12話 騎士のゲンジロウ
ダルダルシアの町の防衛に参加する事にした俺たちは、防衛の指揮を取る予定の騎士に会いに行く事にした。
騎士の名前はゲンジロウだ。
日本人っぽい名前だから、どう考えても転生者だよな。
ギルド職員に教えてもらった通り南門に向かうと重たそうな鎧を着た騎士のような男がいた。
40才くらいだろうか、見た目は日本人って感じではないな。
そういえばユウマの見た目も日本人とは違っていたな。
若返っているとはいえ、転生前の姿を維持している俺が特殊なのか?
話を聞いてみれば分かるだろうか?
俺は騎士の男に話しかけてみるにした。
「俺はラウル。あなたが町の防衛の指揮をとる予定の騎士か?」
「騎士ぃいいいい! キシシシシ。私は騎士のゲンジロウ。戦えファイトオオオ! 魔獣がいっぱいでまじゅうううううい状況でゃあ!」
どうやら俺は話しかける相手を間違えた様だ。
荒ぶるエナドリ、レイジング・ミノタウロスのパッケージの様な見た目だな。
怒り狂うミノタウロスと同じ目をしてるよ。
残念ながら意志の疎通が出来そうもない。
「お前がゲンジョロウか? アニキが仲間にしてやるって言ってんだ。有り難く思えよ。ヘィ!」
「ゲンジョロウじゃなくてゲンゲンゲンジロウッ! 仲間増えるは最高! でも転職NG! 騎士は冒険者になれねっす」
「転職不要! 冒険不要! 町を守ってヒャッハーするぜ!」
なぜかフェードがゲンジロウと親しく話始めた。
「ねぇラウル。ゲンジロウさんは話が通じなそうだけど、どうする?」
「フェードに任せよう。俺には意志の疎通が出来る自信がない」
「そうよね。二人の話が終わるまで待ちましょ」
俺とアリスはフェードとゲンジロウが話を終えるのを待った。
10分後、話を終えたフェードからゲンジロウさんから聞いた町の状況を教えてもらった。
今は町の住民と協力して南門の周辺に防御用のバリケードを作っているそうだ。
町にいる騎士はゲンジロウさんを含めて8人。
逃げる事が出来ない町の住民も戦ってくれるようだが、戦った経験が無く武器もないので戦力としては期待出来ない。
それでもゲンジロウさんは逃げないで騎士としての使命を全うしたいらしい。
ヤバい奴だと思っていたけど、真面目でいい奴じゃないか。
それと転生者ではない事には驚いた。
ゲンジロウさんは転生2世だった。
親が転生者だから日本人のような名前だが、特別な能力は持っていないらしい。
敵は1万匹近い魔獣の群れだ。
8人の騎士と俺達だけでは戦力不足だな。
俺たちは宿に戻り、今後の対応について話し合う事にした。
「敵が多くてもアニキのエナドリがあれば楽勝ですぜ」
「俺もそう思う。だから戦う仲間全員にエナドリを配って欲しい」
「でもどうやって説明するの? 町のみんなはエナドリの使い方を知らないでしょ?」
「そんなもん説明すりゃいいんだよ! 飲んだらぐぅあってなるってな!」
「そんな説明じゃ伝わらないでしょ。戦いが始まる前に飲んで効果が切れても意味が無いと思うし、戦いが始まったら飲み物を飲んでいる余裕は無くなるわよ。仲間の大半は戦い慣れていない普通の人なのよ」
「アリスの言った通りだな。町の住民が飲んだ時にエナドリの効果がどれだけ持続するか分からない」
「それならオレがエナドリを布教しますぜ! エナドリ最高ってな!」
エナドリを布教か……その手があったな。
ここはアリスに任せよう。
「アリス、エナドリを布教してくれ」
「へっ? エナドリを布教? 私が?」
「そうだアリスに任せる」
「なんでですかアニキ! オレじゃダメなんですか?」
「ダメだな。フェードが言っても伝わらない」
「悔しいぜ……」
「残念だったねフェード。私の力を見せてあげるわよ」
フェードが落ち込んでしまったが仕方がない。
彼の態度では町の住民の信頼を得る事は出来ないと思うからね。
アリスが乗り気なうちにサッサと準備を進めよう。
作戦の詳細を聞いたら嫌がると思うからね。
話を終えアリスが部屋を出て行った後、俺は自分の能力の把握をする事にした。
今の所、エナドリ四天王の4種類を生み出せる事は分かっている。
効果も抜群だ。
でも一日に出せる本数までは把握出来ていない。
さて、どれだけ出せるだろうか?
俺はレイジング・ミノタウロスとマイティ・サイクロプスを出そうとしたが同時には出せなかった。
エナドリを出せるのは1本づつみたいだな。
出したエナドリは消えないから、事前に出していれば問題はないとは思うけど、複数本同時に出せないのは少し不便だな。
後は連続で何本出せるか試してみよう。
俺は次々にエナドリを出し続けた。
1時間後、部屋いっぱいのエナドリを見て満足した。
1日に出せる本数に制限は無いみたいで安心した。
これなら町の住民全員にエナドリを配る事が出来る。
相手が1万匹の魔獣の群れであっても負ける気がしない。
明日の作戦実行が楽しみだな!




