28話 マックスに任せるぜ!
「アルリディア。浴衣を気に入ってって事は、俺たちの事を認めるって事だよな?」
「認めるなんておこがましいですよ。コウチキカ地方で一番の商会はティーパーティーの皆さんだって事は誰もが知っている事です」
「なら、俺たちは商売でアルリディアに勝ったって事だな」
「その通りですね」
アルリディアはあっさり敗北を認めた。
「マックス、俺たちの勝利でコウチキカ地方が支配される事は無くなった。解決したから俺たちは王都に帰るぞ」
「待ってくれ! ワシらは四天王アルリディアを倒しておらんぞ!」
「いや、アルリディアを倒した。俺たちの勝利だ」
「ヤツの店は健在ではないか! 何も変わっておらんぞ!」
マックスは俺たちの勝利を認めない様だ。
しつこい奴だな。
俺だってマックスが言っている通りだって分かっているけど、こっちにも事情があるんだよ。
手っ取り早くアルリディアに勝つために、勝手にダルマシウス教の名前を使って商売したのだ。
これ以上コウチキカ地方に長居するとダルマシニウム神国にバレる可能性が高い。
さっさと逃げないと大変な事になる。
本当はマックスの希望通りアルリディア商会をつぶす事は可能だ。
エナドリを無限に生み出してタダ同然で売れば、アルリディア商会がダルマシニウム神国から購入している回復薬の価格を暴落させる事が出来るからね。
でも、そんな事をすればコウチキカ地方の経済を破壊する事になるし、ダルマシニウム神国に直接喧嘩を売る事になる。
アルリディアを倒す為だけに、そんな犠牲を出したくはないんだよ。
だからーー
「それを成し遂げるのはお前の役目だマックス。今日から俺たちの店はマックス商会に改名する」
「どういう事だラウル?」
「お前ほとんど活躍してないだろ。ローレインに任されたなら、少しは自分の力で頑張れ!」
「待て! 任されたのはお主らも同じだろ!」
「ねぇラウル? マックスさんを助けなくても良いの?」
「アリス、お前の為だ」
「急にどうしたのラウル? みんなの前なのに大胆ね!」
なぜかアリスが喜んでいる。
物凄い勘違いをしているな。
アリスはダルマシウム教の神官なのに、勝手に神の名を使って商売したんだぞ。
このままコウチキカ地方にいたら、ダルマシニウム神国に捕まって処刑されるかもしれないんだよ。
「アニキの考えた服を作んのは楽しかったけどさ、オレは一緒に冒険してみてぇんだよな。だから旅に出ようぜ!」
フェードが同意してくれるなら、コウチキカの町に居続ける理由はない。
「そういう事で俺たちは旅立つぜ」
「お待ちください」
アルリディアに呼び止められた。
「どうしたアルリディア。なんか用か?」
「あなた達は四天王を倒そうとしているの?」
「そうだ」
「なんで四天王を倒そうとするの?」
「魔王がいる北の地に行くのに四天王を倒す必要があるらしい」
「どうして貴方達が魔王を倒そうとするの?」
「それは……魔王を倒すはずの勇者を倒してしまったからだったような気がする」
「なるほど……そういう事なのね。私も一緒にいくわよ」
「はっ? どういう事?」
「私もラウルさん達と一緒に旅をするって意味よ」
なんでこうなった?
四天王アルリディアを倒す為にコウチキカの町に来たのに、逆に仲間になってしまったぞ。
アルリディアは何が目的なんだ?
「オレはアルリディアが同行しても構わないぜ。アニキの役に立てよ新入りぃ」
「私は反対よ」
「フェードが認めたのも、アリスが認めないのも意外だな」
「オレはアルリディアが作る珍しい食いもんの作り方習いたいだけっすよ」
「私はヒロインの座を奪われそうで嫌なのよ!」
フェードの言ってる事は良く分かるけど、アリスの言っている事は良く分からないな。
ヒロインの座を奪われそうだから嫌っていうなんて悪役令嬢みたいだな。
いや悪役神官か?
でもアリスが嫌がっても、俺はアルリディアを連れて行こうと思う。
今の所、普通の人間として振る舞っているし、人類と敵対はしていない。
でも四天王である事は認めているのだ。
いつ人類に対して反旗を翻すかわからない。
目が届く場所にいてくれた方が対処しやすい。
「アリスは嫌がっているが多数決で賛成可決だ。アルリディア、よろしくな」
「よろしくねラウル」
俺はアルリディアと握手をした。
「待ってくれ~。ワシはどうすれば良いのだ?」
マックスが俺にしがみついて来た。
「はい、これをどうぞ」
アルリディアが書類をマックスに手渡した。
「な、なんだこれは?!」
「アルリディア商会の権利書です。今日からマックスさんがアルリディア商会の代表です」
「ど、どういう事だ? 何をするお前達!」
マックスがアルリディア商会の従業員に囲まれている。
あれの受注をどうするとか、なんとかの商人との面会がどうのこうの聞こえてくる。
何の戸惑いも無く従業員がマックスを代表として扱っているって事は、アルリディアは最初からこうするつもりで手配していたのだろう。
これでコウチキカ地方の問題は解決したから、王都に戻って四天王を倒す旅を続けよう。
俺たちは直ぐに王都に……戻る事が出来なかった。
コウチキカ地方の穀物を気に入ったブタリウスが王都に戻りたがらなかったからだ。
仕方がないから寄り道をしよう。
コウチキカの町と違って王都に近いコウアリアの町であれば大丈夫だろう。
俺たちはコウアリア周辺の遺跡探索をする事にした。




