35話 魔法使いとの再会
無事にロレイスの村を救った俺たちは、故郷のネイラシアの村に向かった。
道中魔獣とは出会わなかった。
この辺りの魔獣は王都付近の街道で倒しきったからだろう。
見えて来た! ネイラシアの村だ!
「走るぞ!」
俺は早く村の状況を確かめたかったから駆け出した。
「オレもアニキに続くぜ!」
「おいていかないでよ~」
「なにこれ? 通れない?」
フェードとアリスはついて来たが、アルリディアが立ち止まっている。
「どうしたアルリディア?」
「通っても大丈夫なのでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「私の前に障壁があるのだけど、破っても構わないのかしら?」
障壁?
俺とフェードとアリスとブタリウスはなんともなかった。
アルリディアだけが通行を阻害されたという事は魔物除けの結界か?
「気にすんなよアルリディア。アニキを待たせる方が罪だぜ」
「分かったわよ。今すぐ行くね」
「待てアルリディア!」
バキン!
アルリディアが俺達の方に一歩踏み出すと、何かが弾ける大きな音がした。
結界を破壊してしまったようだ。
やってしまった以上、急いで村に向かって弁明するしかない。
「説明は後だ! 急ぐぞ!」
俺は村の入口に向かって走った。
村に入ると大人たちがクワや棒を持って集まっていた。
四天王ダルダラントの毒で弱っているのだろう、全員ふらついており、立っているのがやっとのようだ。
「はぁはぁ……ダルダラントの手先め! 結界を破ったくらいで調子に乗るなよ! この私、魔法使いアゾが相手をしてやる!」
魔法使いの様な見た目の男がふらつきながら俺たちの前に出て来た。
この人どこかで見た事があるような……思い出した!
「名前を知らない魔法使いさんじゃないか! アゾって名前だったんだな」
「ラウルか?! 戻って来たんだな。無事で何よりだ。でもここは危険だ。私の魔法で魔獣の侵入を防ぐ事は出来たが、四天王ダルダラントの毒を防ぐ事は出来なかったのだ。全員毒で弱っておる。しかも先ほど結界を破壊されてしまった。魔獣が来る前に逃げるのだ」
「その必要はないさ。これを飲んで見てくれ」
俺は癒しのエナドリ、白銀滋養霊液をアゾに渡した。
アゾが白銀滋養霊液を飲むと、さっきまでのふらつきが嘘のようにシャキッとした。
「なんという事だ! 四天王ダルダラントの毒が消えた!」
「全員分あるから安心しろ。フェード、アリス、白銀滋養霊液を配ってくれ!」
「了解だ! アニキはゆっくり雑談でもしていてくれや」
「そうね。色々話したい人も沢山いるだろうから。いくわよブタリウス」
「ブッブッ」
フェード、アリス、ブタリウスが村人に白銀滋養霊液を配り始めた。
これでダルダラントの毒の問題は解決出来るだろう。
「年齢で言えば今だ幼児のラウルに助けられるとはね。でも、なんで結界が破壊されたのだろう?」
「それは私がいるからよ。久しぶりだねアゾ」
アルリディアがアゾの前に立つと、アゾが震え出した。
「アルリディア……何故?」
「ラウルに可能性を感じたからよ。だから、今はラウル達と一緒に冒険してるの」
「そういう事ではない。何故40年前から姿が変わっていないのだ?」
「それは私が四天王だからよ。結界を破ったのも私よ」
「魔物になったというのか? 私の結界を破った理由はなんだ?」
「質問が多いわね。40年ぶりの再会なのよ。少しは感慨にふけってもよいと思うのだけど?」
アルリディアがため息をついた。
「そうはいかん。ここは私の故郷なのでね。魔獣から村を守る事が第一だ」
「私が魔獣かどうかは自分でも分からないわ。でも人間で無くなった事に間違いはないわよ。私は人の外観を保っているけど、プレテイアスとダルダラントは魔獣の姿になっているらしいから。もう他の仲間と会っても誰だか分からないかもしれないわね」
「なんという事だ……」
衝撃の事実を知りアゾが言葉に詰まった。
たぶんアゾは昔アルリディアと一緒に活動していたのだろう。
四天王プレテイアスとダルダラントも元人間で、一緒に冒険していた事に間違いはなさそうだ。
でも一つだけ分からない事がある。
四天王と呼ばれているのに、お互いに連携するどころか姿すら知らないのは何故だ?
プレテイアスもアルリディアもダルダラントも完全に別行動をしている。
共通しているのはギリス王国と敵対しているって事だけだ。
「さぁ、行きましょラウル。ここへは昔話をする為に来たわけではないのでね」
「まてアルリディア!」
「そうそう。結界を破ったのはラウル達と一緒にこの村に入りたかっただけだから。代わりに氷雪結界を張っておいたから安心して」
「そういう事ではない。これからどうするつもりだ? 人である事を止めてまで成し遂げたい事はなんなのだ?」
「トルディエ」
「なっ」
トルディエの名を聞いたアゾが驚愕した。
「生きていたわよ」
「止めを刺したはずなのに……師匠が生きていただと……」
「そういうことだから! 行きましょラウル。そろそろフェードさん達がエナドリを配り終えている頃だと思うから」
俺は放心状態のアゾをおいてアルリディアと共にフェード達の元に向かった。
賢者トルディエの評判の悪さはいつも通りだから気にしないが、四天王とギリス王国の関係が気になるな。
単純に魔王配下の四天王がギリス王国へ侵攻してきているのではない事は確実だからな。
今回の戦いの裏にある真実を突き止めないとな。




