木曜会6
木曜会 6
『私が村上春樹に惹かれるところとは…
それは 多分 自分の事のように感じる 読む人がまるで自分の事のように感じるあたりかと…』私が途切れ途切れ か細い声でそう答えると 佐山のタヌキが『まぁ その辺で良いでしょう ねぇ 先生 初めて参加した若者にそんなに詰め寄らなくても まぁ 冷たいお茶でも飲んで一服しませんか 皆さん ちょっと 松本君 お茶を皆さんにお出しして』そう言うと末席に座っていたボサボサ頭の野暮ったい男が無言で台所に行きました すかさず高野爺さんが話かけてきました『 いやぁ 冷汗物でしたな〜 まぁ 手厳しいですがな 悪気はないんですわ それと今 台所に行った男 あれはね 松本というんですがな
木偶の坊ですわ いわば会の使いっ走りですな どうして木曜会に参加してるんだからわからんがね あれに比べたらあんたなんかは まだましですわ』
その松本という男は大きな体を小さく畳みながら狭い六畳間にお茶を配って回っていました いきなり 佐山のタヌキが大きな声で言いました 『ちょっと 松本君 汚い尻を先生の方にむけるんじゃないよ』その時です その声に 驚いた松本君はバランスを崩してお茶を平野女史に勢いよくぶっかけてしまいました あたまからお茶を被った平野女史は一瞬何が起きたのか理解するまでに時間がかかったようですが 状況がわかると突然立ち上がりました『ちょっと 貴方 何やっちゃってくれてますの わたくし信じられませんわ なんですのいったい 嫌だわもう わたくし何か貴方に恨まれるようなことしまして?』と地団駄を踏んでいます 平野女史の白いワンピースはお茶をかぶったために薄っすらと下着が透き通って見えました それは年齢に似合わないピンク色の派手なブラジャーでした 私が無意識にそれを見ると 平野女史と目が合ってしまいました 刹那 平野女史は『あぁ〜』と言って両手で胸を隠し泣き崩れました
『まぁ 平野君もそんなにヒステリックにならんでも 松本君も悪気があったわけじゃないんだから許してあげなさいよ』仁平先生がそう言うと松本君も平謝りにオデコを畳みにつけておりました 木曜会なる会は一流の人の集まりだと高野爺さんは言っていましたが どうあれ 私のように一流の人と会った事のない人間には なんともうしましましょうか 未知の世界なのでした
なんだかんだのうちにその日の木曜会は終わり 私は家に帰りました
夜になって携帯にメールが一通届きました
『お元気ですか?靖子です 明日の夜 中野さんと三人でいつもの店で飲みませんか?お返事お待ちしてます!』
靖子さんからのお誘いです 靖子さんと中野さんは私よりも年上ですが 所謂 ハードハルキストです 毎年 ノーベル文学賞発表の夜
ハルキスト達を束ねて結果を待つのを慣わしとしている人達です いわば ハルキストの中のハルキスト king of ハルキストとも言えます
私は参加させていだだく趣旨の返事を返して床につきました
続く……