激闘(笑)ユニークボス(12回目)
怪物には様々な種類があり、ほとんどの怪物は種族というカテゴリーで分類できる。
例えばスライム族なら固かろうが柔らかかろうが毒を持とうが速かろうが遅かろうがカテゴリーの中で種類は違えど共通したような特性を持ち同じカテゴリーの同じ種類の上位種になるとその特性と同じまま速くなったり固くなったり攻撃的になるだけである。
種族特性からはみ出る例外は有名な所ではゴブリンの中のユニーク個体ゴブ吉さんである。彼は実はクラスは普通のゴブリンと同じなのであるが最上位種の魔王ゴブリンよりも強い。
そして今回のダンジョンはたった1体のユニークボスが待ち構えていた。
奴を倒せば開くドアの向こうにコアの間がそのまま繋がっており、ある意味私への特効怪物のようなものだ。
嫌らしいことに精神系の魔道具や酸欠策が効かない非生物系統のゴーレムであり、他の探索者達なら正々堂々と戦えばまず苦戦することのない近接や魔法等の祝福レベル1であれば簡単に倒せるという祝福攻撃以外無効のボスだ。
神は性格が悪いな。
俺を狙い打ちしたユニークボス用意しやがって。攻撃できない収納で倒すしかないとか嘘やろ
駄目もとで火魔法が発動できる杖を使うと相手は一瞬で炎に包まれた。
端から見たら思わず『やったか?』と言いたくなる光景だがユニークスキルの恩恵なのか全く効いてる様子がない。
俺は逃げながら杖がぶっ壊れるまで杖に込められた火魔法を放ち続けた。
限界がきてボロボロと崩れ落ちる杖を無視して次は氷結魔法が込められた杖を振るう。
今度は水蒸気に包まれて相手が見えないが構わず逃げながら杖を降り続ける。水蒸気が晴れ、回数を重ねるとだんだん凍るようになってきたが敵は全く効いてる様子がないようにわざとゆっくりと近づいてくる。
氷結魔法の杖もボロボロと崩れ落ちる。
ユニークボスは淡々とペースを変えず俺を目掛けてゆっくりと無駄だと嘲笑うように近づいてくる。
そんな無意味なセットが10セット終えた後ボスは静かに崩れ落ちた。
はあ…
ユニークボスがゴーレムで良かった。
俺の攻撃はユニークボスの特殊能力で一切ダメージを与えられなかったがゴーレムを構成材質は金属だった。
杖がぶっ壊れるまで加熱すれば金属だって溶けなくても膨張位はする。
そしてそこから急激に冷やせば急速に縮む。
10セットもやれば脆くなっても仕方ない。
普通の小説なら組成がボロボロになってから衝撃を与えるのだがそもそもそんなことせずとも俺を目掛けてゆっくり進んでくるのだ。
わざわざリスクを侵して金属の組成が弱くなったか分からないのにこちらから無駄な攻撃をする理由はない。
そんなことするくらいなら数歩だけ様子見したらすぐに次のセットを始めた方が効率が良い。
なんてドヤ顔してたが。。。
ドアが開かない。。。
は?
次の瞬間
腹を粉々にした金属片が貫いていた
こいつ。。。
ゴーレムじゃねえ
いったいなんなんだ?
浮遊する金属片から目を離さずに収納から出した回復薬を取り出し一気に腹に突き刺さった金属片を抜きながら薬を一気飲みする。
傷が塞がるまでの数秒でかなりの血を失った。
まだ攻略の糸口も掴めなければ敵の正体も分からない。
律儀に治療が終わるのを待ってたのかそのタイミングで飛来する金属片をなんとかギリギリで躱す。
息つかぬまま躱した金属片が再度飛来するいつもならこれくらい簡単に躱せるのだが先程大量の血を失ったせいでこのタイミングで眩暈がしてバランスを崩す。。。
否体勢を崩しながらもなんとか躱そうもしたら何かにつまずいて転倒する。
そこにあったのは金属片だった。
そういえば最初に比べて露骨に体積が小さい。
とりあえず嫌な仮説を払拭するため床に散らばる金属片に収納をかける。
良し収納できた。
そして飛来してくる金属片を躱しながら最後の方に飛んでくる金属片にも収納をかけるとそれも収納できた。
敵なのに収納できる?
それはおかしい。
以前非生物系の人形ダンジョンで試したがそいつは収納できなかった。
こいつは本体じゃない!
とりあえず床に散らばる金属片を飛来する金属片を躱しながら少しずつ収納し続ける。
仮説1飛来する金属片の一部に本体がある。
仮説2床に散らばる金属片のどれかに本体がある。
仮説3金属片以外に本体がある。
とりあえず飛来する金属片の一部に本体がある場合本体だけ収納できないので躱しながら少しずつ収納してけば数が減るごとに危険性は減るだろうけど床に散らばる金属片の方から供給されても厄介なので先に床の金属片を回収してる訳だ。
もし床に散らばる金属片の方から収納できない金属片があればそれがボス本体。今のところ順調に収納できているがなにぶん元が巨大な金属ゴーレムだったのでかなり破片が多い。
敵の本体が砂粒クラスの大きさならアウトだな。。。
飛来する金属片を躱しながら黙々も回収し、1時間かけて床はきれいになった。
その間ずっと攻撃を躱し続けなきゃいけないのはめっちゃストレスだったがな!
そして全ての飛来する金属片を回収した。
さて。仮説1と2が消えた中、敵はどこに居るだろうか?
攻撃してくる敵の居ないボスフロアここにあるのは使い捨てた20本の杖の残りかす。敵の居ない広いフロア、ボス撃破後に開くドア
ふむ。。。
ドアに向かって岩石の杖を振りかざす。
ドアから小さい欠片が床に落ちた。
破壊不可オブジェクトじゃないだと
つまり本体はこのドアか
収納から再び炎と氷結の杖を取り出しとても長い第2ラウンドを開始するのだった。
これ見よがしにユニークボスっぽいゴーレム出して偽物とかこのダンジョン作った奴性格悪すぎだろ!?
魔法の杖高けえし完全に大赤字だよ!
こんちくしょうが!
ユニークボスとは人の祝福や魔法と対極にある呪印や呪文の力を独自に持つ個体であり、ドアの一部に擬態してサイコキネシスを使うこいつは新種のユニークボスと認定された。
一般探索者目線
今回は試練型のタイマンダンジョンであり、当たりの中の当たりだ。
なんせこのタイプは必ず2回目以降にしか実装されないタイプでいづれかの戦闘系祝福を○回以上強化されていればあっさり勝てるタイプである。探索者は基本的に近接(又は魔法)、遠距離(又は回避)、探索系等補助を上げるのだが基本的に近接か遠距離か魔法のどれかに最低でも祝福の半分は特化させる場合が多い、そうじゃなくバランス型だったとしてもこの試練ボスは登場回数分の強化しかされてないため5回目の祝福授与後に初回討伐でも戦闘系の祝福が1回強化していれば余裕で勝てる。次が100回目に2回目の遭遇だとしても同じ戦闘系の祝福を2回強化していれば勝てるといった具合である。
このタイプの試練じたいに当たる可能性はあまり高くないので苦戦することなんてあり得ない。なんせこの試練は常に圧倒的に格下のボスしか居ないからだ。
後心なしか敵の動きがぎこちないのだ。
こんな当たりボスに負ける奴は探索者には居ないだろう。
主人公目線
激闘の探索を終えて血を失い過ぎてフラフラになりながらギルドの受付に本日の大赤字の納品に行くと受付嬢が盛大にひきつった顔で手続きしてくれた。そしてカードを渡した後目を見開いて静止し、突然腕を掴まれて物凄い勢いで特別調書室まで連行されてしまった。
受付嬢目線
噂の祝福を一切強化しないノックが今日は一段とボロボロになって戻ってきた。
提出された素材は価値の低い物ばかりでとてもあそこまでボロボロになるような強い怪物の素材には見えなかった。
いつも通り試練内容をチラッと確認したところ1段階対決試練ダンジョンという最弱の敵のタイプだったのだが、、、
そこには累計遭遇回数8265万6447回にして初討伐ユニークボス1段階サイキッカーという表示があった。
今まで誰もボスに遭遇しながら誰も倒してないというのはかなり異常なことだ。
遭遇というのは日本語では会敵を意味するのだがダンジョンでは物理的接触又は魔力的接触を意味する。
つまり直接ボスに触れていながら誰一人としてその存在に気づけなかったボスを唯一倒したということを意味する。
調書の結果彼は1段階試練を戦闘系祝福の力を使わずにアイテムだけで倒したらしい。えっと魔法の杖20本って。。。しかもその後凶器の残骸を回収しながら猛攻を防ぎ、サイキッカー戦でも同数魔法の杖って。。。
赤字も凄いけど最初の不意打ちのダメージもひどそうだ。恐らく1週間は絶対安静位は診断されてもおかしくなさそうに見える。
未発見の確認にはベテラン探索者がするものなのだがベテランということはそれだけ多くのダンジョンを攻略してる訳で、必然的にこのタイプのユニークボスと複数回戦ってる者ばかりである。
その敵に対してそれを祝福の力を借りずに倒すというのは恐ろしい程に難易度が上がるのだ。
祝福五回強化してれば勝てるというのは祝福4回では負けるという意味だ。きっと同じ方法でやったとしても赤字前提で膨大な量の攻撃アイテムを投入しないといけない
そんな命知らずで割に合わない調査を依頼できる存在などない。
まともに調査できないユニークボスサイキッカーについての報告書の作成に頭を悩ますのだった。




