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Day3

小雨が降り花びらが散るグラウンド。


今日もそんなグラウンドの端にある桜の木の下には彼と彼女はいた。


「雨ね……」

彼女は空を見上げながら憂鬱そうにため息をつく。

「……風邪ひくよ」

彼の言葉に彼女はそっと目線を移し

「そんなことも言えるようになったのね!」

と大仰に喜ぶ仕草をした後、少し間を開けて

「私はひかない。あんたこそ風邪ひくよ」

そう言って傘も雨具も付けずにいつもの体勢で座っている彼を見る。

「別にいいよ。この程度のことで死なないし」

彼がそう答えると同時に二人の間に少し遅い冬の北風が音を立てながら通り抜けた。彼女は思わぬ寒さに体を震わせる。

「寒っ……」

手をこすって暖を取ろうとする彼女。しかし、そんな彼女に無情にも北風は当たりにいく。

 今日も彼女は膝丈くらいまでのスカートをはいていて上は半そでであった。春の朗らかな時にはちょうど良い服は今日は不適当であった。


「……本当に帰った方がいいんじゃない?」

「別にいいわよ。この程度のことで死なないんでしょ?」

「……」

彼は何も反論できずに黙り込んでしまう。彼女はその様子を見ながら「あいかわらず口下手ね」といじらしく笑う。

「……でも、そうじゃないと困る」

昨日と同じセリフを言うと彼は「うるさい」とでも言うようにさらに深く顔を膝に埋め込んだ。


 その後も二人は他愛のない会話をしばらく続けていたが

「……聞いてる?」

彼女は少し怒った口調で彼に尋ねる。すると彼は食い気味に「もちろん」と返事したが

「さっきから空返事しかしてないじゃん」

彼女は少し彼を睨むが彼はピクリとも動かない。だんまりを決め込んだ彼に怒りを覚えたのか彼女の口調は荒くなっていく。

「随分と生意気ね」

「……」

それでもなお岩のように動かない彼にしびれを切らし、彼女は雨に濡れて土がついている桜の花びらを文句を言いながらかき集めて彼の頭の上に降らす。雨に濡れ、少々土の付いた桜の花びらは再び舞うことはできずにただただ彼の頭の上へと自由落下する。

 しかし、彼は前の時にしたわずかな抵抗もせずにただただされるがままになっていた。

 彼女はますます不機嫌になっていった。やがて彼は死んでも動かないとでも思ったのか乱雑に片手分の泥を掴み、投げつけた後

「何怒ってんのさ。わけわかんない」

と自分のことは棚に上げて雨の中歩きだす。

 去り際に彼女の口が動いていたが降り続ける雨と彼女のぬかるんだ地面を踏む音にかき消されたのか、声は届かず、やがて彼女の姿は雨に溶かされるように消えていった。



 彼女の姿が消え、しばらくたった後

「……」

彼は静かに泥を払い落とし俯きながらその場を後にした。

彼の顔はフードに隠され怒っているのか泣いているのか、はたまた笑っているのか。

答えは分からないまま彼もまた闇夜に消えていった。


雨はまだ勢いが衰えることなく降り続いている。

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