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110話 フトマ国軍との戦い

 三時間くらいかかったが、みんなと一緒にエナドリを西地区の住民に配り終えた。

 エナドリで元気になったおかげで街に活気が出てきた。

 これなら大丈夫だろう。

 マルバダスの使徒が原因の内乱で荒れた街も復興するはずだ。

 あとは元々の目的だったマルバダスの使徒の情報収集をするだけだ。

 俺たちは歩きながらすれ違う人たちから情報を得ようとした。

 だがマルバダスの使徒の情報は得られなかった。

 住民達がよそ者である俺たち相手に口を閉ざしているのではない。

 エナドリを配ったダルマシウス教の聖女一行として受け入れられているから積極的に話しかけてくるくらいだ。

 それでもマルバダスの使徒の情報が出てこないのは、フトマ国軍と冒険者に対する恨み言しか出てこないからだ。

 フトマ国軍や冒険者は見たことも悪さもしていないマルバダスの使徒を捜索するという名目で略奪をしているそうだ。

 マルバダスの使徒疑惑で拘束されたマーティン将軍やギルドマスターのレイリックの話と違う。

 これではクラーケンの仕業といって海賊行為を行っていたブリージラリアス大陸への定期便の運行会社と同じではないか。

 兵士や冒険者が勝手に略奪をしているのか?

 それともマーティン将軍やレイリックが裏で指揮をしているのか?

 嘘をついているのは一体誰なんだ?


「フトマ国軍の人間狩りだ!」


 住民達が大声を出しながら逃げ始めた。

 フトマ国軍の人間狩りか……先に来たのは冒険者ではなくフトマ国軍のようだな。


「邪神マルバダスを信奉する悪の使徒を出せ! 匿った者は同罪だ! そこの娘! 我々を見て怯えるという事はやましいことがあるのだな。連れて行け!」


 卑しい顔をした兵士たちが少女に向かって集まってきた。

 愚かな奴らだ。

 マルバダスの使徒を捕まえる為に真剣だったり、脅されて仕方なくやっているなら少しは大目に見てやったんだけどな。

 もう止めないからな。

 紫の雷が目の前を横切ったと同時に兵士たちが血飛沫を上げて倒れた。


「邪悪なのはテメェらだろ? アリスゥ、テメェはすっこんでろよ!」

「何言ってるのよフェード? 一人で戦うつもり?」

「そうだよ。一応聖女だろうが! 殺し合いなんてすんなよ! オレは騎士やってた頃に悪党をぶっ殺してからよ!」

「私だって冒険者よ! 対人戦の覚悟はあるわよ!」

「揉めてるみたいですね。僕が消しましょうか?」


 セレスティナがおぞましい気配を出した。

 揉めていたフェードとアリスだけでなく、フトマ国軍の兵士たちも動きを止めた。

 場を支配する邪悪な空気。

 セレスティナがバンダニギの聖女だって知らなかったら、俺ですらマルバダスの使徒だと思ってしまう程の悪意。

 このままにしていたら、せっかく復興ムードで盛り上がっている西地区の住民達の気分が落ち込んでしまう。

 ここは俺が全てを吹き飛ばしてやる必要があるな。

 俺は皆の前に出てライジングハーブを取り出した。

 そして皆に見えるように一気飲みした。


「ぷはぁ! うめぇな! ダルマシウス教の聖水は! 元気が出てきたぜ! なんでも出来そうな気分だぜ!」

「な、何を言っているんですかラウルさん?」


 セレスティナが戸惑っている。

 自分で作ったエナドリなのに、まだダルマシウス教の聖水って言っている意図が分からないようだな。

 別にかまわないさ。

 エナドリを飲めば元気になれて、なんでも出来るって西地区の住民達に伝われば良いだけだからな。


「なんだこの男は? こいつらは()()のマルバダスの使徒かもしれないぞ! 全員殺害するのだ!」


 兵士のリーダーの失言に住民達が怒りを見せる。

 マルバダスの使徒ではないと分かっていながら西地区の住民たちからら略奪していたと白状したのだ。

 もう遠慮はいらない。

 本当の正義を見せてやる!


「吹き飛べ! 全ての悪よ! エナドリアッパー・インフィニティ! うぉぉおおおおおおお!」


 敵を倒し尽くすまで止まらない無限に続く連続アッパーだ!

 俺はガンガン敵の兵士をアッパーで打ち上げていった。

 もちろん王城へ向かってだ。

 これは俺流の宣戦布告だ。

 誰が黒幕か分からないが許しはしないさ。

 全ての敵兵士を吹き飛ばしたあと言った。


「聖水飲んで暴れたらスッキリしたぜ!」


 住民達から歓声が上がる。

 これでいい。

 いくら悪事を働いたフトマ国軍とはいえ、目の前で虐殺されたら気分は悪いだろう。

 だから全員アッパーで吹き飛ばしてやった。

 遠くまで吹き飛ばしたから、兵士たちがどうなったか見えないけど、さすがに全員死んでいるだろう。

 これで死なないのは勇者だけだ。


「さて、次は冒険者達だな。西地区の住民の話を信じるなら、奴らもぶっ飛ばす必要があるだろうな」

「了解だアニキ。オレ達を襲撃してきたザコも冒険者だったからな。他の奴らも同罪だろうさ!」

「それが本当なら許される事ではないわよ。冒険者の特権を利用して略奪するなんて……」

「アリス、嘆いている暇はない。奴らは俺たちでぶっ飛ばす」

「そうよね。私たちなら国が相手でも負けないからね!」

「大した自信ですね。でも本当に住民達を救う為に冒険者と戦うのですか?」

「同然だろ?」

「ノブレス・オブリージュって事ですか?」

「なんだソレ? エナドリ飲んで悪い奴ぶっ飛ばしたら気分がいいからに決まってるだろ?」

「だよなぁ。だからオレはアニキについて行くんすよ!」

「そういう事よセレスティナ」

「そういう事ね……」


 セレスティナは納得していないみたいだな。

 めんどくさい奴だな。

 せっかく凄い能力持ってるんだからさ、細かい事考えないで気楽に生きたらいいのに。

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