115話 新たな目標
魔物の背中から宝玉が取り出された。
「これが魔物のコアでしょ。潰させてもらうよ。これを壊せば魔物化も解けるよね?」
セレスティナが宝玉を握りつぶした。
「ありえない! なぜマルバダスの宝玉を取り出せるの!」
「なんででしょうね。さて、貴女からは何が取り出せるでしょうかね?」
セレスティナがギルド職員のオリビアに詰め寄った。
「ち、近づくなバケモノ!」
「化け物は貴女だと思いますけど」
「あ、ああっ……」
オリビアが後ずさる。
「おらっ!」
ゴスッ!
フェードがオリビアを殴り倒した。
「何をするんですかフェードさん」
「何をじゃねぇだろセレスティナ! こいつが死んだら魔物化したコイツを元にもどせねぇだろ!」
フェードの言う通りだ。
マルバダスの宝玉を取り出してから魔物が動くそぶりは見せないが、3人の冒険者達が合成された状態は解除されていない。
こいつから元に戻す方法を聞き出す必要がある。
「冒険者達を元に戻す方法を教えろ」
俺はオリビアを引き起こした。
「はははっ。そんな方法あるわけないでしょ! 合成した人間が元に戻る方法があると思っていたの! 手遅れなのよ! 早く殺しなさいよ! そのバケモノを!」
「ふざけるな!」
ギャリーがオリビアを殴り飛ばした。
「こいつらはなぁ! ただの冒険者じゃねぇんだよ! 冒険者ってやつはな、富と栄光を求めてなる奴が多い。でもなコイツらはフトマ国を良くしようと報酬が少ない依頼でも受けていた。こんな風に終わっていい奴らじゃねぇんだよ!」
「私には関係ないわよ! 気分が良いわ! アンタの絶望した顔が見れてね!」
「アニキ! 切り刻んででも元に戻す方法を吐かせてやりますよ!」
フェードとギャリーがオリビアを問い詰める気持ちは良くわかる。
でも今のやりとりを見て気づいた事がある。
オリビアは俺たちをからかう為に元に戻す方法を教えないのではない、本当に元に知らないのだろう。
こうなったら方法は一つだけだな。
「セレスティナ。合成された3人を分断する事は出来るか?」
「出来ない事はないけど、いいのかい?」
「頼む。他に方法がない」
「分かりましたよ。こんな感じでいいですかね」
セレスティナが魔物化した冒険者に触れて体を分断した。
予想通りだな。
次元を分断する力であれば合成された体を分断出来ると思ったんだよね。
3人の状態を確かめたが息があった。
これで一応助けられた事になるな。
でも合成時に失った体の一部は元には戻らない。
冒険者として活動する事は難しいだろうな。
「助けてくれてありがとな嬢ちゃん」
ギャリーが泣きながらセレスティナに感謝した。
「嬢ちゃんじゃないんだけどね」
「いいじゃないか、そういう設定なんだからさ」
「どうせ僕は聖女様ですよ。でも苦労すると思いますよ。僕には失った手足を元に戻す能力はないですから」
「そうか。セレスティナでも無理なのか」
「アニキなら……」
「フェード、それ以上は言わなくていい」
俺はフェードの言葉を遮った。
分かっているさ。
俺なら失った手足を元に戻す事が出来る。
正確に言うと過去の俺であればだ。
エナドリ四天王の一つ、白銀滋養霊液であれば可能なんだ。
でも今はダルマシウス神に能力を奪われて使えない。
どうにかして力を取り戻す事が出来れば、本当の意味でこの冒険者達を救う事が出来るだろう。
新しい目標が出来たな。
だが、今はフトマ国に巣食うマルバダスの使徒を撃退する方が先だな。
「こいつの処分はギャリーに任せる。俺は王城に乗り込んでレイリックと対決する」
「こいつの事は分かったけどさ。レイリックさんと対決するってどういう事だ?」
「ギルドの防衛機構を含めてギルドマスターのレイリックが知らないはずがない。こいつらを操っているのはレイリックだろう」
「まさか! レイリックさんがそんな事をするはずねぇよ! だってあの人こそフトマ国を一番大切に思っている人なんだぜ!」
ギャリーがレイリックを擁護する。
レイリックは粗野で他人を呼び捨てにしているギャリーが、さん付けで呼んで信頼するくらいの男なのだな。
でもレイリックが何かを隠している事は分かっている。
黒幕かどうか分からないが、直接対決する以外に真実をしる方法はないだろう。
「ギャリーの気持ちはよく分かった。でもレイリックと対決しなければ分からない事がある」
「そうか……頼むぜ。あの人を」
「やっほー。事件を解決した? こっちの方は完了したよ。全員は助けられなかったけど」
アリスが入室してきた。
「これはどういう状況なんだ。なんで薔薇の乙女の3人が倒れている?」
「ひどい! フェリス治療出来る?」
「残念ながら無理です……」
アリスと一緒にきたライル、ララ、フェリスの3人が倒れている冒険者達を見て衝撃を受けている。
4人に状況を説明した後、今後どうするか全員で相談した。
オリビアはこれ以上余計な事をして欲しくなかったから冒険者ギルドの地下牢で拘束する事にした。
そして俺たちとライル達4人だけで王城に乗り込む事にした。




