3話 結成! ティーパーティー?
俺はフェードとアリスと一緒に冒険者ギルドに辿り着いた。
「アニキ、冒険者ギルドに来た目的は登録ですか? 依頼ですか?」
「登録だよフェード。これから冒険者とやらをやってみようと思っている」
「さすがアニキ! アニキなら最強の冒険者になれますぜ。ささっ、こちらが受付ですぜ」
フェードの案内で受付の前に立った。
「新規登録ですか?」
受付のお姉さんが笑顔で言った。
「そうだ。登録をたのむ」
「それでは登録用紙に記入をお願い致します」
俺は受付のお姉さんが登録用紙を取り出した。
結構アナログだな。
こういうのは魔法で登録とか、ギルドカードで自動登録するのが主流だと思っていたよ。
さて、どちらの名前を名乗ろうか?
前世である力男にするより、この世界での名前のラウルの方が過ごしやすいのかな。
戸籍の概念があるか分からないけど、後でトラブルが起きても面倒だからラウルにしよう。
俺は必要事項を記載して提出した。
「ーーのお名前をお願いします」
何で名前を聞くのだ?
いま必要書類に書き込んだと思うのだけど。
少し考え事をしていて聞いていなかったとは言いづらい。
「フェードだぜぇ」
「アリスです」
何故、お前らが名乗るのだ?
これは俺の冒険者登録だぞ。
「フェードさんとアリスさんですね。冒険者登録の確認が取れました。ラウルさん、パーティー名は決まってますか?」
何を言っているのだ受付の女性は?
冒険に出るにパーティーだって?
変な奴だな。
「パーティー名って、ティーパーティーみたいなものか?」
「ティーパーティーですね。他に登録がないのでパーティー登録完了です」
「アニキと同じパーティーになれて感動ですぜ! これからはいつも一緒ですぜ!」
「嫌がっていても、結局私を必要としてくれるのね。恥ずかしがり屋さんなんだから!」
何故かフェードとアリスが喜んでいる。
「ちょっと待て。どういう事だ?」
「なに言ってんすかアニキ。冒険者パーティーにオレ達を登録してくれたじゃないすか?」
「そうよ。パーティー登録したから、もう逃げられないわよ」
「な、なんだと?!」
「ラウルさんは正式にフェードさんとアリスさんの二人とパーティー登録を完了させておりますよ」
受付のお姉さんの言葉が突き刺さる。
考え事をして聞いていなかったのがいけないけどさ、途中で聞き返しておけば良かったよ。
フェードとアリスが結託して俺とパーティー契約をするとはね。
取り消しする事も可能だと思うけど、これも運命か。
冒険に出る以上、仲間を集める必要はある。
俺にはエナドリがあるけど、一人で何でも出来るとは思ってはいないからね。
アリスは何が出来る分からないが、フェードはお笑い枠で活躍出来るだろう。
最初の冒険に出るには十分な面子だ。
「受付のお姉さん、今の俺たちが受けられる依頼はあるか?」
「今は依頼がないのよ。実は王がギルドの依頼を差し止めているのよ。詳しい事情は発表されていないけど、どうやら魔王が復活したらしいのよ」
「魔王の復活が何でギルドの依頼と関係があるのだ?」
「冒険者を魔王討伐に向かわせたいみたいなの。だから通常のギルドの依頼を受けて欲しくないみたいなの。ちょうど明日、王宮に冒険者が集められるから行ってみたらどうかな? 高名な冒険者が集まるから、新米冒険者にとっても有益だと思うわよ」
「そうか、行ってみる事にするよ」
俺は冒険者ギルドを後にした。
「王宮に行くの楽しみっすね。高名な冒険者どもにアニキの凄さを見せつけてやりましょうぜ!」
「ムリに決まってるでしょ。私たちは新米冒険者なのよ。ラウルはモンスターと戦った事あるの?」
「ないね。モンスターと言われているような人間とは戦った事はあるけどね」
「さっすがアニキ! 当然、魔王討伐を目指すんですよね?」
「本当に魔王討伐に名乗りをあげるつもり? 恥をかくから止めておいた方が良いわよ」
「それはない」
「何でですかアニキ! アニキがやらなかったら、誰が魔王を倒すんですか?」
「勇者か最高ランクの冒険者に決まってるでしょ。ラウルが常識人で良かったわよ。魔王は倒せなくても、少しは貢献出来るように頑張りましょう! 最初は弱い敵と戦って経験を積まないとね!」
「アリスの言う通りだ。最初は弱い奴を倒そう」
「なんでだよアニキ! 弱い奴を倒すなんてカッコ悪い事を言わないでくれよ!」
「弱い敵を倒しながらコツコツ腕をあげるのが冒険者の王道なのよ。冒険に出るのが楽しみね」
「そうだな。早く王を倒そう」
急に足音が消えた。
フェードとアリスが足を止めたようだ。
振り返ると二人共驚いた顔をしていた。
そんなに変な事を言ったかな?
「さすがアニキ! 王を倒す! そんな事考えた事もなかったっす!」
「何言ってんのよ! 正気?! 今の流れで何で王を倒すって話になるのよ!」
「王は冒険者ギルドに圧力をかけた。奴は悪だ」
「圧力じゃないでしょ! 魔王が復活したなら当然の対応だと思うわよ」
「俺の冒険を阻む事は当然の事ではない。許す事は出来ない」
「そうっすよ! アニキの道を阻む奴は悪ですぜ!」
「王を倒せるはずがないでしょ! もう! 大変な事になっても知らないからね!」
「かまわん。宿を探すぞ」
「それならオレが泊っている宿に行きましょう!」
俺たちはフェードに案内された宿に泊まる事にした。