109話 住民を助ける
「ランドルフ、フトマ国の何を知っている?」
「闇だ」
「闇とはなんだ? 具体的に言ってくれなければ分からないぞ」
「言っても分からないだろう。西地区の住民街と東地区の冒険者ギルドに行ってみるがよい」
賢者ランドルフからこれ以上の情報は得られなそうだな。
面倒だな賢者って奴は。
はっきり言えば良いのに勿体ぶった助言のしかたをする。
「分かったよランドルフ。ソレータムの方は頑張って対処してくれ」
「それはどうだろうか。狙われているのはワシだけではないのだぞ?」
「知ってるよ。さぁ行くぞ」
俺はランドルフに手を振った後、裏路地を通って大通りに戻った。
「ねぇラウル? これからどうするの?」
「予定通り西地区に向かうぞ。ランドルフも見てみろって言っていたからな」
「なぁアニキ。本当にランドルフの言う通りにすんのか? 罠かもしれねぇっすよ」
「罠なら好都合だろ? 蹴り飛ばせばいいだけだからな」
「さすがアニキ! びびってたオレが間違ってやした」
「ラウルらしいわね」
フェードとアリスが納得したので、西地区へ向かって歩き出した。
「いいですね。無敵の転生者って感じで」
セレスティナが俺の隣に並んだ。
「そうか。俺は無敵ではないぞ。無敵なのはエナドリ方だ」
「エナドリねぇ……前世で飲んだ事はあるけど、そんなに効果あったかな。健康に悪いイメージしかないんだよね」
「エナドリは使い方次第だ。飲み過ぎれば健康に悪いけどな、ここぞという時に飲めば自分史上最高の力が出せるんだ」
「ホントかな。本当は別の能力を隠しているんじゃないの?」
「それはないさ」
「そうですか。教えてくれないなら調べるだけですけどね」
セレスティナはエナドリの力を信じてくれないようだな。
自分が実力を隠していたから、俺も能力を隠しているとでも思っているのかもしれない。
でもその方が都合が良いのかもしれない。
セレスティナは完全に味方になったとは言い切れないからな。
最初に出会った時の弱気な態度が嘘のような強大な能力を隠していたからだ。
警戒しておく方が良いと思ったので、気にせず西地区へ向かって歩き続けた。
ここが西地区か。
あたりを見回すと、大半の家屋が崩壊していた。
通りの脇では多くの人が座り込んだり倒れていたりしている。
「アニキ……なんかやばいっすね」
「そうだな。どうやらアリスの出番のようだな」
「えええっ! また私がやるの?」
「当然だ。他に任せられる奴はいない」
「やだぁ。そんなに期待されたら頑張っちゃうわよ」
アリスが俺の肩をバンバン叩く。
よく分からん行動だが、喜んでやってくれるなら問題はない。
「何をやるのですか?」
セレスティナが不思議そうな表情をしている。
「アリスが聖女としての実力を発揮するだけっすよ」
「そういう事だ。セレスティナ、メガブタリウスを出してくれ」
「聖女としての能力を発揮する? あの回復魔法をつかうのですかね……はいっ、出しましたよ」
俺たちの前にメガブタリウスが現れたので、乗り込んでエナドリの材料を大量に取り出した。
「ブタリウス、ライジングハーブをたくさんつくるぞ!」
「ブッ! ブゥ〜!」
ブタリウスと一緒にライジングハーブを大量作った。
これで準備完了だ。
アリスがメガブタリウスの上に飛び乗った。
「私はダルマシウス教の聖女アリス。神託を受けて皆さんを救いにきました。皆さんに生きる力を与える聖水を授けるので集まって下さい」
アリスに住民の視線が集まった。
良かった。
フトマ国でもダルマシウス教の名前は効果があるみたいだな。
「飲み物くれるの?」
子供が寄ってきた。
「おう! こいつを飲んでみな! スカッと元気になれるぜ!」
フェードが子供にライジングハーブを手渡した。
「おいしい! ありがとうお兄ちゃん!」
めずらしいな。
フェードが照れている。
「タダでくれるのか?」
「俺にもくれないか?」
ライジングハーブをタダでもらって元気になった子供をみた大人達が集まってきた。
「焦んなよ! アニキのエナドリは無くなんねぇからさ!」
「その通りです。ダルマシウス神の恵みに限りはないのです!」
フェードとアリスの言葉を聞いた人々が次々にライジングハーブをもらって元気になっていった。
「なにボケっとしてるんだ? セレスティナも配ってきてくれ」
「僕もですか? アリスさんとフェードさんだけで十分だと思いますけど」
「やっとけよ。俺たちの仲間でいたいならさ」
「そういう言い方はずるいですよね」
セレスティナが不機嫌に言った。
納得がいかないようだが、ライジングハーブを配り始めてくれた。
ライジングハーブを受けとった人々が次々に感謝の言葉を伝えてくれる。
「こんなの偽善だと思うんですけどね。全ての人を救えるわけでもないのに……」
セレスティナがつぶやいた。
言っている事は否定的だが、少し嬉しそうに見えた。
いいもんだろ?
誰かの役にたって感謝されるってのはさ。
俺は心の中でつぶやいた。




