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木曜会  作者: 芥川何某
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木曜会13

木曜会 13



木曜会のあくる日 高野爺さんから連絡がありました なにやら折り入って伝えたい事があると言うので 例の図書館で会う事になりました


『 昨日は凄かったですな 私はどうなる事かと手に汗かきましたわ あの二人組はお知り合いですか? 血気盛んといいましょうかね

しかし 喧嘩する相手を間違いましたわな

あの平野女史なんかに何を意見したってわかりゃぁしませんよ キクッチャない女だからね

そこにいくと 流石 仁平先生ですな

あの二人も急におとなしくなっちゃってね』


爺さんは長々と話した後に鞄から一冊の本を取り出しました


『 本が出来上がってきたもんですからな

是非 一冊お譲りしておこうと思いましてね』


「みちのくの一匹狼」 夏川 龍


その本は案外 立派な装丁の単行本でした

しかも 本の下に帯が付いている本格的な仕上がりです 帯には こう書いてありました


(みちのくの貧しい小作人の倅 太助が あらゆる困難に立ち向かいながら 立身出世を遂げて行く壮大な物語 成功と挫折を繰り返しながら人間とは何か を問う超話題作 今年度直木賞受賞なるか……)


『これが評判良いんですわ 出版担当の人なんかは 読んだ後 涙が止まらなくて大変だったなんて言ってくれましてね ただ 私も遅い作家デビューだからね いくら作品が良くても売れるかどうか?わからないって出版社の上の人達が言うらしいんですわ でも こんな名作が埋もれてしまうのは許されざる事だなんてね

担当の人がしつこく言うものだから 今回は自費出版という形になりましたんですわ

とりあえず5000部 売れ行き次第で出版社との本契約になる流れなんですがね』


そう言うと 高野爺さんは サインペンを取り出して 見開きに夏川 龍と慣れた具合にサインするのでした


『サインはサービスしときますわ それじゃ 1800円になりますね』


私は最初なんの意味かわかりませんでした

ポカンとしていると高野爺さんは鞄から小銭入れを出して言いました


『 二千円出したら二百円お釣りありますわ』


私はしかなくその本を買う羽目になりました

さっきまでは気付かなかったのですが 高野爺さんの鞄の中にはまだ何冊もの みちのくの一匹狼が入っているのでした


『あぁ…それとね 大切な言伝を忘れるところでしたわ 仁平先生があんたに話があるそうですよ いつでも良いから家に寄って欲しいと言ってましたわ』


『仁平先生がですか なんの話でしょうかね?』


『さぁ…わかりませんな さっき仁平先生にも本をお譲りしようとお邪魔した時 言われたんですがね』


私に話とは何だろうか…しかも あの仁平先生が ……



続く……

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