傍目八目
オレはしがない探偵助手だ。
今日も探偵―オレの雇用主だ―が巻き込まれた事件に必然的に巻き込まれている。
転がる死体、あがる悲鳴、考え込む警察、同じく考え込む探偵。
彼らのてんやわんやをオレは一歩引いた位置から見ている。
頭の中に関係者の相関図を描く。
…犯人は、おそらく。
「そうよ!わたしがAを殺したわ!文句ある!?」
探偵に犯人だ、と名指しされた女は逆ギレし、事もあろうか、オレに殴りかかってきた。
ポカンと一発喰らってやる。
これくらいしないとな。
女は警察にしょっぴいていかれ、探偵は残った面々に、何故女が犯行に至ったか、を語った。
この事務所に勤め出して数年。
探偵―オレの雇用主―は、自分が全て推理し、解決してると思っている。
実際はオレが、あちこちに手がかりを散りばめたり、不自然にならない程度に助言したりしているのだが。
どうして、そんなまどろっこしい事するか?って。
愚問だな。適材適所と言うだろう?
探偵はT大の法学部を卒業している。おまけに容姿も端麗な優男ときている。
そのキザさが鼻につく事もあるが、性格だってそんなに悪くない。ついでに言うなら金払いも悪くない。
かたやオレは、貧乏家庭のせいで、大学進学を諦めた高卒だ。
奨学金?そんなもの、返済地獄を見るのはわかってた。だから、労働を選んだ。
見た目だって日焼けしていて、不細工という訳ではないが、まぁ、フツメンだろう。
そんなオレの昔からの趣味が探偵小説を読む事だった。
いつか、華麗に事件を解決してみたいものだ…。と幼い頃から思っていたが…。繰り返しになるが、適材適所。
オレには探偵に必要な華がないのを悟ってからは、ずっと探していた。ある程度頭が良く、ヒントを与えれば、自力解決出来る探偵を。
それが現在の雇用主だ。
彼との出会いを天に感謝している。
今日も今日とて、事件は起きる。
オレはいつものように一歩引いて、全体を眺めている。
…犯人はおそらく。