33話 ダルダラント軍との戦闘
アルリディアとトルディエの戦闘で生み出された水蒸気が収まった後、俺たちは王都から一番近いロレイスの村を目指す事にした。
再び街道を歩いていると正面に大群が見えた。
こいつらは四天王ダルダラントの王都侵攻軍だな。
王都への進軍を開始したという事は、もうアルライラ地方は完全に掌握されてしまったのだろう。
「消え失せろ! 裏切りにまみれた薄汚い人間どもめ!」
先頭のトラの獣人が話しかけて来た。
相手が敵意を剥き出しにしているから戦いになると思うけど、相手が獣人だと戦い辛いな。
魔獣と違ってサクッと殺す事は出来ない。
「戦えば俺が必ず勝つ。戦っても無駄だから、今すぐ帰る気はないか?」
「思い上がるな人間! 我らーー」
獣人が急に黙ると同時に膝をついた。
何故なら……フェードが背後からナイフで獣人の首をかっ切っていたからだ。
「フェード? 何故殺した?」
「騙されちゃダメですぜ。コイツ等は魔獣ですから」
「魔獣? 獣人ではないのか?」
「フェードの言う通りよ。ラウルは知らないの?」
「知らない。頭部がトラの獣人ではないのか?」
「アニキのエナドリと同じっすよ。ミノタウロスだって頭が牛で人型だけど魔獣ですぜ」
なるほど。
そう言われたら理解出来る。
でも人型の魔獣と獣人の境目は何処にあるのだろう?
気にはなるが、今は戦闘に集中しよう。
遠慮なく相手を倒してしまっても構わないなら簡単だ。
王都へは魔獣たちを一匹も通さない!
俺は集中力と俊敏さを生み出すエナドリ、スピーディー・ケンタウロスを生み出してフェードに渡した。
「フェード、一匹も逃すな。ここで殲滅するぞ」
「任せてくれや! いっくぜぇ!」
フェードがスピーディー・ケンタウロスを飲んだ後、敵陣に突撃した。
地面スレスレを滑るように移動しながら、ナイフで次々に敵を斬り裂いている。
「アリスはブタリウスと一緒に逃げてくれ」
「嫌よ! 私にもエナドリを渡しなさいよ」
「いいのか? 太るから嫌だったんじゃないのか?」
「活躍出来ないよりマシよ。ほらっ、早く!」
アリスが俺に向かって手の平を突き出した。
仕方がないな。
俺はタフな一日を過ごせるエナドリ、マイティ・サイクロプスを突き出された手の平に乗せた。
「これで防御力を上げれば安全だ」
「それは違うでしょ? 防御力が上がるのは副次効果。本当の効果は無茶をしても大丈夫なタフさを生み出す効果でしょ?」
「何をする気だ?」
「こうするのよ」
アリスがマイティ・サイクロプスを飲み干した後、防御魔法を発動した。
数えきれない程の障壁が空中に浮かび上がり、王都に向かう魔獣の群れを押し返した。
「ここから先は侵入禁止の乙女のテリトリーですよ~。魔獣の皆さんは華麗にターンしてお帰り下さい!」
言っている事は謎だが、やっている事は凄い。
アリスが使っているのは基本の防御魔法だろう。
数発の攻撃で簡単に破られているからだ。
だが、弱い基本の防御魔法の弱点を物量でゴリ押しする事で解決している。
マイティ・サイクロプスの力を借りているとはいえ、かなりの根性だ。
フェードとアリスが頑張っているのだ。
俺も活躍しないとな。
荒ぶる力を生み出すエナドリ、レイジング・ミノタウロスを生み出し飲み干した。
敵の軍勢を見渡すと、一番後ろにカエルのような姿の魔獣がいる。
あいつがこの軍勢の大将だろう。
魔獣は一番大きい奴が、一番強くて偉いヤツだと思うからな。
一体だけ3メートルを越える巨体だから目立つんだよ。
俺は目の前の魔獣をカエルの魔獣がいる方向に向けて蹴とばした。
魔獣が弾丸の様に吹き飛び目の前が開けた。
このまま大将のところまで突き進む!
配下の魔獣が大将を守ろうと集まってくるが、近くの魔獣を蹴とばして退ける。
もう遅い!
「我はダルダランーー」
「スカッと一撃! エナドリアッパー!!」
カエルの魔獣が何かを言いかけたが、俺は遠慮なく腹部に一撃を食らわせた。
俺の一撃を食らったカエルの魔獣は空の彼方へ消えて行った。
大将を倒したあとの戦いは楽だった。
アリスの防御魔法で動きを封じられた魔獣をフェードが素早く斬り裂いて倒していったからだ。
俺も残りの魔獣を殴り飛ばして全ての魔獣を倒しきった。
これで王都が襲われる事は当分ないだろう。
「これで全部倒したわね。お疲れ様」
「アリスは何も倒してねぇだろうが!」
「防御魔法で王都を守ったでしょ! フェードだって私が動きを止めた魔獣に止めを刺していただけじゃない」
「オレはアリスの助けなんてなくても平気だったぜ」
「喧嘩するなよ。ロレイスの村を目指して旅を続けるぞ」
「了解だアニキ。敵の大将はどんな泣き言を言ってやしたか?」
「最後まで聞かなかったけど、四天王ダルダラント配下の軍勢とか自慢したかったんじゃないかな」
「だっせぇヤツだな。虎の威を借りる狐ってヤツっすね」
「それはフェードもでしょ」
「オレはアニキの名前を使って威張ってねぇからな!」
「私はラウルの事は一言も言っていないのに、ラウルの話をするって事は自覚あるんじゃないの?」
「あんだと!」
「喧嘩は歩きながらやってくれ。ブタリウスが困ってるだろ」
「へぃ」
「わかったわよ」
俺たちはいつも通り喧嘩しながらロレイスの村に向かって旅を続けた。




