10話 ユウマとの最後の対決
怒るアリスをなだめながら村に戻った俺たちは、村長からグリーンウルフ討伐の報奨金を受け取った。
これでブタリウスの装備が買える。
俺は革製のバッグを買ってブタリウスに装備し、旅に必要な道具をバッグの中に詰めた。
これで冒険の準備が整った。
さて、次の町に向かって旅立つとするか!
目的のペプリカントの町までは馬車で1週間近くかかる。
でも、この村には馬車がない。
スピーディー・ケンタウロスを飲めば早く進めるが、さすがに一日二日で辿り着ける距離ではない。
自分一人であれば徹夜で走り切るけど、フェードやアリスにはムリだろう。
仲間にムリをさせるのは良くない事だ。
だから隣町のダルダルシアに立ち寄る事にした。
ブタリウスにテントを積んでいるから野宿しても問題ない。
ゆっくり景色を見ながら街道を進んだ。
異世界にも向日葵があるんだな。
あれはタカかな?
鳥は詳しくないんだよね。
畑にはカカシが立っている。
異世界も前世を同じ対策してるんだなぁ。
カカシだけじゃなくて勇者まで立ってるよ。
木々も色々な種類があって面白いな。
転生前は気にかけた事はなかったけど、こうしてゆっくり見てみると和むよね。
「待てやエナドリ野郎! 俺を無視するな!」
あっ、勇者が話しかけて来た。
「やぁユウマ。未確認生物なのに頻繁に現れるのは何でだ?」
「誰がUMAだ! 私はユウマだ!!」
「アニキ、アイツなに言ってんすか?」
「言っている意味が分からないわね。あの変態賢者よりマシだけど」
フェードとアリスには伝わらない話だったな。
それにしても、ユウマは何で毎回俺たちの前に出てくるんだ?
いい加減俺たちの事は忘れて勇者として無双すれば良いと思うよ。
エナドリ以外に負ける事はないはずだからな。
「何をしに来たユウマ?」
「雪辱を晴らしにきたに決まってるだろう。今日こそお前を倒して見せる!」
「お前だと! 舐めてんのか、このポンコツ勇者ぁ!」
「フェード、仕方がない事だ」
「何でですかアニキ?! コイツはアニキの事をお前って言ったんすよ」
フェードは俺がユウマを庇った事が納得出来ないようだ。
でもユウマが俺をお前って言った理由に心当たりがある。
「ユウマ、俺の名前を言ってみろ」
「名前? 知らない。そもそもお前名乗ってないだろ」
「はぁ、アニキの名前を知らないだとぉ。コイツやっぱダメですわ」
「そういえば私たち名乗ってなかったわね。私はダルマシウス教の神官のアリスです」
「何で名乗るんだよアリス! こいつはアニキの敵だぞ!」
「いや、敵という程の相手じゃないさ。逆に少し親しみがあるくらいだ。ユウマは故郷が一緒なんだよ」
「アニキと故郷が同じだって?! 失礼しやした。オレはフェードです」
フェードがユウマに頭を下げた。
「な、何を言っている?」
ユウマが狼狽えている。
攻撃しようとした相手が自己紹介を始めたら混乱するか。
でも親しみがあるってのは嘘ではない。
前世が一緒だからね。
この世界で前世の話を出来る相手は他にはいないんだよ。
王都では横柄な態度だったからぶん殴ったけど憎んではいない。
「俺はラウル。エナドリを愛する男だ。宜しくな」
手を差し出したが、ユウマは握手をしようとしない。
「ブッブブッ」
「な、なんだコイツは?!」
ブタリウスがユウマのズボンの裾をくわえて俺の方に連れてこようとしている。
「こいつはブタリウス。俺の仲間だよ。体力があって荷物を運べるし、性格が良いんだ。羨ましいだろ?」
「はぁ? お前……じゃなくてラウルは豚を仲間にしてるのかよ。普通仲間にするなら魔法使いとか僧侶だろ? 信じられないよ」
「それは勇者の仲間だろ? 俺は勇者じゃないんでね。親しい奴が仲間だ」
「親しいやつが仲間か……私にはいないな」
ユウマが落ち込んだ。
彼には仲間がいない様だな。
転生して勇者としてもてはやされていたのに、俺にやられただけで見捨てられたのだろう。
たしかにユウマはチート能力を身に着けて調子に乗っていた。
俺はユウマだけが悪かったのではないと思っている。
ユウマの力を利用しようとしたズルい大人がいたのだろう。
おだてて調子に乗らせていたのに、都合が悪くなった途端に責任をなすりつけるのは卑怯だよな。
「なぁユウマ。俺たちの仲間にならないか?」
「私がラウルの仲間に?」
「アニキ! 何でコイツを仲間に誘うんだ?」
「フェードは黙っていてくれ。ユウマ、仲間になる気はないか?」
「俺がラウルの仲間になるか……」
ユウマが天を仰いだ。
沈黙が流れる。
どうするユウマ?
俺はどういう決断をしても構わないぞ。
「それは出来ない……」
ユウマがぽつりと言った。
「なんだとテメェ! アニキが誘ってんだぞ!!」
「止めなさいフェード。ラウルとユウマが決める事よ」
「そうか、それは残念だな」
「色々考えた。だから断る事にした。君は勇者ではないのだろう?」
「そうだよ。俺はエナドリが好きな一般人だ。勇者にはならないさ」
「だよね。だから私は一緒にいけない。私は今度こそ勇者になるよ。一人でもね」
「そうか。ユウマにも仲間が出来る事を祈ってるよ」
「ありがとう」
「ブタリウス、離してやってくれ」
ブタリウスがズボンの裾を離すと、ユウマが去っていった。
ユウマとは色々あったが、いい感じに収まった気がするぜ!
さて、気分よく冒険を続けるとしよう!




