53話 助けられるのは一人
王城へ戻った俺をシンシア姫とローレインは快く迎え入れてくれた。
すぐに応接室で面会する事になった。
「どうされたのですかラウルさん?」
「何か問題が起きたのか?」
「俺たちが宿泊している宿が襲撃を受けて、アリスが白装束の集団に誘拐された。シンシア姫とローレインは三戒を知っているか?」
「三戒だと! いつの間にギリス王国に侵入したのだ。奴らはギリス王国と戦争するつもりか!」
ローレインが興奮して立ち上がった。
いつも冷静なローレインがここまで興奮するのは珍しいな。
三戒ってやつはそんなに危険なヤツらなのか?
「ローレイン落ち着いて下さい」
シンシア姫がなだめると、ローレインが再び着席した。
「なぁ、あの野郎どもについて知ってんなら早く教えろ! ぶっ潰してやっからさ!」
「フェードも落ち着け。シンシア姫、三戒について教えてくれ」
「三戒はダルマシウス教が戒めている三つの戒律、恐れ、疑い、惑いを司っている高位神官なのです」
「恐れ、疑い、惑い? そんな事を禁止する意味があるのか?」
「敵を恐れるな、教義を疑うな、惑わず神命に従えって事を強要して、敵を排除する狂信者になれって意味なんだよ。奴らはダルマシニウム神国の軍部の最高幹部だと思ってくれ。そんな奴らがギリス王国の宿を襲撃して人を攫ったのだ。宣戦布告したに等しい蛮行だ!」
「そういう事か。シンシア姫、ローレイン、教えてありがとう。ようするに敵はダルマシニウム神国にいるって事だろ。行くぞフェード」
「よっしゃぁ! 今度は油断しねぇからな!」
「お待ちください! ラウルさんはダルマシニウム神国と戦うつもりですか? 危険です! アリスさんの事は私がギリス王国の代表として交渉した方が良いと思います」
「私も姫に同意する。相手は国家の上層部だ。個人で対処出来る状況ではない」
「ありがたい申し出だけど自分でなんとかするさ。アリスは俺たちの仲間だからな」
「心配すんなよ。アニキはダルマシウス教の親玉のダルマシウス神をぶっ飛ばしてんだぜ。子分のダルマシニウム神国如き軽くぶっ飛ばしてやんよ!」
「それがラウルさんの考えなら否定は致しません。でも、本当に困ったら私を頼ってくださいね」
「少し待っててくれないか。私が今までの冒険で手に入れた薬草類を持ってくる。奴らは毒を使ったりするから役に立つと思うよ」
「薬草? 腐らないのか?」
「安心してくれ。乾燥して粉末状にしてるからさ」
ローレインが応接室を出て行った後、ビン詰めの薬草を持って戻って来た。
粉末状になっているから何の薬草が入っているか見た目では分からないが、ビンにラベルが張ってあるから効能は分かる様になっていた。
毒消し以外にも傷に効くものとか結構種類があるな。
どれだけ効果があるか分からないが、せっかくだから貰っておこう。
「ありがとうローレイン」
「少しでもラウルの役に立てれば嬉しいさ」
「有り難く使わせてもらうさ。それじゃ!」
俺とフェードはユウマがいる宿に戻った。
「戻ったんだねラウル。それで三戒の情報は得られたのかい?」
「あぁ。三戒はダルマシニウム神国の幹部だった。俺とフェードはアリスを救う為にダルマシニウム神国へ旅立つ予定だ」
「それなら、アルリディアさんはどうするんだい?」
アルリディアか……
元々はアルリディアを救う為にブリージラリアス大陸へ向かう予定だったんだよな。
アリスとアルリディア。
救えるのはどちらか一人。
俺はどちらを優先すべきか……
「ごめんラウル。そんなに悩むとは思わなかった。私の言い方が悪かったみたいだね」
「どういう事だユウマ? 何故謝る?」
「私がラウルを誤解させたからさ。ラウルがアリスさんとアルリディアさんのどちらを先に助けに行きたいのか知りたかったのは、もう片方を私が助けに行こうと考えていたからなんだ」
「ユウマが助けてくれるのか?」
「当然だよ。私も仲間だろ? 仲間同士で助け合えば諦める必要はないよね」
ユウマが助けてくれるのは有難い。
アリスかアルリディアのどちらかを諦める必要がなくなったのだからな。
少し考えた後、俺はユウマにアルリディアを任せる事にした。
ユウマから助けてくれると申し出てくれたとはいえ、ダルマシニウム神国と戦いになるアリスの救出を任せるのは気が引けたからだ。
ブリージラリアス大陸でソルラリアスの実を捜す方が安全だろう。
「ユウマ、アルリディアを任せてもよいか?」
「分かったよラウル。私はアルリディアさんを連れてブリージラリアス大陸を目指すよ。必ずソルラリアスの実を手に入れて、アルリディアさんを助けてみせるから安心してくれ!」
「助かるよ。それじゃ、さっそく旅の準備を進めよう!」
アルリディアをユウマに任せて、俺とフェードは荷物をまとめてダルマシニウム神国へ旅立つ準備を終わらせた。
すぐに助けてやるから待ってろよアリス!
俺はフェードとブタリウスを連れて王都から旅立った。




