105話 セレスティナの推理
マーティン将軍が用意してくれたのは来賓用の部屋だった。
一人一部屋か、ずいぶん手厚い扱いだな。
初対面の冒険者を城に住まわせるのは危険だから、普通は王都で宿を借りる事になるのが普通だと思うんだよね。
ギルドマスターのレイリックが俺たちを有名冒険者だと認めたからか?
レイリックは信頼されているのだな。
俺は謁見後のセレスティナの態度が気になったから、仲間全員を部屋に集めた。
「セレスティナ、フェードの何がお手柄なんだ?」
「挑発して苛立たせるような事をスラスラと言うからですよ。天然であんなに苛立たせる事を言えるなんて凄いですよね」
「ケンカ売ってんのか?」
フェードがセレスティナの胸ぐらを掴んだ。
「ケンカなんて売ってないですよ。素直に凄いと思ったんですよ。普通は王に対して侮辱なんて出来ないですから」
「何が侮辱なんだ? フェードは普通に話をしていたと思うが?」
「ラウルさんも凄いですよね。気づいていなかたんですか?」
「何をだ?」
「フトマ国はマルバダスの使徒の侵略を受けて困っているんですよ」
「そんな事は知っている。それがどうした?」
「はは〜ん。私は分かっちゃったわよ」
アリスにはセレスティナが言いたい事が分かったようだ
「どういう事だ?」
「国の総力を使って倒そうとして返り討ちにあったマルバダスの使徒を簡単に倒しちゃったって言った事が侮辱しているって事でしょ?」
「その通りです。悔しいでしょうね。宿敵であるマルバダスの使徒を、ただの冒険者にあっさり倒せるって言われたのは」
「そんな事かよ。つまんねぇ」
フェードがセレスティナを離した。
「事実を言っただけだからな。そんな事が侮辱になるとは思わなかったよ。それで何がお手柄なんだ?」
「敵の正体が分かったからですよ」
「ちょっと待って! 敵の正体が分かったって事は、あの場に黒幕がいたって事?」
アリスの言う通りだ。
謁見中に敵の正体が分かったって事は、フトマ王、マーティン将軍、ギルドマスターのレイリックの誰かがマルバダスの使徒って事になるぞ。
「よく気づきましたねアリスさん。その通りですよ。フェードさんの余裕で倒せる宣言を聞いた3人の反応を見ましたか? フトマ王は苦虫を噛み潰したような顔をしてましたよ。よほど悔しかったのでしょうね。マーティン将軍は笑顔でしたよ。部下の仇を討てるのが嬉しかったのでしょうね。レイリックさんは……一瞬無表情でしたが、驚いたような表情をみせましたね。なんで表情を作ったんでしょうね?」
「セレスティナはレイリックを疑っているのか?」
「疑いではないですよ。断定です。ギルドマスターのレイリックはマルバダスの使徒です」
セレスティナが自信満々に言い切った。
そんな一瞬の表情の変化だけで敵と断定して良いのか?
レイリックが死んだ冒険者達の話をしていた時の表情に嘘はなかったと思う。
明確な証拠もないのに、レイリックをマルバダスの使徒だと断定する事は出来ない。
「分かったよセレスティナ。でも証拠が揃うまでは手を出さないぞ」
「ラウルさんは甘いですね。敵なんですよ。今すぐ討てば良いのに」
「証拠もないのに、いきなりギルドマスターを襲うのは犯罪だぞ」
「そんな事を気にしていたら敵を討ちもらしますよ。神罰で済ませば良いではないですか? 僕はいちおう聖女なんですよ」
「そういうやり方はよくない」
「オレもアニキに賛成だぜ。そういうのは悪党のやり口だ」
「そうよね。本物の聖女なら襲撃しようなんて言わないわよね。私のようにね!」
フェードとアリスもレイリックを襲撃する事には反対のようだ。
「そうですか。寝首をかかれない様に気をつけて下さいね。僕だけ生き残っても面倒ですからね」
セレスティナが自分の部屋に戻って行った。
ブタリウスもセレスティナの後についていった。
セレスティナを見張るよう言った俺の指示を守っているようだ。
「セレスティナの言っている事を全て信じたわけではないが、今夜襲撃を受ける可能性は高い。襲撃に備えておいてくれ」
「大丈夫ですぜ。オレは襲撃者なんかに負けねぇからさ!」
「私は魔法障壁を張っているから大丈夫よ」
「そうか、一応ライジングハーブを渡しておくよ」
俺はライジングハーブを二人に渡した。
エナドリの在庫が少なくなってきたな。
材料を持っているセレスティナは部屋に戻ったから、明日エナドリを補充しよう。
フェードとアリスも部屋に戻って行った。
さて、ゆっくり休むとするか。
俺はベッドで眠りについた。
――深夜。
気配に気づいて起きた。
ちょうど窓から剣を持った男が部屋に侵入するところだった。
本当に襲撃を受けるとはね。
ここは王城だぞ。
誰かの手引きがなければ簡単に侵入など出来ない。
セレスティナの言う通りレイリックが敵とは断言出来ないが、城内に敵がいる事には間違いないな。




