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「シャロア、貴女がジルドと話をしている間に夫人から手紙が届いたのよ。そこで詳しく書かれていたわ。

アンネリア・ラッスカ男爵令嬢だっけ? 今回は両家から男爵家に抗議文を送ることになったわ。

ダイアンは反省は、しているようだけど女の方はどうかしら? 過去にも色々な家から散々抗議文が送られているのだから気にしないと思うけれどね」

「はい」

「シャロアは気にせず仕事を続けなさい。後はダイアン次第ね。彼が口先だけでなく行動で示さなければ婚約破棄もあり得るわ」

「……そうですね」


母の口から出た婚約破棄という言葉。


我が家は恋愛結婚が許されているとはいえ婚姻は家同士の繋がりがまだまだ重要であるため伯爵夫人の母から出た言葉の意味は重い。


翌日からは何事も無かったように出勤する。


「シャロア、大丈夫か? 少し疲れて見えるが」

「ラダン副団長、気を使わせて申し訳ありませんでした。私はもう大丈夫です」

「そうか、あんまり無理しないようにな」

「はい」


うぅっ。副団長にも気づかれるほど私って疲れてる顔をしたいのね。令嬢としても騎士としても失格ね。


私は気を取り直して仕事に励む事にした。昼食を摂りに食堂に向かうと、そこにはダイアンの姿があった。


「シャロア! こっちこっち!」


いつもと変わらない笑顔で私を呼ぶ彼。昨日の事が嘘のようでホッと軽く息を吐きながらダイアンの呼ぶ方へと向かった。


「ダイアン、今日は一人なの?」

「あぁ、昨日はごめん。あの後、母上から叱られてしまったよ。アンネリア嬢は悪い人ではないんだけどね。みんな警戒しているらしいんだ」

「まぁ、そうでしょうね……」

「大丈夫だよ。いい人なんだし。さぁ、お昼ご飯が冷めてしまうから食べよう」

「えぇ、そうね」


私は何をどう言えば良いのか分からなかった。ダイアンは駄目な事を理解してくれていないのかしら。


「ねぇ、ダイアン」

「なんだい?」

「あのね、私達の結婚式はもうすぐね」

「あぁ、そうだね。楽しみで仕方がないよ」

「えぇ、私も待ち遠しいわ。私はダイアンの事をとても大事に思っているの。

ラッスカ男爵令嬢と会うのは止めて欲しいの。どんな相談を受けても無視して。私、不安なの」

「なんだそんな事か。彼女はいい人だし大丈夫だよ」

「私が不安だと言ってもそのお願いは聞いてくれないの?」

「……分かったよ。約束する。アンネリア嬢と会わない」

「……お願いね」


私はもう一度だけ念を押した上で彼と約束をしたわ。


これで彼は約束を守ってくれるはずよね? 


私の不安は完全な独りよがりよね?


昨日の涙をいつまでも引きずりたくない。泣きそうになる思いを堪える。私の気持ちとは裏腹に彼は変わらず笑顔で話す。


「今度ドレスの採寸だよね? 採寸が終わったら『ショロルの菓子店』に行かない? 今流行りなんだって」

「本当? 行ってみたいわ」


そこからは普段通りの会話をする事が出来た。私も笑顔で会話が弾む。


「名残惜しいけれど仕事に戻らなきゃ。またね」


私達は軽くハグをした後、仕事に戻った。朝とは違い、上機嫌で仕事に戻ったのはいうまでもないわね。



それからは以前と変わらず過ごす日々が続いた。


アンネリア嬢がダイアンに言い寄っていた事は嘘だったのかとさえ思えるほどに幸せな日々を過ごしていたの。ダイアンと二人でオペラを見たり、植物園に出掛けたり、サーカスを見たりもしたわ。



四か月が経った頃……。


ダイアンの仕事が忙しくなったの。それまで毎日一緒に食堂で食事をしていたのが三日に一回、四日に一回となり、手紙を出しても返事はない。

仕事が忙しいのだと思い、私からは無理に誘う事をしなかった。その事がいけなかったのかしら。


もう結婚式まで二ヶ月を切った。お互い仕事が忙しいとはいえ、少し違和感を感じる。


……まさか、ね。

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