37話 アゾの過去話
実家に泊まった翌日、フェード達に村人達の手伝いをお願いした。
エナドリの力で回復したけど、すぐに何もかも元通りになるのではないからだ。
フェード、アリス、アルリディアの3人が快く引き受けてくれたので、俺は一人でアゾを訪ねた。
アゾの家のドアを叩きながら声をかけた。
「いるかアゾ?」
「いるぞラウル。ドアは開いているから入ってよいぞ」
ドアを開けて入室すると椅子に座る様に促されたので着席した。
「どうしたラウル? 何か用か?」
「アゾはアルリディアと知り合いだったんだな」
「40年前に一緒に冒険をしたよ……あの時は楽しかったな……」
「でも楽しかっただけじゃないんだろ? 40年前に何があったか教えてくれないか?」
「良いだろう。アルリディアと同行するのであれば、知っておいた方が良いからな。今から話すのは40年前に結成された魔王討伐隊についてだ」
アゾが40年前の事について教えてくれた。
当時、アゾは賢者トルディエの弟子の魔法使い見習いだった。
28才の若さで賢者の称号を得ていたトルディエは、魔王討伐に向かう勇者の導き手を任されていた。
魔王討伐隊として選ばれたのは5人。
突如現れた素性不明の勇者アサヒ。
ギリス王国最強の剣士のマルリニス。
ドルミニ帝国出身の騎士のプレテイアス。
ダルマシニウム神国出身の神官のダルダラント。
次期賢者となるのではと噂されていた魔法使いのアルリディア。
勇者以外の4人はギリス王国を拠点とする冒険者仲間だった。
5人の魔王討伐隊は賢者トルディエの導きによって、北の大地で魔王を追い詰めたのだ。
だが、あと一歩で魔王を倒せるというところでトルディエが裏切った。
背後から勇者一行を魔法で攻撃した後、魔王を倒すのを止めろと言い出したのだ。
勇者達は傷つきながら戦ったが、トルディエの力は圧倒的だった。
皆に守られていたアルリディア以外の4人は重症を負ってしまったのだ。
絶体絶命の危機。
勇者パーティーに抵抗する力は無かったが、一人だけ行動出来る者がいた。
それがトルディエの弟子のアゾだった。
魔法を使えば気付かれるので、護身用にとプレテイアスからもらっていたナイフで背後からトルディエを突き刺したのだ。
そして、やっと隙が出来たトルディエにアルリディアの氷魔法が直撃して決着がついたのだ。
トルディエを倒した後、勇者アサヒは魔王を逃す事は出来ないと言い、傷だらけのまま魔王討伐を継続したのだ。
元々賢者トルディエの付き人として来ていただけのアゾは戦う力がないので王都に帰還する事になった。
その後……先代のギリス王から賢者トルディエの導きによって魔王が討伐されたとの御触れが出された。
勇者アサヒ達は誰も帰還していないのに……。
アゾは真実を伝え抗議したが、先代ギリス王は聞き入れてはくれなかった。
王国最高位の賢者が魔王に寝返るという前代未聞の不祥事を国民に知られたく無かったからだろう。
失意のアゾはトルディエの後継者としての座を捨てて、故郷のネイラシアの村に戻ったとの事だった。
トルディエは最悪のヤツじゃないか……とは思わなかった。
アゾの話を聞いただけでは分からない事があるからだ。
討伐されたはずの魔王が何故今も存在するのか?
そして魔王討伐隊だった4人の冒険者が魔獣となり、魔王配下の四天王としてギリス王国を襲うようになった理由はなにか?
アルリディアが教えてくれれば早いけど、たぶんムリだろうな。
それに魔王を討伐し、賞賛されていたはずの賢者トルディエの事を誰も知らなかった。
今のギリス王に変わってから何かが起きている可能性がある。
あとはフェードとの関係だ。
アリスがトルディエを嫌っている理由は、出会った時の態度が原因だろう。
でもフェードは違う。
トルディエと知り合いだとしか思えないやり取りがあったからな。
本人は否定しているけどね。
そしてフェードとトルディエの関係の悪さに40年前の事件は関わっていないだろう。
フェードは21才だから、魔王討伐隊の事件は生まれる前の話だからね。
新たな疑問も生まれたけどアゾと話をして色々知れて良かった。
「色々教えてくれてありがとう」
「感謝はいらないよ。ラウルはネイラシアの村の仲間なんだ。私で役に立つ事であれば、いつでも協力するよ」
「今まで通り村を守ってくれるだけで十分だよ。アゾが村を守っていてくれるなら、俺も安心して冒険に出れるからね」
「オリバーとアンナの事なら任せてくれ。しっかり守ってみせるよ」
「信じてるぜ。じゃあまたな!」
俺はアゾを別れてフェード達を捜しに行き、豚小屋の前でフェードとブタリウスを見つけた。
なにやら揉めているようだな。
「何をしているフェード?」
「ブタリウスが怒って動かないんすよ」
「ブッブブブゥー」
ブタリウスが豚小屋のブタ達を見て苛立っている。
じっくり様子を見ていると、豚小屋のブタ達が働かないでタダで食事をしているのが気に入らないみたいだった。
「働かざる者食われるだ。ブタリウスは調理されて食われたいのか?」
「ブゥウウウウウ!」
「待てよブタリウス!」
慌てて逃げたブタリウスをフェードが追いかけて行った。
色々知って事で少し気を張っていたが、ブタリウスとのやり取りで和んだ。
直接会話は出来ないが、言葉を理解してくれているのが分かるのが楽しい。
よしっ!
愉快な仲間達と一緒に残りの四天王を倒しにいこう!




