14話 本屋がない!
ダルダルシアの南門に戻り周囲を見渡すと大量の魔獣の死体があった。
ここでも激戦が繰り広げられたのだろう。
俺と荒ぶるゲンジロウだけでは魔獣を倒しきれなかったからな。
「やりましたぜアニキ!」
フェードが駆け寄ってきた。
「無事だったみたいだな。他の皆は大丈夫か?」
「大丈夫ですぜ。騎士の連中が盾になって門を守ったからさ」
「騎士たちにケガはないのか? 必要であれば回復用のエナドリを出すぞ」
「問題ありませんぜ。殆どケガしてないんで。本当に凄いっすねエナドリの力は」
「そうかそれなら良かった」
「アニキは驚かないんですか? あれだけの魔獣の猛攻を受けて騎士がケガをしなかったのに」
「別に驚く事はない。エナドリだからな」
「なるほど。そうっすね。エナドリだから強くて当然っすよね」
「アリスのところに向かおうか」
俺はフェードを連れて歩き始めた。
歩きながら町の様子を伺ったが、既に住民達は落ち着きを取り戻していた。
防衛成功の情報が伝わったのだろう。
普通の暮らしに戻れそうで良かった。
安心しながら歩いて広場に出ると人だかりが出来ていた。
人々の中心にいるのはアリスだ。
人気者だなアリスは。
ダルマシウス教の奇跡の女神とか称えられているではないか。
アリスはそのままにしておいて、フェードと二人だけで宿に戻ろうかな。
「待ちなさいよラウル! どうしてくれるのよ!」
去ろうとしたところをアリスに呼び止められた。
「どうしてくれるとは、どういう意味だ?」
「私の手に負えない事体なんですけど!」
「良かったじゃないかダルマシウス教の女神様」
「困るわよ! ダルマシウス教に女神なんていないのよ! 勝手にダルマシウス教の女神なんて呼ばれている事が分かったら大神官様から処分されるわよ!」
「待てアリス。ダルマシウス教には本当に女神はいないのか?」
「いないわよ。別の宗派では聖女なんて人もいるけど、ギリス王国で信仰されている神に女神はいないわよ」
女神がいないだと?!
俺は女神がいないのはダルマシウス教だけだと思っていた。
だから他の宗派でも女神がいないとうのは想定外だった。
そうすると、俺が転生時に出会った女神って何者なのだ?
俺はたしかに女神に出会って転生している。
同じ転生者のユウマも女神の話をしていた。
間違いなく女神は存在する。
それなのに、この世界の住民は女神の存在を知らないのか?
あれは何の女神だったのだろう。
興味なかったから女神に関しての情報が全くない。
少し気になるから調べてみよう。
「そうか、教えてくれてありがとうアリス。じゃあ頑張れよ。俺とフェードは先に宿に戻っているからさ」
「待ちなさいラウル!」
後ろでアリスが叫んでいるが気にせず宿に戻った。
アリスを置いて来たけど大丈夫だろう。
住民の気が済んだら開放されると思うからね。
人々の心の拠り所になれるのであれば良い事ではあると思うからね。
宿に戻ってフェードと昼食を食べた後、俺は一人で本屋を探す事にした。
目的はこの世界について学ぶことだ。
色々知らなすぎるからね。
俺は本屋を求めて歩き始めた。
ーー2時間後。
な、なんで本屋がないのだ!
仕方がない、探して見つからないならギルドで教えてもらおう。
俺は冒険者ギルドに向かった。
「ラウル様! お待ちしておりました!」
ギルド職員総出で迎えられた。
何が起きたのだ?!
「ラウル様のお陰で冒険者ギルドの信用が回復出来ました。本当にありがとうございます。無事に住民からの依頼を受けられる様になりましたよ。他の冒険者達は逃げ出してしまったので、選びたいほうだいですよ」
ギルド職員が依頼が掲示されている掲示板を指差した。
依頼か……いまはいいかな。
仕事をする気分じゃないんだよね。
「今は依頼を受ける気はないんだ」
「それならどの様な御用で? 今回の町の防衛の報酬であれば直ぐにご用意致します」
「報酬が出るのか。それならもらっておこう。でも用件は別にある。本屋の場所を教えてくれ」
「本屋……ですか?」
ギルド職員が怪訝そうな表情をしている。
本屋について聞いてはいけないのだろうか?
「ギリス王国では一般人が書物を読む事を禁止しているのか?」
「いえ、禁止はされておりませんよ。西のダルマシニウム神国であれば神書以外の書物を読む事を禁止されておりますけど。もしかしてラウル様はダルマシニウム神国のご出身ですか? 書物を読む事を禁止している国は他に御座いませんから」
そうだったのか。
ギリス王国の常識を知らな過ぎて、他の国の住人だと思われているよ。
俺は一応ギリス王国出身なんだけどね。
「俺は東部の田舎出身だから本について知らなかっただけだ。それで、ダルダルシアの町に本屋がない理由はなんだ?」
「そういう事でしたか。別に本屋がないのはダルダルシアの町だけでは御座いません。そもそも売るだけの本がないだけです。本があるのは王城、ギルド本部、魔術師協会、後は商業組合くらいですよ」
「教えてくれてありがとう。報酬だけもらっていくよ」
俺はギルド職員が用意してくれた報酬を受け取って去ろうとした。
「待って下さい。必要なのが本では無く情報であれば、遺跡を探索するのはどうでしょうか? 壁画や書物が発見される事がありますよ」
「ありがとう。機会があったら遺跡を探索してみるよ」
俺は冒険者ギルドを出た。
この世界の情報を得るには遺跡探索が早そうだな。
ペプリカントを四天王から開放したら遺跡を探してみようかな。




