44話 魔王の結界
マルリニスが済んでいた小屋を借りて一晩過ごした後、俺たちはノールイン山の入口に向かった。
ギリス王と遭遇するかもしてないので慎重に進む。
「アリス、背後から奇襲されたら防御魔法で防いでくれ」
「任せて。私が皆を守るから」
「ふん、奇襲なんてオレが先に気付いて防いでやんよ」
「甘く見るな。最終決戦なんだ。フェードが俺の想像以上に強い事は分かったが油断は禁物だ。役割分担して慎重に進もう」
「へぇ~い」
「私はどうすれば良いのかしら?」
「逆に聞くが、アルリディアはどうしたいのだ? 同行してはいるが、アルリディアは俺の部下ではないだろ。そろそろ目的を教えて欲しいんだけどね」
「真実を知りたいだけよ。何で私やラウルみたいな者が呼び寄せられたのか。魔王とは何なのか? 色々知りたい事があるでしょ?」
「ラウルが呼び寄せられた? いつの間に魔王から招待されてたの?」
アリスはアルリディアが言っている事が理解出来ないで困惑している。
だが、俺が転生者である事を知っているフェードは気付いたようだ。
アルリディアも俺と同じで異世界から召喚された存在だという事に。
俺がフェードに目線を送ると、フェードが頷いた。
どうやら俺の意図が伝わったようだな。
警戒しなければならないのは魔王とギリス王の襲撃だけではない、アルリディアも敵対する可能性があるのだ。
アルリディアは既に人ではない。
魔王が本人の意志を奪い、俺たちを襲わせる可能性だってあるんだ。
その時がきてしまったらフェードに任せる予定だ。
俺は敵の主力と戦わないといけないからね。
でもアリスにはまだ転生者の事を伝えられないから、俺の考えを伝える事は出来ない。
適当に誤魔化すしかないな。
「アリス、呼び寄せられているだろ。俺たちは魔王に興味を持ってノールイン山の頂上を目指しているじゃないか?」
「それはそうだけど、アルリディアの言い方だと招待を受けているような感じだったわよ」
「アリスさんの勘違いですよ。色々知りたいって事を言いたかっただけですから」
「アルリディアがそういうなら分かったわよ。少し腑に落ちないけどね」
「もたもたしねぇで先に進むぞ」
フェードが先頭を歩く。
魔王のおひざ元であるにも関わらず、魔獣は一切現れなかった。
ルイーサスの町でも聞いたがノールイン地方では魔獣の襲撃は殆どないらしい。
不思議だと思いながらノールイン山を登っていくと光の壁が見えて来た。
光の壁の先には石造りの階段が見える。
これが四天王を全て倒さないと突破できないという結界か。
さて、一撃で破壊させてもらおうか!
「待ってラウル」
結界に近づく俺をアリスが止めた。
「どうしたアリス? これが魔王の結界なのだろう。早く破壊してしまおう」
「これ、結界じゃない」
「どういう事だ?」
俺の問いかけを無視してアリスが結界に近づいた。
そして、結界に手を触れて何かをしている。
「どうしてダルマシウス神の力を感じるの? それに先に見える階段はダルマシニウムと同じ様式の建築物。まさか……ここが失われた聖域?!」
「どういう意味だアリスゥ。こんな結界アニキなら一撃だろ?」
「ここは魔王の領域ではない……ダルマシウス神の聖域よ」
「ここがダルマシウス神の聖域だと? ダルマシニウムと同じ様式の建築物と言っていたが、どういう意味だ?」
「ラウルはギリス王国の西にあるダルマシニウム神国が何でダルマシニウムって名前なのか知ってる?」
「知らない。ダルマシウスじゃなくて、ダルマシニウムなのは気になっていたけどね」
「ダルマシニウムは大神殿の正式名称なの。ダルマシウス神の聖域を模した大神殿がある国だからダルマシニウム神国っていうのよ。そしてダルマシウス神の信者は失われた聖域の代わりに、大神殿を聖地として崇めているのよ」
「ダルマだらけでうっとおしいけど、ここがダルマシウス神と関りがあるって事は分かったよ。アルリディアは知っていたのか?」
「知らなかったわよ。40年前に勇者アサヒと共に当時の四天王を倒してこの先に進んだ事はあるけど」
「た、助けてくれぇ~」
声がした方を見ると、見覚えがあるオッサンが走って来ていた。
更にオッサンの後ろから剣を抜いた騎士が6人追いかけてきている。
王宮前でユウマをぶち当てた時以来だなギリス王!
ギリス王の前に出ようとしたがーー
「そこまでだぜぇ。アルリディアの姉御。動きを封じさせてもらいますぜ」
振り返るとフェードがアルリディアを拘束していた。
フェードに拘束されたアルリディアが虚ろな目をしている。
魔王と敵対する俺たちを倒すのではなく、ギリス王を殺害する方向で意識を乗っ取られたか!
「フェード、アルリディアの事は任せた。アリスはブタリウスを守ってくれ。俺はアイツらを何とかする」
俺は駆け寄ってくるギリス王に相対した。
「久しぶりだなギリス王。勇者ユウマを吹き飛ばしてぶつけた相手だって言えば思い出してくれるかな?」
「そんな事はどうでもよい! 私を助けろ! 報酬なら後で払う! だからぁ!」
ギリス王が俺に向かって助けを乞う。
これが一国の王か……見苦しいな。
唾をまき散らしながら叫ぶ姿を見ていたら、少し哀れに思えて来た。
一応事情を聞いてみるか。




