39話 決着はついていた
結局、アルライラの町には四天王ダルダラントと配下の魔獣はいなかった。
住民から聞き取りしたところ、ダルダラント自ら軍を率いて王都へ侵攻したそうだ。
このままでは王都が危険だ。
いざという時はローレイン達冒険者と王国軍が王都を守ってくれると思うが、
ダルダラントは強力な毒を使えるから、かなりの被害が出るだろう。
早くダルダラントの王都侵攻軍を追いかけないとな。
急いでエナドリを配って住民を救った後、王都への侵攻ルートにあるロレイスの村に向かった。
急いで街道を進んだが魔獣の軍勢は見つからない。
ここで魔獣の軍勢と遭遇しないって事は、魔獣の軍勢は既にロレイスの村に辿り着いているだろう。
残念な事だが、二週間前に救ったばかりのロレイスの村が滅ぼされている可能性がある。
村長達は大丈夫だろうか……。
不安を抱えたまま旅を続け、ついにロレイスの村に帰ってきた。
村の入口付近を観察したが魔獣は見つからなかった。
このまま奇襲をかける!
「いくぞフェード! 全速力だ!」
「了解だアニキ! 仇討ちだ!!」
俺はフェードと共に一気に村に駆け込んだ。
「あれっ、ラウルさんとフェードさんじゃないですか。そんなに急いで何処に向かってるんですか?」
村人が声をかけてきた。
どういう事だ?
周囲を見渡したが、村人たちは旅立つ前と同様に穏やかにすごしていた。
「魔獣の軍勢は来ていないのか?」
「ラウルさんに助けられた後には一切魔獣は現れていないですよ。みんなラウルさん達に感謝してますよ」
「そうか。それなら安心したよ。じゃぁな」
理由は分からないが、ダルダラントの王都侵攻軍はロレイスの村を通っていないみたいだ。
俺は一度仲間と相談する事にした。
「ロレイスの村に四天王ダルダラントの軍勢は来ていないみたいだな」
「逃げやがったんだよ! 大した事ねぇな! 毒を使う奴なんて臆病者なんすよ!」
「ナイフに麻痺毒を塗っていた人と同じかも知れないわね」
「なんだとアリス! オレは臆病者じゃねぇよ!」
「どうだかね~」
「喧嘩している場合じゃない。このまま王都へ向かうか、一度ロレイスの村で休憩するか決めよう」
「オレは休まなくても大丈夫だぜ! アニキのエナドリがあれば王都まで走り切れるぜ!」
「私は遠慮させてもらうわよ。王都は心配だけど、そこまで頑張れる自信がないから」
「フェードとアリスの意見は分かった。アルリディアはどうする?」
「私は休まなくても問題ない体だからこのまま王都に向かっても大丈夫ですよ。でもアリスさんとブタリウスさんを残していくのは不安なのでロレイスの村に残ろうと思います」
「分かった。二人の事を頼む。さて行くか」
俺は俊敏さを生み出すエナドリ、スピーディー・ケンタウロスを二本生み出して、一本をフェードに渡した。
フェードと二人揃ってエナドリを一気飲みした後、王都目指して駆け出した。
待ってろよ! 俺たちが必ず守って見せるから!!
そして俺とフェードは何事も無く昼夜駆け巡り、王都のいつもの宿に辿り着いた。
ふぅ、やっと帰ってきたな。
次の目的地は北の大地……ではない。
王都の冒険者ギルドでも確認したが、何故か四天王ダルダラントの軍勢は王都へ来てはいなかった。
何故ダルダラントは王都に来ていない?
いつ襲撃を受けるか分からないので、俺とフェードは王都の宿で待機する事にした。
一週間後、普通に旅をしていたアリス達が王都に到着したので、宿で話をする事にした。
「四天王ダルダラントはどうだった? やっぱりラウルの一撃でやっつけたの?」
アリスに問われたが返答に苦しむ。
倒すどころか、ダルダラントと会ってすらいないのだから。
「まだダルダラントは王都に来てねぇんだよ。アニキにびびって日和ったんじゃねぇか?」
「四天王がラウルの噂だけでビビるはずがないでしょ。こっそり王都に侵入しているかもしれないわよ。毒を使う相手なんだから姑息な手を考えているかもしれないでしょ?」
「アリスの言う通りかもしれない。こっそり水に毒を混ぜて王都の防衛力を奪う作戦を考えているかもしれないな」
「なら、ダルダラントの変装を見破らないとな。オレに任せてくれよ。オレの嗅覚は鋭いぜ!」
「フェードさんが凄い事は分かりましたけど、たぶん誰でも見つけられると思いますよ」
変装しているかも知れないのに、何で誰でも見つけられるのだ?
全員がアルリディアに注目した。
「何故見つけられるのだ? 俺たちですらダルダラントの姿を見た事がないんだぞ。一目見ても分からないと思うが?」
「アルライラの町でエナドリを配っていた時に教えてもらいましたよ。今のダルダラントは巨大なカエルの姿をしているって。巨大なカエルが変装していても直ぐに分かっちゃいますよね?」
「な、なんだとぉ?」
「そういう事は早く言ってよ!」
「何で私を責めるんですか? 理由を教えて下さい」
フェードとアリスに責められる理由が分からないアルリディアが困惑している。
アルリディアが言ったダルダラントの姿を聞いて、ダルダラントがいない理由が分かったよ。
俺がアルライラ地方に来た時に最初に出会った巨大なカエルの魔獣がダルダラントだったんだな。
既にぶっ飛ばしているんだからダルダラントと出会う事が無くて当然だよな……。
あの時、アルリディアはトルディエを追いかけて不在だったから、ダルダラントの姿を聞いてもピントこなかったのだろう。
拍子抜けしたが、ダルダラントの王都侵攻が無いと分かれば問題はない。
王城でシンシア姫とローレインに報告した後、ギリス王国北部に向かって最後の四天王と魔王を倒そう!




