112話 冒険者ギルドの疑惑
「おとなしくしてもらおうか?」
冒険者のリーダーが殴りかかってきた。
どう見ても剣士なのに剣を使わないのか?
俺は相手の攻撃を逸らして反撃をした。
だが俺の反撃は当たらなかった。
なかなかやるな。
フェードの方も新たに現れた冒険者と戦いを始めていた。
「ちぃっ! こいつしつけぇよ!」
フェードは槍使いの冒険者の攻撃を避けるのに必死だった。
敵の槍使いの腕前はかなり凄いようだな。
フェードが追い込まれているけど、敵は穂先とは反対の方を使っているから大怪我をする心配はなさそうだ。
どうやら、この冒険者達は俺たちを殺す気はないようだな。
だからといって、負けてやる必要はないのだけどな。
敵の冒険者と拳を交えていると、後ろで控えている魔法使いが杖を向けている事に気がついた。
ここで魔法攻撃を喰らったら苦戦する事になる。
「フェード、ミステリアスミルクを使え!」
「了解だアニキ!」
俺とフェードはミステリアスミルクを飲んだ。
敵の冒険者達の動きが一瞬止まる。
怪我をしていないのに回復薬を飲む事はないから、強化薬を飲んだのだとでも思ったのだろうか?
「魔法準備出来ました。拘束します!」
敵の魔法使いの杖から光が放たれると同時に、剣士と槍使いが後方に退避した。
俺とフェードの体が淡い光につつまれた。
「なかなかの腕前だったが、これで終わりだな。なんで冒険者ギルドを襲撃したのか教えてもらおうか?」
剣士の男が俺に向かって話しかけてきた。
敵はどうやら拘束魔法が効いていると勘違いしているようだ。
本当はミステリアスミルクの効果で全く効いていないのだけどな。
フェードに目配せをすると、フェードも目で答えた。
敵が攻撃ではなく話をしたいみたいだから、魔法を食らって動けないふりをして話をしてみようではないか。
「俺が冒険者ギルドを襲撃したのではない。冒険者が西地区を襲撃しているのだろ?」
「どういう事だ? 私たちが王都を荒らす事はない。特に西地区は行く理由がない。冒険に出るには南地区を通ってドルマリア国方面に出るか、北地区を通ってボムリアからダルマンド大陸へ渡るのが普通だからな」
「普通はそうかもしれないな。だがマルバダスの使徒を討伐する名目で、西地区で王国軍と一緒に略奪をしているだろ?」
「なぜ私たちの任務を知っている? 確かに私たちはマルバダスの使徒の討伐の特殊任務を受けている。だが依頼を受けたのは一部の冒険者たちだけだ。実力がない冒険者達ではマルバダスの使徒に殺されるだけだからな。どういう事だ?」
剣士の男がギルド職員に問いかけた。
「ライルさん。襲撃者に騙されないで下さい! この人たちがマルバダスの使徒かもしれないのですよ! エリックさんとサマンサさんを殺したのもこの人たちです!」
「この男が本当にエリックとサマンサを殺したのだろうか? この男は丸腰ではないか」
「ギルドからの指示です! 早くその男を殺してください!」
「ギルドのねぇちゃんよ。いつから俺たちに指図するほど偉くなったんだ?」
槍使いの男がカウンターに槍を叩きつけた。
バン!
大きな音がなったがギルド職員は動じなかった。
「ギルドから仕事の斡旋を受けてはいますが、冒険者とギルドに上下関係はありませんよね?」
俺たちに拘束魔法を使った魔法使いもギルド職員の指示には従わないようだ。
「それは通常の状況での事です。直接ギルドが襲撃を受けているのですよ? 緊急時はギルドの指示に従う契約です!」
「本当に緊急事態であればその通りかもしれません。でも敵はララさんの魔法で拘束されているのですよ。ダルマシウス教の神官である私の目の前で無駄な殺生を行わせません」
ギルド職員は俺たちを殺す事を諦めていないが、冒険者の神官は俺たちを殺す気はないようだ。
「ライルさん、ギャリーさんに槍を下げるように言ってください。あなたがリーダーでしょ?」
「ギャリー、槍を下げろ」
「ふん」
槍使いの男が不機嫌そうに槍を引いた。
「私はフトマ王国のナンバーワン冒険者のライルだ。君たちの目的はなんだ?」
剣士の男が自己紹介をしたので、俺も名乗っておこうか。
「俺はラウル。ギリス王国ナンバーワン冒険者のローレインが結婚して引退したから、一応俺が最高ランクの冒険者って事になっている。さっきも言ったが、俺たちは西地区の住民の願いを聞いて略奪が事実か確かめにきただけだ」
「なるほど、君があのティーパーティーのリーダーのラウルか。ブリージラリアス大陸でも噂になってるよ。そういう事情なら西地区に行って確かめてみるか。あそこの調査は軍の管轄だったから、しばらく行ってなかったからね」
「ああっ! 本当に使えない奴らなんだから! これ以上私を困らせないでよ! 全員まとめて死んでもらうわよ!」
ギルド職員が急にキレ出した。
「ははっ! 俺たちをどうやって殺すんだい? 俺たちはフトマ国最強の冒険者なんだぜ?」
槍使いのギャリーが再び槍を向けたが、ギルド職員は動じていない。
切り札でもあるのか?




