57話 国境突破
コウサイドの町についた俺たちは、町の衛兵に事情を話してソレータムをあずけた。
あとはローレインがなんとかしてくれるだろう。
俺はフェードと共に食料と薬草類を可能な限り購入した。
そしてコウサイドの町の宿で一晩過ごす事にした。
ベッドに寝ころんで考える。
この先はギリス王国とダルマシニウム神国の国境がある。
普段は交易を行っているから普通に通行出来る。
でも三戒と敵対している今は簡単に通してはくれないだろう
俺たちの情報が関所に伝わっているだろうからな。
街道を避けて侵入すれば楽だが、そうするには馬車が通れない道を通らなければならない。
それだと持ち込める持ち物の量が制限される。
あとは関所を強行突破するしかないか。
出来るだけ関係ないヤツは傷つけたくはなかったが仕方がない。
俺はとなりのフェードに話しかけた。
「フェード、関所を強行突破するぞ。俺たちのが三戒を追いかけている情報は伝わっているだろうからな」
「強行突破っすか? う~ん」
フェードが珍しく悩んでいる。
いつもならヒャッハーとか言って、喜んで突撃しそうなのに。
「何か気になる事があるのか?」
「今のオレ達なら関所くらい簡単に突破出来そうなんすけどね。その後も戦い続ける事になりそうなのが気になってるんすよ。ダルマシニウム神国の国民全てと戦い続けるのはしんどいっすよ」
「今の俺のエナドリは有限だから出来るだけ消耗を抑えたいってのは良く分かる。だけど強行突破以外に方法があるか?」
「それなんすけどね。ソレータムの真似をしたら誤魔化せないっすかね?」
「ソレータムの真似? 何か意味があるのか? 直ぐにバレると思うぞ」
「アニキはギリス王国の大臣を知ってますか?」
「知らないな。フェードは知ってるのか?」
「オレは知ってるっすよ。でも普通の国民は国の上層部の顔なんて知らないのが普通っすよ。ダルマシニウム神国の国境警備隊だって、三戒の顔を知らないと思うっす」
「そうか。それなら試して見る価値はあるな。ソレータムは俺たちの馬車を奪ってダルマシニウム神国に帰還しようとしていた。他の三戒も俺たちがソレータムに勝てるとは思っていなかったから油断しているかもしれない」
「そういう事っすよ。服装が豪華だったら偉い奴だって勘違いするに決まってるって訳よ。オレがアニキの服を作るから楽しみにして欲しいっす」
「俺の服? ソレータムのモノマネを俺がやるのか?」
「当然っすよ。オレじゃばれるっしょ」
フェードが頭の上を指差した。
なるほど。
天を突くような髪型は隠せないよな。
いくら偉そうな格好をしても、これじゃばれるよな。
仕方がないから俺がソレータムの役をするか。
「フェードに任せるよ」
「ヨッシャー! ソレータムの奴の服装のデザインは覚えているから安心してくれや!」
後のことはフェードに任せて、俺は宿で休む事にした
翌日、フェードが神官服を作ってきた。
これなら国境警備隊を騙せるかもしれない。
浴衣を作った時も思ったが、フェードは見た目の野蛮さと違って服を作るセンスがあるな。
冒険者より服屋で働いた方が良いんじゃないかと思ってしまうよ。
「いくぞフェード」
「了解ですぜ」
俺たちは馬車でダルマシニウム神国の国境へ向かった。
「そこの馬車! 止まれ!」
国境で警備兵に止められた。
「なんすか? オレ達はダルマシニウムへ行く途中っすよ」
フェードがいつもの口調で話している。
もっと気合入れて演技しろよ!
俺だけが演技してもバレるだろ!
「不審な奴め。この髪型……上層部から連絡があった不審者の情報通りだ」
「誤解っすよ。失礼な真似はよして欲しいっすね。この馬車には疑惑のソレータム様が乗ってるんすよ! 疑う事は罪になるっすよ!」
俺たちの馬車が警備兵に囲まれた。
アホか!
疑惑のソレータムって言ったら、俺が偽物だって言ってるのと同じじゃないか!
このままフェードに任せてはおけない。
俺は馬車を降りた。
「私はソレータム。疑いを戒める役割を承った者である。私を疑うという事は、我らの教義を疑う事になるなると理解しているか?」
俺は厳かに言った。
「あ、貴方が三戒のソレータム様?」
「馬鹿野郎! 疑うな! 神敵にされるぞ! 失礼致しました! お通り下さい!」
警備兵達が慌てて下がって頭を下げた。
どうやらフェードが作った神官服の効果があったようだ。
「既に情報が届いていると思うが、神敵が私を追ってきている。敵の侵入を許すな」
「ハッ! 我ら国境警備隊が全力でダルマシニウム神国を守り抜きます」
「ご苦労」
俺は馬車に乗り込んだ。
そしてフェードが馬車を走らせて関所を通過した。
ふぅ、一時は危なかったが無事に通過出来た。
「フェード、国境近くの町を知っているか?」
「知らないっすよ。でも街道を走ってりゃ、そのうち辿り着くっしょ」
気楽なもんだ。
でも旅はそれくらいの気持ちでいた方が楽しい。
この先に町がある事を期待しながら、俺たちは街道をすすんだ。




