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29話 初心者の遺跡

 遺跡の情報はコウアリアの町の冒険者ギルドで簡単に入手出来た。

 でも王都に近いコウアリア周辺には有名な遺跡はない。

 それでも気にならなかった。

 目的がブタリウスがコウチキカ地方の食事に飽きるまでの暇つぶしだからね。

 俺たちは半日歩いて遺跡に辿り着いた。

 朽ち果てているが、なにかの神様を祀った神殿のようだ。

 ここはダルマシウス教の古い神殿なのか?

 それとも他の神の神殿だろうか?

 俺が知っている宗教がダルマシウス教だけだから判断するのは難しいな。


「まさか初心者の遺跡にもう一度来る事になるとは思わなかったわね」


 アルリディアが懐かしむ様に言った。


「初心者の遺跡? そんな名前なのか?」

「そうよ。ギルドでも初心者向けの遺跡って教えてくれたでしょ。冒険者になったばかりのパーティーが最初に冒険する場所よ。ラウル達は冒険者なのに来たことがないの?」

「ねぇよ。アニキは最強だからな。初心者向けの遺跡なんて来る必要ねぇのさ!」


 何故かフェードが自慢げに言った。


「最強かどうかは分からないが、冒険を始める前に勇者を倒してしまったからね。いきなりギリス王国を救う戦いを始める事になってしまっただけだ」

「最初からそれだけ強いなら、初心者の遺跡で腕を磨く必要はないかもね」

「アルリディアは強くなかったのか? 前に来たことがあるんだろ?」

「弱かったわよ。あの時の私は、いつも仲間の足を引っ張ってた」

「今は強くなれたのか?」

「少しはね」

「オレ達の仲間になったんだ、アルリディアもアニキのエナドリで最強になれるぜぇ」

「そうなれると良いわね」

「エナドリばかりに頼るなよフェード。努力する事が一番大事なんだからな。そういえば、一番うるさいヤツはどうした?」


 周囲を見渡すと、アリスが遺跡の入口付近でしゃがみ込んでいた。

 体調でも悪いのか?

 気になったのでアリスに近づいて声をかけた。


「大丈夫かアリス?」


 声をかけても返事がないので肩を揺すった。


「ふぇっ?! なにするのよラウル?」

「アリスが無反応だったからだ。どうした? 気分が悪くなったか?」

「心配してくれるの? 嬉しいわね~って言いたいところだけど、それどころじゃないの」

「どういう事だ? 何か問題でもあったのか?」

「ここを見て欲しいの?」


 アリスが指差す場所を見たが遺跡の壁があるだけだった。

 触ってみても何も起きない。

 隠し扉があるわけでもないようだ。


「アリス、何に気付いたんだ?」

「ラウルには分からないの? ここの床に近い場所の模様を見て。古代ダルマシウス様式の土台が使われているの?」

「古代ダルマシウス様式? この変な模様が?」

「そうよ、地平を表す水平線。海を表すうねった線。そして雲を表す文様が混ざり合っている。これはダルマシウス神が天と地と海を混沌から分化して世界を創造した事を表しているの」

「そうだったのか。俺には分からなかったけど、信者なら分かるんだろ? 冒険者だったら、みんな知っている事じゃないのか?」

「分かっていたら初心者の遺跡なんて呼ばれていないわよ。ここがダルマシウス神を祀る古代の神殿だったら、ダルマシニウム神国から復興の支援が来ていると思うから」

「そういうものなのか?」

「来ていないって事は偽物なんじゃねぇか?」

「偽物じゃないわよ。ダルマシウス神を祀っている事が事実なら、歴史的発見なんだからね!」

「大げさな話になってるけど、最深部に地味な石碑があるだけよ。ダルマシウス神の彫刻や壁画もないから」

「そんなはずないと思うけど……」


 アリスが一度探索をした事があるアルリディアに否定されて落ち込む。

 冒険を始める前から落ち込まれても困るな。


「入れば分かるさ。この遺跡が何を祀っているのかね」


 俺たちは遺跡に入る事にした。

 初心者向けの遺跡と言うだけあって、知能が高い魔物は出てこないようだ。

 フェードとアリスの特訓には丁度よい。

 戦いが出来なさそうなアルリディアと様子見をしている俺は、フェードアリスの後ろで戦いを見守った。

 フェードが巨大な蜘蛛の魔物や、蛇の魔物を次々にナイフで斬り裂いていく。

 蜘蛛の魔物に糸を吐かれたり、蛇の魔物が物陰から飛び掛かってきた時は危なかったが、アリスが全て防御魔法で防いでいた。

 仲はあまり良くないが、戦闘では中々良いコンビだな。

 二人の戦いを見学しながら1時間程探索すると最深部に辿り着いた。

 部屋の中心には、アルリディアが言っていたように地味な石碑が一つあるだけだった。

 アリスが必至に石碑を調べているが、何も出てこないようだ。


「何か見つかったか?」

「残念ながら無いわね。この石碑に古代ダルマシウス語で世界を奪いし邪悪なる者って書いてあるだけね」

「アリス!」


 フェードが石碑に向かって叫んだ。


「フェード! なんで私の名前を石碑に向かって言ってるのよ!」

「邪悪なヤツの名前っていうからさ、ダルマシウス教を無理やり布教してるアリスの名前に反応するかと思っただけだぜ!」

「無理やりなんてしてません! フェードの人相が悪いからダルマシウス教に入信させて改心させようと思っただけですぅ~」


 出会った時の事か。

 今更そんな古い話で揉められても困るんだけどな。

 でもフェードの考えは合っているかもしれない。

 アリスじゃなくて、邪悪なヤツの名前を言ったら何かが起きるかもしれないな。

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