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30話 女神の壁画

「トルディエ、プレテイアス、アインバダル、ギリス王!」

「何言ってるのラウル? フェードみたいな事をしないでよ」

「さっすがアニキ。オレのアイデアの凄さを理解してくれたんっすね」

「そんな下らないアイデアで何かが起きるのなら、とっくに遺跡の謎が解明されているわよ」

「開いたわよ。隠し通路」


 アルリディアがぶっきらぼうに言った。

 俺が言った名前の中に嫌いなヤツでもいたのだろうか?

 機嫌が悪くなった理由は分からないが、アルリディアが言った通り、石碑の先の壁が開いて通路が現れていた。

 本当に邪悪なる者の名を言えば良かったのだな。

 一度に沢山の名前を言ったから、誰が邪悪な存在なのか分からないけどね。

 可能性が高いのは四天王のプレテイアスだけど、四天王の上の魔王を差し置いてキーワードになっているのは変だな。

 それならプレテイアスが言っていた謎の言葉のアインバダルの方が可能性が高いか?

 アインバダルが何を意味するのかは分からないが、プレテイアスは忌々しい感じで言っていたから、俺たちの味方側の可能性が高いんだよな。

 トルディエとギリス王は悪い奴かもしれないが……たぶん違うだろう。

 この遺跡が出来た当時から生きていたとは思えないからね。

 これ以上考えても時間の無駄かな。

 どうせ、この先に答えがあるんだろ。

 俺達は隠し通路を進んだ。

 今までこの隠し通路を開放した者は誰もいなかったのだろう。

 隠し通路では魔物が現れなかった。

 しばらく進むと広い部屋に出た。

 目の前には大きな壁画が描かれていた。


「なんだぁ? オッサンと羽根が生えた女がケンカしてんのか?」

「オッサンじゃないわよ! ダルマシウス神! 浴衣作ったでしょ!」

「おおっ。あんときのオッサンか!」

「不敬よ! これは神話の時代の戦いを描いた壁画だと思うわ。こんなに雄大にダルマシウス神の雄姿が描かれている壁画は大神殿にも無いわよ!」


 アリスが興奮している。


「でも、こちらの羽根が生えた女性は誰でしょうか? ダルマシウスの敵が魔王様でないのが不思議です」

「えっ、この人魔王じゃないの? 私は知らないわよ」

「ナンパ失敗してケンカしてんじゃねぇか?」

「ダルマシウス神はナンパなんてしませ~ん」


 皆が羽根が生えた女性の正体について語り合っている。

 でも俺はこの女性を知っている。

 すっかり忘れていたが、こいつは女神だ。

 俺やユウマに能力を授けて転生させた超常の存在だ。

 興味がなかったから名前も知らないけどね。


「こいつは女神だ。俺やユウマを転生させて能力を与えた奴だ」

「アニキに能力を与えたって事は、すげぇヤツなんすね」

「転生ってなんなの?」

「生まれ変わりの事ですよ。ダルマシウスの教えに魂の循環があるでしょ。それを私たちの国の言葉で転生って言うのよ」


 アルリディアがアリスに返答した。

 これで確定だな。

 転生の事を違う説明して誤魔化すって事は、アルリディアも転生者って事だ。

 俺が倒した四天王プレテイアスも転生者だったかもしれないな。

 もしかして、魔王を含めた敵全員が転生者なのか?

 でも、それが事実ならアルリディアが女神を知らないのは変だよな。

 俺と同じ転生者のユウマは女神の事を知っていたからね。

 アルリディアに聞ければ簡単だが、俺たちと同行しているとはいえ、さすがに仲間の情報を簡単には教えてはくれないだろう。

 今のところ、四天王が俺と同じ転生者かもしれないって情報だけで満足しておくか。

 あとは女神の情報だけでも入手しておこうかな。


「アリス、女神の壁画の下の文字を読んでみてくれないか。たぶん名前だと思うから」

「名前? ラウルは女神の事を知っているんでしょ?」

「知っているけど名前を忘れたんでね」

「ラウルらしいわね。少しは女性に興味を持ちなさいよ。近くに私みたいな可愛い女の子がいるんだからね」


 アリスが文字を読むために女神の壁画に近づいた。


「ダルマシウス……」

「どうしたアリス? 女神の名前じゃなかったのか?」

「なんでもないわよ。ちょっと待ってね」


 アリスがダルマシウス神の壁画に向かい文字を読み始めた。


「アリス?」

「ちょっ、ちょっと読むのが難しいわね。ハハハハ」


 アリスが乾いた笑い声を上げた。

 鈍い俺でも分かるぐらいに狼狽えている。

 何かまずい事でも書いてあったのだろうか?


「なんだよアリス。ダルマシウス教の神官なんだろ。ダルマシウス教の事が分からなかったら存在価値がなくなんぞ」

「その通りね……ダルマシウス教の存在価値ってなんだろうね……」

「何が書いてあったのかは分からないが気にするな。女神の名前は探索のついでで聞いただけだ。本当に重要であれば、忘れてなどいないからな」

「ラウルがそう言ってくれるなら助かるわよ。こんな謎の遺跡の壁画なんて気にしていたらキリがないからね」

「せっかく未踏区域を見つけたのに情報が得られなくて残念ですね」

「気にするなアルリディア。ギルドに報告すれば報奨金ぐらいはもらえるだろ?」

「その時は石碑の前で言った全員の名前を伝えるのですか?」

「当然だ。誰の名前が正解か分からないからな」

「それは良い事ですね。何もなかったので帰りますか?」

「そうしよう。いくぞ!」


 俺は仲間を連れて遺跡の外へ向かった。

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