114話 悲劇の魔物
通路を進んでいくと通路の脇に死体が転がっているのが目に入った。
死体には槍で串刺しにされて出来たと思われる穴が空いていた。
おそらくギャリーがやったのだろう。
でも死因は別にあると思う。
今死んだにしては死体の損壊が激しいからだ。
「こいつはひでぇ。死んでから時間が結構経っているみたいっすよ」
「そうだな。気をつけろフェード。敵は死体を操っている可能性が高い」
「死霊使いですか。冒険者ギルドが堂々と死体を操っていたら大問題ですよね〜」
死臭が漂っているのにセレスティナは気楽な様子だ。
「セレスティナ、どこから襲撃を受けるかわからないから気をつけろ。こいつらは元冒険者だ。実力は高いと思う」
「どうかな。さっきのアレがナンバーワンなんでしょ? 転生者の僕たちが負けるとは思えないけど?」
「油断大敵だ。先代の勇者は裏切りで敗北している」
「でもラウルは勇者より強いんでしょ? 心配しすぎだと思うけどね」
「アニキは完璧主義なんだよ。グダグダ言ってねぇで先に進むぞ」
フェードが慎重に廊下を進んでいく。
この先は物置か?
フェードは二階への階段ではなく物置部屋に入室した。
「ここに何かあるのか?」
「分からないっす。ギャリーって奴の気配を辿っただけっす。少し室内を探ってみます」
フェードが棚や床を念入りに探り始めた。
隠し扉でもあれば良いのだけどな。
「敵さんが来たけどどうする?」
「セレスティナは余裕なんだろ?」
「当然ですよ」
「なら任せた」
「はいはい、それではやりますよ」
セレスティナが敵の方に手を向けた。
カッ!
手のひらから光が放たれ敵を焼き払った。
眩しいな。
この力は神に成り変わったアインバダルと同じだな。
セレスティナが使えるのは空間を操る力だけではないって事か。
いったいどれ程の力を秘めているのだろうな。
「ラウルさん、驚いているのですか?」
「あぁ、驚いているよ。それほどの力を持っていればバンダニギ聖王国に従う必要はなかっただろ?」
「ラウルさんは分かっていないなぁ……そういう問題じゃないんですよ」
「ならどういう問題なんだ? 聖女である事を強要する奴らなんて、全員ぶっ飛ばせば良かっただろ?」
「国一つ滅ぼすって事ですか? そこまで非情ではないですよ」
「そこまでは言ってはいないんだけどな。力を見せつけてビビらすだけで十分だと思うけどな」
「見つけたぜアニキ! 隠し階段だ!」
床の一部がめくれて地下に降りる階段が出てきた。
ギャリーはここから地下に降りたのだろう。
少し時間を使いすぎたか。
ギャリーが全て解決してくれるなら問題はないが嫌な予感がする。
地下に降りて通路を進んでいくと爆発音が聞こえた。
これは攻撃魔法が炸裂した音だな。
槍使いのギャリーは魔法を使えなさそうだったから、魔法を使っているのは敵側の人間だろう。
通路を曲がり、扉を開けて入室するとギャリーが膝をついていた。
服装の所々が焼けているので、火炎系の魔法攻撃を受けたのだろう。
「ラウルか! くそっ! こいつ手強いぜ!」
ギャリーが指差した先には……これは人間なのか?
そこにいたのは三人の人間が繋ぎ合わせられたような魔物だった。
「ギャリー、アイツはなんだ?」
「分かんねえよ! なんで薔薇の乙女の奴らがバケモンになってんだよぉ!」
ギャリーが取り乱しながら目の前の魔物に攻撃をした。
武器の腕はギャリーの方が上で魔物に傷をつけたが、すぐに回復呪文で回復してしまう。
魔物が手にした剣の一撃は受けてはいないが、魔法による攻撃を避けきれていない。
なるほど、剣士と魔法使いと神官を組み合わせた最強の魔物って事か。
趣味が悪いな。
「はっはっは! 早く敵を始末しなさい! 醜い化け物!」
ギルド職員のオリビアが笑いながら魔物に指示を出した。
「なんでなんだよオリビア! こいつらは仲間じゃないのか!」
「仲間ですよ。だから願いを叶える為に協力してあげたんですよ! 憧れのナンバーワン腕冒険者を超えるって願いを叶える為にね!」
「こんな事願ってねぇだろ! こいつらは冒険者になりたかったんだ! バケモノになりたかったんじゃねぇ!」
「いいですね。ギャリーさんもバケモノって呼ぶのですね。私。気に入らななかったんですよね彼女達。バケモノ扱いされて気分が良いわ」
「ちくしょおおおっ!」
ギャリーが泣き崩れた。
仲間が魔物にされて悔しいよな。
あとは俺がやる。
俺はギャリーを庇うように立った。
「またあなたですか。生意気なあなたも一緒に死んで下さい。私の最高傑作にね!」
「それはない」
俺はライジングハーブを飲み干した。
怒りのせいか、いつもより力が増したような気がする。
「おとなしく眠ってくれ」
魔物が魔法を放ったが歩みを止めない。
振り下ろされた剣は拳で砕いた。
そして俺の拳が魔物の腹部にめり込んだ。
ドスン!
魔物が倒れた。
出来れば助けてやりたい。
でも今の俺には助ける力がない。
止めを刺すしかないのか。
「あとは僕がやるよ」
セレスティナが魔物の背中に触れた。




