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46話 ダルマシウス神

 奇襲を受ける可能性など考えない。

 ここで躊躇して手遅れになったら終わりなのだ。

 俺はギリス王を追って階段を駆け上った。

 なんだ?

 前方から熱気を感じた。

 近づいてみると、頂上の少し手前の地面が焼け焦げていた。

 これは攻撃魔法によるものか?

 誰かがギリス王を攻撃したのだろうか?

 地面の焦げ跡を見ただけでは状況が分からないが、この先のノールイン山の頂上に辿り着けばハッキリするだろう。

 この先に最後に戦うべき相手がいるはずだから。

 俺は迷わず一気に頂上まで駆け上った。


 頂上には祭壇があり、輝く光の柱が天まで立ち昇っていた。

 そして……祭壇の前には一人の老人がいた。


「なんだぁ? ジイさん、こんなところに一人でいたら危ねぇぞ」

「待て。これ以上近づくな」


 俺は老人に近づこうとしたフェードを止めた。


「何で止めるんすかアニキ? ご老人がギリス王との戦いに巻き込まれたら大変っすよ」

「フェードが老人に親切だとは思わなかったよ」

「オレをどういうヤツだと思ってるんすか? 不親切にしている老人はトルディエだけっすよ」

「そういう問題ではない。フェードはあの顔を見た事がないのか?」

「ないっすよ。アリスは知ってるか?」

「当然でしょ……だって……あの姿は……」


 アリスが隣で震えている。


「なにビビってんだよ。相手は老人一人だろうが?」

「フェード、浴衣のイラストを覚えているか?」

「浴衣のイラスト……あああああっ! あん時のジイさんだ!!」

「そうだ。ダルマシウス教徒が崇めている神、ダルマシウス神だ」


 目の前にいる老人は、ダルマシウス教会の彫刻や、初心者の遺跡で見た壁画に描かれていたダルマシウス神の姿と同じであった。

 アリスがダルマシウス教の聖域だと言っていたのは本当の事だったのだろう。

 目の前にいるのは、魔王ではなく神そのものなのだ。


「どうした? アイツの命令で私を殺しにきたのだろう? 40年前と同じだな」

「アイツとは誰の事だ? 俺はギリス王から魔王の情報を得て来ただけだ」

「ギリス王か。私の臣民でありながら裏切った一族の事だな。あの程度の存在に騙されるとは情けない」

「騙されるとはどういう意味だ?」

「それはギリス王が、()()()()ダルマシウス神を魔王と偽り殺させようとしているという意味ですよ」


 後ろを振り返るとトルディエがいた。

 ここで出てくるか!

 タイミングが悪すぎる。


「トルディエエエエエッ!」

「フェード、冷静になって! 今は状況を把握する方が先よ!」

「アリスのいう通りだ。一旦落ち着け」

「分かったよアニキ。で、なんの様だトルディエ? 正直に言えよ」

「俺も何の用事があって出て来たのか教えてもらいたい。40年前に勇者を裏切った理由もついでに教えてもらえると助かるんだけどね」

「ワシは賢者だ。だから世界にとって最も正しい行いをしなければならない。それだけだ。勇者アサヒの様な転生者は抹殺すべきなのだよ」

「何で転生者を抹殺する事が正しい行いになるのだ?」

「今の世界を維持するには、()()ダルマシウス様が必要だからだ!」


 トルディエの言っている事の意味が分からない。

 何で仲間を裏切ってでもダルマシウス神を守ろうとしたのだ?


「トルディエの言っている事の意味が分からない。教えてくれダルマシウス神。何で勇者と敵対している?」

「答える必要があると思うか? ヤツの手先であるお前には、ここで死んでもらわなければならない」

「俺は誰かの手先になった記憶はない」

「記憶がなくてもヤツの祝福を受けている時点で悪そのものだ。さぁ、戦いを始めようか!」


 ダルマシウス神が広げた両手に光がともる。

 拳を強化したのだろうか?

 どうやらダルマシウス神との戦いは避けられないようだ。

 転生者全員を抹殺するのが目的のようだからな。


「フェード、トルディエを倒せ! アリスはフェードを援護してくれ」

「その一言を待ってたぜええええっ! くたばれトルディエ!」

「了解っ! 皆を守ってみせるわよ!」


 俺はフェードとアリスにトルディエを任せて、ダルマシウス神と向き合った。


「一対一で挑ませてもらう!」

「貴様はどの様な能力を与えられたのかな? 見せてみるがいい。愚か者の悪あがきをな!」

「俺の力はこれだ!」


 俺は荒ぶるエナドリ、レイジング・ミノタウロスを生み出し飲み干した。


「強化薬か? そんな能力は、私に傷をつける事は出来ないだろう」

「そういう事は、戦ってみてから言え!」


 俺はダルマシウス神に駆け寄って殴りかかった。

 ダルマシウス神が光り輝く手のひらで俺の攻撃を受け止めた。

 初撃を止められたか……強いな。

 一撃で倒すのは無理だな。

 それなら連撃で叩き潰す!

 俺は俊敏さを生み出すエナドリ、スピーディー・ケンタウロスを生み出し、一気に飲み込んだ。

 俺が拳を打ち込む速度が上がる。

 それでもダルマシウス神は俺の攻撃を余裕で防ぎきった。


「なかなかやるじゃないか。これが神の力か?」

「これが本気に見えるのか? 私はコレの維持に力の大半を使ているのだ。本来の力が発揮出来るのであれば、ギリス王国など一瞬で灰に出来るのだよ」


 ダルマシウス神が背後の光の柱を指差さした。

 コレの維持に大半の力を使っているとは、どういうことなのだろう?

 まだまだ謎が多すぎる。

 だが、このまま聞いても何も教えてはくれないだろう。

 だから一度ぶっ飛ばしてから、ゆっくり真実について教えてもらうぜ!

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