26話 商売繁盛の理由
「失礼致しましたお客様」
アルリディが頭を下げた。
四天王が俺たちを客扱いしているのは何故だ?
「わかりゃあいいんだよ! わかりゃあ! さっそく商品を見せてもらうぜ」
フェードが調子に乗っている。
買い物に来たのではないのに商品を見始めた。
すっかり目的を忘れて普通の客になっているな。
「アンタが代表のアルリディアか?」
「はい、私がアルリディア商会の代表のアルリディアです」
「なんで俺たちに頭を下げた?」
「私の商会の社員が皆様に対して失礼な行動をとったからです」
「でも俺たちは怪しい格好をしているから強盗と疑われても仕方がないと思うが?」
「怪しい格好ですか? 私には普通に見えますけど」
「アイツらの事だ」
俺はフェードとマックスを指差した。
トゲトゲのレザースーツを着た二人は仲間の俺が見ても強盗に見える。
二人共人相が悪いからな。
「ギリス王国では珍しいですよね。私はドルミニ帝国の最新ファッションが見れて嬉しいですけど」
「ドルミニ帝国の最新ファッション?」
「ご存じないのですか? ギリス王国の東のドルミニ帝国で流行っているのですよ。お二人はドルミニ帝国出身の方ですか?」
知らなかった……
アルリディアの言っている事が本当なら、フェードはドルミニ帝国出身なのだろう。
面白そうだからって理由で仲間になったけど、俺はフェードの事を全く知らない事に気付いた。
今夜はフェード自身の事について聞いてみよう。
「ありがとうアルリディア。仲間の事が知れて良かったよ」
「良く分からないけど、お役に立てて良かったです」
「ねぇ、ラウル? なんで普通に会話してるの? 敵情視察するんじゃなかったの?」
アリスに言われて思い出した。
俺は四天王アルリディアを倒す為に来たのだった。
アルリディアが普通に話しかけて来たから、すっかり忘れていたよ。
「アルリディア! ワシの事を忘れたとは言わせんぞ!」
マックスがアルリディアに詰め寄った。
筋骨隆々としたマックスに詰め寄られれば、普通であれば怯むだろう。
だがアルリディアは一歩も引かなかった。
「マックス商店のマックスさんじゃないですか! いつもと違う服装だから気付かなかったです。先月までは向かいにあったお店が無くなっていたので心配していたのですよ」
「貴様の店のせいで潰れたんだよ! 今度こそお前を倒す!!」
「落ち着けマックス」
「止めるなラウル! 何をするっ!」
俺はマックスを羽交い絞めにした。
無駄に暴れられても困るからな。
「一緒にいるだけの人がご迷惑をおかけして申し訳御座いませんでした。仲間じゃないですけど一緒にいるので処分しておきますね」
アリスがアルリディアに謝った。
一緒にいるだけの人って言い方がキツイな。
マックスと仲間だと思われたくはないようだな。
「お気になさらないで下さい。いつも通りですから」
アルリディアが笑顔で答えた。
いつもこんな風に怒鳴り込んでいたのか。
マックスの方が悪役にしか見えないよな。
「なぁ、アニキ! これ買ってもいいか!」
フェードが目を輝かせながらワッフルとベーグルを手にしている。
そんなものではしゃぐなんて子供みたいだな。
パン屋に行けば普通に売ってるだろ。
別に珍しくもない。
「俺の許可はいらないぞ。欲しいと思ったら好きに買えばいい」
「やったぜ!」
フェードが嬉しそうに会計をしている。
「敵である奴らに利益を与えるなどありえん……」
「大した利益にはならないさ。こんな事で争っても意味はないだろ?」
「その油断が命取りになるのだ。フェードがアルリディアの店に通うようになっても責任をとれないからな」
「マックスはおおげさなんだよ。用事が済んだら帰るぞ」
「お買い上げありがとうございました」
俺たちは店を出て宿をとった。
フェードが椅子に座って美味しそうにワッフルをかじっている。
「そんなにワッフルを美味しそうに食べるヤツ初めて見たよ」
「アニキはこれを知ってるのか?」
「ねぇ、ラウル。ワッフルってなに?」
「これはワッフルと言うのか?」
フェード、アリス、マックスの三人が不思議そうな顔で俺を見ている。
もしかしてワッフルを知らないのか?
……そうか!
俺は転生前の記憶があるから気にも留めなかったけど、元々この世界にワッフルやベーグルは存在していなかったのだな。
アルリディアが商売で成功した理由が分かったよ。
コウチキカ地方の豊富な穀物を使って、この世界の住人が知らないワッフルやベーグルを作って売っていたからって事だったのだな。
でも、そういう事なら四天王アルリディアは転生者って事なのか?
四天王プレテイアスは狼の魔獣だった。
話をしていても転生者って感じはしなかったし、人類に敵対していた。
でもアルリディアは好意的だった。
普通に商売をしているだけにしか見えない。
同じ四天王でも考え方が違うのだろうか?
もしかしたら裏があるのか?
経営が悪化したら化けの皮が剝がれるかもしれないから、商売で対決してみよう。




