウムがある。
いきなりダルマシニウムに乗り込むのは危険だから、散策しながら町の様子を見る事にした。
ダルマシニウムの町はセイコニアの町で聞いた通り、多くの人で賑わっていた。
だけど賑わいの様子は大神殿の近くと入口付近では異なっている。
町の入口側では聖女の登場で賑わっていたが、大神殿の近くでは聖女反対運動で殺伐としているのだ。
俺たちは大神殿と敵対しているから、聖女反対運動の人達を味方に引き入れなければならないんだけど……嫌だな。
演技でも仲良くはなれそうもない。
「こんのぉクソ聖女がぁ! 出てこいや!」
ほらな。
こんな風に罵声を浴びせている人なんかと仲良くはなれないだろ?
「聖女なんていらねぇんだよ! ダルマシウス教なめんなよ!」
隣を見ると、ダルマシウス神が描かれている浴衣を着たフェードがいた。
いつ着替えたんだ?
周りの聖女反対運動家達もダルマシウス神が描かれた浴衣を着ているから、フェードも聖女反対運動の仲間にしか見えない。
「アニキもこれに着替えて聖女の奴を排除しましょうぜ!」
フェードにダルマシウス神が描かれた浴衣を渡された。
なんでフェードはこんな物を持って来たんだ?
俺がアルリディアに勝つために作った浴衣が、こんな目的に使われる事になるとは思わなかったよ。
フェードと違って、俺はこれを着て聖女反対運動に参加する気にはなれないな。
「アンタ凄いな。見ない顔だが新入りか?」
聖女反対運動のリーダーとおぼしき男から声をかけられた。
「新入りじゃねぇよ。オレはギリス王国で聖女を名乗る悪党と戦ってきた古参の戦士なんだぜぇ」
フェードが自信満々に答えた。
「なんと! 聖女を倒す為にギリス王国から駆けつけてくれたのか同士よ!」
「ダルマシウス教に聖女なんて必要ねぇからな。これからはオレさまも一緒に戦うぜ!」
「そうか! それなら一度本部に行こう。共に戦う仲間を紹介するからさ」
「おう! 頼むぜ!」
俺はフェードを引っ張って、聖女反対運動のリーダーから距離を取った。
「おい、フェード。様子見する予定だっただろ? いきなり聖女反対運動家の仲間になってどうする?」
「聖女反対運動に参加する人達を仲間にするんじゃないんすか?」
「聖女反対運動をしている奴なら誰でもいい訳ではない。ただの迷惑行為しか出来ない集団であれば、逆に足手まといになる。俺たちが必要としているのは三戒や神官戦士の陽動に使える仲間だ」
「どうしようアニキ? 相手はもうオレ達を同士だと思ってるっすよ」
「こうなったら一度仲間になってみるしかないか。顔を覚えられているだろうからな。さて、怪しまれる前に行くぞ」
「了解っス」
俺とフェードは聖女反対運動のリーダーについて行くことにした。
そして連れてこられたアジトで自己紹介をする事になった。
「オレはフェイドだ。よろしくな!」
フェードが名乗った。
全く偽名になっていないような気がするけど、フェード自身が名乗っているから訂正する事は難しいだろう。
せめて俺だけでも本名がバレないような偽名を名乗るとするか。
「そして、こちらがアニキだ!」
フェードが俺の事をアニキと紹介した。
偽名ですらないだろ!
ツッコミをしたかったが、ここは耐えるしかない。
「フェイドとアニキか。よろしくな。俺は聖女反対運動のリーダーのコニンだ。他の仲間も紹介するよ」
リーダーのコニンが聖女反対運動の仲間を紹介してくれた。
筋肉の塊のようなフーゴ。
2メートルくらいの長身が特徴のロナンド。
太っている老人のリヒト。
痩せた老人のアルジャーノン。
普通の女性に見えるドルシー。
老人二人はダルマシウス神に心酔しているようだったが、他の3人は普通に見えた。
特にドルシーは、何でこんな狂った活動集団に所属しているのか分からないタイプの女性だった。
戦力になりそうなのはフーゴとロナンドだけかな。
失敗したかもしれないな。
あとで他の人数が多い聖女反対運動グループに声をかけてみるとするか。




