4話 スカッと一撃!
翌日、俺たちは宿を出て王宮を目指した。
物凄く豪華な宿だったな。
フェードが支払いをしていたけど大丈夫だったのだろうか?
もしかしてフェードは金持ちなのか?
……それはないな!
王宮前の広場に着くと大勢の冒険者がいた。
「凄いわね。ナンバーワン冒険者のローレインさんがいるわよ!」
アリスが指差す方を見ると、重厚なプレートアーマーに身を包んだ戦士がいた。
身長と同じ位の大剣が強さを物語っている。
ふ~ん、あの巨大な剣を扱えるのか。
なかなか強そうだな。
「よくぞ集まった冒険者よ。北のノールイン地方で魔王が復活したとの情報があった。我らギリス王国は総力を結集して魔王を討伐する事を決めた。君ら冒険者には勇者をサポートして戦ってもらう!」
多くの冒険者が王の言葉を聞いて沸き立っている。
でも、中には怪訝な顔をしている者もいた。
さっき見かけたナンバーワン冒険者のローレインさんもその一人だった。
「勝手に決められても困るね。冒険者の誰もが魔王軍と戦えるのではない。生活の為に冒険者になった人達にはムリな事だ」
「私の命令が聞けないのかローレイン。邪魔をするなら排除させてもらうぞ」
「排除? 私はギリス王国の守護者だと思っていたんだけどね」
「それは今までの事だ。これからは勇者が君の代わりにギリス王国を守ってくれる」
「勇者だって? そんな伝説の存在がいるとでも?」
「いるのさ、ここにね」
突然、ローレインの前に青年が現れた。
いつの間に現れたのだろう?
俺も近づかれた事に気付かなかった。
「おやめください」
一人の女性がローレインを庇うように立った。
「何をしているのですか姫。そんな下級市民の傍にいては危険ですよ」
「貴方は市民ですらないでしょ! ローレインは長年ギリス王国を守ってきた偉大な冒険者です」
「偉大な冒険者ねぇ。そんなものに意味はないですよ。さぁ、お戻りください。私は貴女と結婚してギリス王国の国民になるのですから」
「嫌です」
「おさがり下さい姫」
ローレインが姫を庇って前に出た。
変な事になったな。
俺が王をぶっ飛ばして終わらせる予定だったのだがね。
「邪魔なんだよ冒険者! 出でよ! 聖剣ブライアー」
勇者が手を空に掲げると光り輝く剣が現れた。
「させるか!」
ローレインが背中に担いだ大剣を振りかぶったが、勇者が聖剣で受け止めた。
「軽いよ。君の攻撃はね」
勇者が聖剣を振ると光が放たれ、ローレインが吹き飛ばされた。
「ぐっ、なんという力だ……」
「大丈夫ですかローレイン」
姫がローレインの傍に駆けつけた。
圧倒的な勇者の力に恐れをなしたのか、他の冒険者達は後ずさっていった。
結構強いじゃないか。
こいつは俺と同じ転生者かな?
「なんだてめぇ! 舐めてんじゃねえぞ! コラァ!!」
フェードが勇者の前に立ち塞がった。
「なんだこの粗野な男は」
勇者が呆れている。
「どどど、どうすんのよラウル! あの馬鹿を止めないと私たちも罪に問われるわよ!」
アリスが慌てている。
何を言ってるのかねぇ。
元々俺は王をぶった倒しに来たんだぜ。
フェードに先を越されたけどさ、俺も自称勇者に腹が立ってるんだよ。
「下がれフェード。ここは俺が戦う」
「なんだお前は……この気配。君は転生者だね」
勇者が急に態度を軟化させた。
「転生者で合っているが、それがどうした?」
「やっぱりね。女神様の気配を感じたから転生者だと思ったんだよね。俺はユウマ。転生者同士仲良くしようぜ」
ユウマが手を差し出したが、俺は無視した。
こんな奴と握手する気はない。
「俺は迷惑だから王を倒しに来たんだ。王の手下のお前と仲良くするつもりはない」
「何言ってるのさ。女神様から授かった力で、この世界の覇権を奪おうぜ」
「断る」
「なら死んでもらうよ。邪魔されたくないんでね。君が何の力を授かったか知らないけど、勇者を越えられると思っているのか?」
「勇者とか興味ないね。俺にはエナドリがあるからね」
俺はエナドリを生み出した。
今日のエナドリはレイジング・ミノタウロス。
アクティブな一日を過ごしたい時に最適なエナドリだ。
ごくごく……俺はエナドリを一気に飲み干した。
「はっ?! エナドリ? もしかして、お前の能力ってエナドリを作る能力か?」
「良く分かったな。俺の能力はエナドリを生み出す力だ」
「すげえだろ! これがアニキの力だ! ビビったか勇者ぁ!」
フェードがナイフをちらつかせながら凄んだ。
「ぷぷっ。エナドリ程度で俺と戦えるはずがないだろ。転生者だからってビビッて損したよ。かかって来いよエナドリ野郎!」
「スカッと一撃! エナドリアッパー!」
俺が放ったアッパーがユウマに直撃してバルコニーから見下ろしている王に直撃した。
少しやり過ぎたかな?
大して恨んではいないから、死んでいないと良いのだけど。
「な、なにしてんのよラウル! 勇者倒しちゃったら誰が魔王を倒すのよ!」
「寝ぼけてんじゃねえぞアリスぅ。魔王を倒すのはラウル様に決まってるだろう!」
「そんなのムリに決まってるでしょ。伝承通りなら、力が強いだけで魔王は倒せないのよ」
「伝承なんて知るか! これからアニキが伝説を作るんだよぉ!」
「落ち着け二人共」
俺は言い争いを続けるフェードとアリスを止めた。
「お前たちは間違っている。魔王倒すのも、伝説を作るのもエナドリだ!」
「さっすがアニキ! エナドリ伝説の始まりっすね! ふぉ~っ!」
フェードがナイフを舐めながらはしゃいでいる。
アリスは額に手を当ててうつむいているが頭痛だろうか?
あとでエナドリを飲ませてやろう。
エナドリを飲めばすぐに元気になるからな!