54話 マックス再び
王都を旅立った俺たちはダルマシニウム神国へ向かう途中にあるコウチキカの町に立ち寄った。
食料を調達したかったのと、俺が立ち上げた商会を丸投げしたマックスの事が気になっていたからだ。
コウチキカの町に入ると、前に来た時とは様子が変わっていた。
町中にあるムキムキの腕のマークはなんなのだ?
こんな変なマークをつけるのはアイツしかいない。
俺は急いでマックス商会の本部に向かった。
マックス商会の入口には筋肉ムキムキのマックスの彫像が飾ってあった。
ずいぶんセンスが悪い店になったな……
俺は入店してマックスを捜していると店員が声をかけてきた。
「なにか御用ですか?」
「マックスはいるか?」
「社長とどの様な関係でしょうか?」
店員が怪訝そうな顔でマックスとの関係を詮索してきた。
初めて見る店員だな。
俺の事を知らないって事は、俺達がコウチキカの町を去った後に雇われたのだろう。
「俺はマックスの知り合いだ。ラウルが様子を見に来たと伝えてくれ」
「またですか。いい加減にして欲しいですね。社長と取り次いで欲しいからって嘘はつかない方が良いですよ」
「なんだぁテメェ! アニキに向かって舐めた口きいてんじゃねぇぞ!」
フェードが店員の胸倉を掴んだ
「衛兵を呼びますよ。マックス商会に手を出してタダで済むと思っているのですか?」
「やってみろや! 小僧!」
店員とフェードが騒ぎを起こしたので、周囲の人達の注目を集めてしまった。
すると、店の奥から一人の男性が出てきた。
「フェード師匠じゃないですか! 来ていたなら声をかけて下さいよ! このお方はラウル会長と浴衣の作り方を伝授してくれたフェード師匠だ」
「ラウル会長とフェード師匠?! し、失礼致しました!」
ベテラン社員の説明を聞いた店員が俺たちに頭を下げた。
「なんだぁエリックじゃねぇか。ずいぶん偉くなったじゃねぇか」
「フェード師匠の教えのお陰ですよ。今は私がデザイナーをしてます。さぁ、奥へどうぞ。直ぐに社長を呼んできます」
俺たちはエリックに応接室に案内された。
随分豪華な椅子だな。
マックスに商会丸投げした時は一か月程度で潰れると思っていたが、結構繁盛している様だな。
5分くらい待っていると、マックスが応接室に入室してきた。
「ラウル殿とフェード殿ではないですか! もう二度と来てくれないと思ってましたよ。冒険者は攻略済のダンジョンには二度と行かないですからな。はっはっは」
「コウチキカの町はダンジョンではないだろ? 旅の途中で立ち寄るくらいには気にかけてはいたぞ」
「それは嬉しいですな。ところでアリス殿は如何されましたか? 別行動されているのですか?」
「アリスはダルマシニウム神国に攫われた」
「何ですと! だからダルマシニウム神国へ向かう途中のコウチキカの町へ立ち寄ったのですな」
「その通りだ。食料を調達したら直ぐにダルマシニウム神国への旅を続ける予定だ」
「それならワシも助太刀致しますぞ!」
「それはダメだろ。マックス商会はどうするんだ? 結構繁盛してるみたいじゃないか。社長のマックスがいなくなったら従業員が路頭に迷うぞ」
「それは困るな……」
マックスが考え込んでしまった。
アリスの救出を真剣に考えてくれるのは有り難いが、他の奴らの生活を犠牲にしては欲しくはない。
「そうだ! アレがあった!」
マックスが顔をあげて叫んだ。
「どうした?」
「ラウル殿、一時間程待って頂けないか?」
「俺達は急いでいるんだ。一時間も待てない」
「アレを使えば一時間どころか、数日の後れを取り戻せる。ワシを信じろ」
ワシを信じろか……
アリスが攫われたと知っていながら適当な事は言わないだろう。
少し嫌な予感がしたが、俺はマックスの提案を受ける事にした。
「分かった。少し休ませてもらうよ」
「出来るだけ準備を急ぐから待っててくれ!」
マックスが応接室を出て行った。
一時間後、呼びにきた店員に案内されマックス商会の外に出た。
商会の前には豪華……というよりゲテモノ感満載の馬車があった。
馬車には黄金でムキムキのマックスが描かれていた。
「ラウル殿! こいつはワシが他の町への交易に使用している馬車のマッシブ・マッスル・マックス。略してエムスリーだ! こいつなら普通の馬車より早くダルマシニウム神国へ着きますぞ! この車輪が特別製なんですよ!」
マックスが車輪に頬ずりしている。
これに乗るのは恥ずかしいが、徒歩で敵を追うより早いと思うから有難く使わせてもらおう。
今の俺は速度を上げるエナドリのスピーディー・ケンタウロスが使えないからね。
「ありがとうマックス。さっそく使わせてもらうよ」
「一時間で馬車の中にブタリウス殿の部屋を作っておいた。あとは食料とか、ラウル殿のエナドリの容器を真似して作った新商品のコップとかもあるので使ってくれ」
「気が利くな。今回は色々世話になってばかりだな」
「お気になさるな。今の自分があるのはラウル殿のお陰だ。マックス商会はいつでもラウル殿の味方ですからな」
「ありがとうマックス。それじゃ行ってくる!」
「ご武運を祈っておりますぞ!」
「フェード、御者を任せる」
「いっくぜぇ! スピードマックスだ!」
俺とブタリウスが馬車に乗り込むとフェードが馬車を走らせた。
これでアリスを攫った三戒に追いつく事が出来るだろうか?




