52話 攫われたアリス
何で宿が半壊している?
フェード達は大丈夫だろうか?
「ユウマ! 宿泊客の救出を頼む!」
「任せてくれ!」
ユウマが逃げ遅れた人がいないか確認しに宿へ入っていった。
俺もユウマを追いかけ宿に入り、俺たちが部屋をとっている2階へ直行した。2階に上がるとアリスの部屋のドアが破壊されているのが見えた。
宿を襲撃した奴らの狙いは俺達だったのか!
急いで部屋に入ると、フェードが何十にも張り巡らされた魔法障壁によって壁に貼り付けられていた。
「すまねぇアニキ……アリスが……」
アリスがどうした?
部屋の中を確認したがアリスの姿は無かった。
アリスが連れ去られたのか?
不幸中の幸いか寝たきりのアルリディアは無事だった。
アリスの事が気になるが、まずはフェードを助けよう。
俺はフェードを拘束している魔法障壁を攻撃したがビクともしなかった。
くそっ、今の俺の力では破壊出来ないか。
この魔法障壁は一体なんなんだ?
アリスが使う防御魔法に似ているが、術者がいないのに残り続けるのはおかしいだろ!
しかたがない、ここはユウマに助けてもらうしかないな。
「少し待っててくれ。ユウマを呼んでくる」
俺は階段を降り、ユウマの元に向かった。
「そんなに慌ててどうしたんだい?」
「ユウマ、宿泊客の避難は完了したか?」
「宿泊客の避難は完了したよ。慌てているみたいだけど、何か問題が起きたのかい?」
「なら、急いで2階に来てくれ」
「分かった」
俺はユウマと共にフェードの元に戻った。
「これは……私の聖拳で破壊する!」
ユウマが輝く拳で魔法障壁を破壊した。
「助かったぜ。サンキューなユウマ」
「どういたしまして。ところで何が起きたのですか? 王都の高級宿を襲撃するなんて正気の沙汰ではないですよ」
「フェード、何が起きたのか教えてくれ?」
「分かりやした」
フェードが何が起きたのか教えてくれた。
部屋でくつろいでいたら、突然ドアが破壊されて白装束の集団が入り込んできたそうだ。
フェードは敵を退けようとしたが、最終的に魔法障壁で動きを封じられ、アリスが連れていかれたそうだ。
金目の物を物色などしないでアリスを連れ去ったので、白装束の集団は最初からアリスを連れ去るのが目的だったようだ。
「何か手がかりはないのか?」
「白装束の奴らは無言だったけど、アリスが3階って言ってやした。2階までしかねぇのに3階って言うのは意味分かんねぇっすよ。アリスのヤツ、襲撃を受けてテンパってたんすかね」
「三階? アリスが本当にそんな事を言ったのか?」
「本当っすよ。すっげぇ驚いた顔で叫んだんですから」
「なぁラウル。もしかして、その三階ってヤツ三戒じゃないのか?」
「三階が三階? どういう意味だ?」
「三つの戒律で三戒って意味だよ。アリスさんはダルマシウス教の神官なんですよね。もしかしたら、白装束の集団はダルマシウス教と関りがあるんじゃないかな?」
「そういう事か。それなら心当たりがあるな。ダルマシニウム神国に近いコウチキカ地方でダルマシウス神の浴衣を販売したのがまずかったか?」
「アニキ、それなら何でオレは無事なんすか? アレを作ったのはオレっすよ」
「もしかしたらラウル達は関係なく、ダルマシウス教内部の問題かもしれないですね。アリスさんってダルマシウス教の中で、どういう立場の人なんですか?」
俺はユウマの質問に答えられなかった。
アリスがダルマシウス教の神官だって事は聞いている。
でも詳しく聞いたことはない。
旅の途中でギリス王国に来た理由が、ギリス王がダルマシウス教の排除を画策している理由を調査していたって事を知った程度だ。
もしかして、アリスってダルマシニウム神国の重要人物だったのか?
ギリス王国に派遣されて調査を任されるくらいだからな。
「ユウマ、俺は王都の道端で出会った後の事しか知らない。俺はアリスの過去を知らないんだ……」
「ラウルは過去を気にしないんだな」
「全く気にしていない訳ではないが、いちいち聞く事ではない」
「そうか、もしかしてフェードさんの事も?」
「同じだ。話したければ本人たちが勝手に話すだろ? 俺は過去を詮索しないさ」
「過去を知らずに他人を同行させるのは危険だとは思うけど、ラウルなら問題ないのだろうね」
「そうだよ。アニキは最強で、何が起きても平気なんすから!」
「そんなんじゃないよ。俺はアリスやダルマシニウム教について知らなすぎた。別れたばかりだが、王宮に戻ってシンシア姫とローレインに教えてもらおう。俺たちよりダルマシウス教について詳しいだろうから」
「それなら私がここに残るよ。アルリディアさんを守る必要があるだろ?」
「ありがとうユウマ。行くぞフェード」
「了解ですぜ!」
俺はアルリディアの事をユウマに任せて王宮へ向かった。
謎の白装束の集団と三戒。
シンシア姫とローレインが知っていると良いだが……




