15話 見た事あるけど知らない人との別れ
俺は宿に戻り、次の目的地であるペプリカントを目指す事にした。
これでダルダルシアの町ともお別れだな。
俺はフェード、アリス、ブタリウスと共に南門に向かった。
南門では一緒に魔獣の群れと戦ったゲンジロウ達8人の騎士がいた。
「ラウル殿、町の防衛にご協力頂きありがとうございました。ラウル殿がいなければ町は壊滅しておりました」
ゲンジロウの様な見た目の騎士が俺に頭を下げている。
話し方が違うけど姿が一緒だ。
双子の弟か?
「どちら様でしょうか?」
「またまた御冗談を。私ですよ。ゲンジロウです。魔獣の襲撃の時はお見苦し姿をお見せしてしまって恥ずかしい限りです。私も町を守る為に必至でしたので」
「そ、そうなのか……」
本人がゲンジロウを名乗っているし、周りの騎士たちも否定しないから、目の前にいるのは本当にゲンジロウなのだろう。
こんなにも性格が変わるものなのだろうか?
今まで怒り狂ったミノタウロスの様な姿しか見ていなかったから、まともな騎士の様な態度のゲンジロウの違和感が凄い。
「気にすんなよオッサン。戦闘中はアニキ並みにぶっ飛んでたぜ!」
「いえいえ、ラウル殿と比べたら失礼ですよ」
「だよな! アニキは俺達よりクレイジーだからな!」
ゲンジロウとフェードが楽しそうに笑いあっている。
俺はアレよりクレイジーなのか……なんか嫌だな。
「そんな事より早く旅立ちましょうよ。善は急げって言うでしょ。早くペプリカントの町を取り戻さないとね」
アリスが旅立ちを急かす。
「さすがダルマシウス教の女神様。ペプリカントの町の奪還を優先なさるか」
「私たちも冒険者達が戻り次第駆けつけますよ。他の町の騎士からも応援を募っておりますので」
「そういうのいいから早く出発するわよラウル、フェード」
アリスが南門を通ってダルダルシアの町を出た。
仕方がないな。
これ以上、時間を使ったらアリスをダルマシウス教の女神と慕う住民に囲まれて出発出来なくなるからな。
「じゃぁなゲンジロウ。援軍はありがたいけどムリはするなよ。死んだら終わりだからな」
「ラウル殿もお気をつけて下さい」
「大丈夫だぜ。アニキにはオレがついてるからさ。ゲンジロウも気をつけろよ!」
「フェード殿もお気をつけて下さい」
ゲンジロウ達ダルダルシアの騎士に見送られ、俺たちはダルダルシアの町から旅だった。
このまま真っすぐ南の街道を進めば、四天王の一人プレテイアスに占領されたペプリカントの町に辿り着く。
途中寄り道すればダルダルシアと同じくらいの規模の町に行く事も出来るが必要ないだろう。
俺たちには強い武器や防具を手に入れる必要は無いし、修行やレベルアップも必要ないんだ。
目的地へ向かって一直線に突き進むだけだ!
街道では魔獣が少し出たが、全てフェードが倒してくれた。
エナドリを使わなくても強いじゃないか。
しかも旅の途中の食事は全てフェードが作ってくれている。
俺もアリスも料理が出来ないから助かっている。
面白くて、戦えて、料理が出来るのは凄いと思う。
フェードが仲間になってくれて本当に良かったぜ。
今日も美味しい食事を食べた後、ペプリカントの町を目指してノンビリ旅を続けていた。
「この先は魔獣を従える支配者の領域。決して人が立ち入ってはならぬのだ」
なんか聞こえたけど無視しよう!
俺たちは足を止めず歩き続けたが、老人がゆく手を塞いだ。
「人間が太刀打ち出来る相手ではないのだ! 引き返せ! 取り返しがつかなくなる前に!」
老人……トルディエが叫んでいる。
コイツ何がしたいのだろう?
前の勇者の仲間だって言ってたけど、毎回邪魔ばかりしてくる。
本当は人類の敵なのではないだろうか?
「話がしたかったらダルマシウス教の教会を訪ねて下さいね。いくらでも話を聞いてもらえると思うから」
「教会になど用はない! ワシは君たちに忠告をしにきたのだ!」
「はいはい、年配者の御忠告ありがとう御座いました~。で、いつ帰るのかな~」
ダメだ。
アリスがキレそうだ。
「話をしても無駄だ! コイツは力で退けるしかねぇんだよ!」
「なぜその様な乱暴な物言いをなさるのか……」
「てめえがいるからに決まってんだろ!」
フェードがトルディエにナイフを投げた。
ナイフがトルディエの杖に突き刺さる。
トルディエが正面に杖を構えていなかったら死んでたよ。
アリスもトルディエを嫌っているが、フェードは特に厳しい態度を取っている。
「何をなさるんですか! 刺さったら死んでしまいますよ!」
「殺す為にやってんだよ! しぶとい奴め!」
「まて、フェード。やり過ぎだ」
「なんでだよアニキ。アイツをのさばらせておいたら後悔しますぜ」
「それはない。何が起きてもエナドリで解決出来るからな」
「それもそうっすね。でもアイツはこの世に存在してはいけないんすよ」
そこまで言う事か?
さすがに言い過ぎだと思うぞ。
トルディエには申し訳ないが、これ以上関わらない方が良いかな。
「トルディエ、黙って帰ってくれないか。俺は別にトルディエの事を嫌っていないが、連れの二人が嫌がっているのでね」
「仕方がない。これもワシの罪のせいなのだろう……さらばだ」
トルディエが杖に突き刺さったナイフを引き抜き、地面において去っていった。
フェードのナイフを返してから去っていくとは律儀な奴だな。




