23話 侵入失敗
俺たちは旅を続け、コウチキカ地方の最初の町であるコウアリアの町の近くまで辿り着いた。
ローレインの情報通りであれば、ここからは四天王の一人アルリディアの支配する領域だ。
敵の襲撃を受ける可能性が高い。
コウアリアの町には堅牢な城壁はないが、獣の侵入を防ぐための柵がある。
町に入るには衛兵がいる入口を通らなければならない。
衛兵の目を盗んで町に侵入するのは容易ではないな。
しばらくは様子を伺うしかないな。
「おいコラッ! 先に行くんじゃねぇ!」
フェードが叫びながら町の入口に向かって走っている。
「なんで叫んでるんだ?!」
「ラウル……アレ……」
アリスが指を指す方を見ると、ブタリウスがトコトコ町の入口目掛けて走っていた。
フェードが追いかけていたのはブタリウスだったのか。
こうなったら隠れている意味はない。
強行突破だ!!
俺とアリスも町の入口へ向かって走り出した。
そして……衛兵の前を普通に通過した。
あれっ?
何も聞かれないだと?
俺は振り返り衛兵に話しかけた。
「なんで俺たちを止めないんだ?」
「どういう意味だ? 旅行者だろ? 止める必要はないと思うが?」
「なら、なんの為に警備しているんだ?」
「そんなの外敵の侵入を防ぐ為に決まっているじゃないですか」
外敵の侵入を防ぐためだって。
それなら、コウアリアの町は四天王アルリディアの侵攻を受けていないって事だよな。
良かった。
これなら安心してローレインの知り合いのマックスを捜せるぞ。
「仕事の邪魔してすまなかったな。四天王のアルリディアが攻めてきたら俺も戦うからな」
衛兵が首を傾げ不思議そうな顔をした。
何か変な事を言っただろうか?
「もしかしてアルリディア商会の会長、アルリディア様の事ですか?」
「アルリディア商会? なんだそれは?」
「知らないのか! コウチキカ地方の繁栄はアルリディア様と共にあるのだ! アルリディア様と戦うなどという罪深い行いを出来るはずがない!」
「ごめんなさいね~。たまたま昔の彼女と名前が被ってただけよ。私に免じて見逃してね~」
「どういう意味だアリス?!」
「そういう事であれば、他人の私が口出す事では無いですよ。いやぁ~羨ましいですな~」
「ありがとうね~。ラウルは黙ってついて来てね」
俺はアリスに引っ張られ、先に町に入ったフェードとブタリウスを捜した。
少し歩くとフェードとブタリウスは屋台の前で見つかった。
ブタリウスがトウモロコシを美味しそうにかじっている。
俺たちをおいて町に入ったのはトウモロコシの匂いにつられたからだったのか。
ブタリウスは食い意地が張ってるよな。
全部フェードに任せているけど食費は足りているのだろうか?
無事に全員揃ったところで宿を借りる事にした。
ブタリウスの事はフェードに任せて、俺とアリスは部屋で話をする事にした。
「アリス、さっきの衛兵との会話はどういう意味だ? 俺に昔の彼女などいないぞ」
「そんなの知らないわよ! あの状況を乗り切るには誤魔化さなきゃいけなかったでしょ。理由は分からないけど、この町の住民は四天王のアルリディアを崇拝しているみたいだったから。私たちがアルリディアと敵対してるって知られたら攻撃を受けていたかもしれないでしょ?」
「アルリディアを崇拝か……危険だな。崇拝者を扇動した事がある経験者だから気付いたのか」
「扇動した事がある経験者ってどういう意味?」
「アリスはダルマシウス神を崇拝しているだろ? 信者を率いて戦うのはアリスの得意分野だよな」
「ダルマシウス神を四天王と一緒にしないでよ! 由緒正しき神様なんだからね。コウチキカ地方でダルマシウス神をばかにするのは危険なんだからね」
「隣国がダルマシウス教の大神殿があるダルマシニウム神国だからか?」
「その通りよ。ダルマシウス教の信者に聞かれたら大変なんだから気を付けてよね」
アリスに注意された事に違和感を感じた。
ダルマシウス教の信者に聞かれたら大変っていうけどさ、俺はダルマシウス教の神官に直接言ってるんだ。
もっと危険な気がするんだけどな。
もしかしてアリスは自分がダルマシウス教の神官だって事を忘れているのか?
まぁ、気にしても仕方がないか。
それより四天王アルリディアが存在すると知れた事が重要だ。
ローレインの情報に間違いはなかったのだ。
あとは助けを求めている冒険者のマックスを捜すだけだ。
もしかしたらコウアリアの町にいるかもしれない。
明日、捜してみよう。
その前に準備をしておく必要がある。
「アリス、これを持っておいてくれ」
俺はタフな毎日を過ごせるエナドリ、マイティ・サイクロプスを生み出してアリスに渡した。
こいつなら不屈の精神を生み出して、多少の精神攻撃程度なら跳ね返せるだろう。
「これをどうするの?」
「アルリディアが精神支配系の能力を使っている可能性がある。コイツを飲んで防衛してくれ」
「あんまり気が進まないなぁ。甘いの苦手なんだよね」
「我慢しろ。敵に操られてからでは遅い。フェードにも飲ませるからな」
「分かったわよ」
アリスがマイティ・サイクロプスを飲んだ。
甘いのが苦手か。
それは考えていなかった。
今の俺が生み出せるのはエナドリ四天王の四種類のみ。
全て人間のエネルギー源である糖類が入ったエナドリだ。
今後はシュガーレスのエナドリも必要になりそうだな。
糖類をとり過ぎると危険だからな。




